UBS、20億ドルの損失
スイスの銀行最大手UBSは9月15日、投資銀行部門のトレーダーによる不正取引で約20億ドル(約1530億円)を損失したと発表した。
これは、スイスの金融史上で最大の不正事件に当たり、この31歳のトレーダーは、ただちにロンドンで逮捕された。
不正取引が行われた市場など詳細は明らかにされていないが、損失は自己資本の投資で起こり、顧客の資金ではないとされている。
スイスの金融監督局(Finma)の広報担当官、トビアス・マックス氏は、「この事件を知っていた。UBSは直ちに金融監督局に報告してきたからだ」と述べたが、いつ報告があったのかは、明らかにしなかった。
史上最大の不正取引の一つ
UBSのこの20億ドルの損失は、史上最大の不正取引の一つに加えられることは間違いない。もっとも最近の例では、仏銀行大手のソシエテ・ジャネラルのトレーダー、ジェローム・ケルヴィールが2008年に、49億ユーロ(約5200億円)の損失を出している。
1995年には、英ベアリングス銀行のトレーダー、ニック・リーソンが13億ドル(約1000億円)の損失を出した。
UBSは、「つぶすには大きすぎる(too big to fail)」ため、経済危機の痛手を受けた後、スイス政府から巨額のテコ入れを受けた唯一の銀行だ。また2009年には、脱税疑惑のあるアメリカ人顧客およそ5000人分の情報を米内国歳入庁(IRS)に引き渡した経緯もある。
さらに現在は、巨大銀行の自己資本および組織構造の規制を強化する法制度改革に関し、連邦議会で議論が行われている最中でもある。
UBSの評判にダメージ
8月末に経費削減計画の一環として3500人の人員削減を発表したUBSにとって、今回の20億ドルの損失は大きな痛手となる。今年の第2四半期の純利益、約10億フラン(約883億円)は、前年同期比でほぼ半分にしか過ぎなかった。
しかし、恐らく最も大きなダメージは、UBSの評判だろう。すでにウェルス・マネジメント部門の信用はアメリカ人顧客の脱税ほう助で大きく失われているからだ。
(英語からの翻訳・編集、里信邦子)
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