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UNRWA資金めぐり様子見するスイス 勢力増す批判派

国内避難民のパレスチナ人で溢れるガザ地区の学校
ガザ地区南部ラファにある国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)が運営する学校は、国内避難民のパレスチナ人で溢れている Keystone / Haitham Imad

国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の複数の職員がイスラム組織ハマスによるイスラエル奇襲に関与したとの疑惑が高まり、日本など複数の国が資金拠出の停止を表明した。スイスは2024年分の資金を支払っておらず、疑惑に関する国連の調査結果を待つ。 

スイスはUNRWAの役割や、同機関がパレスチナ人とイスラエル人の分断を助長する可能性について、これまで何年も議論を重ねてきた。昨年10月7日のハマスによるイスラエル奇襲以来、議論はこれまで以上に白熱している。 

これまでの議論

UNRWAは今月26日、ハマスによるイスラエル奇襲に関与した疑いで職員12人を解雇したと発表した。29日付の米ウォール・ストリート・ジャーナル外部リンク(WSJ)紙は、ガザにいるUNRWA職員の約1割がハマスやパレスチナの武装組織「イスラム聖戦」と関係があると報じた。 

これを受け、米国や英国、ドイツなどが即時にUNRWAへの資金拠出の停止を決めた。スイスは欧州連合(EU)と同様、国連の調査結果が出るのを待って今後の対応を決定することにした。  

スイスのイグナツィオ・カシス外務相は2018年、UNRWA自身が中東の最大の問題の一部であると発言し、大きな反発を呼んだ。だが今では、カシス氏の言葉に賛同する人が増えている。

スイス下院は昨年12月、UNRWAへの資金拠出の削減案を可決した。上院での審議は激しく対立したが、最終的には人道支援予算全体を1千万フラン(約17億円)削減することで合意した。具体的な削減対象は指定しなかった。

現在はUNRWAがガザで運営する学校で反ユダヤ主義教育を施しているという疑惑も浮上し、スイス政界はカシス氏のような批判的な見方に傾いているようだ。

右派のUNRWA批判

ウォール・ストリート・ジャーナルによると、イスラエル襲撃への関与を理由に解雇されたUNRWA職員12人の中には学校教師も7人いた。スイスの保守右派・国民党(SVP/UDC)のピエール・アンドレ・パージュ氏は27日、フランス語圏のスイス公共放送(RTS)で、昨年UNRWA学校を訪問した際に教室への立ち入りや教科書の閲覧を拒否されたと明かした。「これこそが、この組織に深刻な問題があったことを証明している」

スイスの拠出した資金がテロ組織の手に渡ることを懸念し、厳しい対応を求める声もある。WSJが入手した諜報報告書は、10月7日以降、ハマスがUNRWAの物資100万ドル(約1億4700億円)以上を盗んだことを明らかにした。ハマスの工作員がUNRWAの援助物資の輸送業務に関与していたことも指摘した。リベラル右派の急進民主党(FDP/PLR)のハンス・ペーター・ポートマン氏はドイツ語圏のスイス公共テレビ(SRF)で「スイス政府が行動を起こし、資金を即時停止するよう求める。議会の承認がなくてもだ」と語った。

抗議プラカートを掲げた人たち
UNRWAへの資金拠出を停止するドナー国の決断に抗議し、ガザへの緊急支援を求めるレバノン在住のパレスチナ人たち Keystone / Wael Hamzeh

UNRWAは唯一無二の存在

UNRWA批判派は、赤十字国際委員会(ICRC)などガザ住民を支援できる組織は他にもあると主張する。これに対し、実質的にはUNRWAが唯一無二の存在だと反論する人もいる。  

左派・社会民主党(SP/PS)のカルロ・ソマルーガ氏はRTSで「UNRWAを罰することは、何よりもガザで困っている人々を罰することになる。他に選択肢はない」と語った。

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unrwaの事務局長

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UNRWA事務局長がガザ戦闘に言及「燃料不足、命に直結」

このコンテンツが公開されたのは、 国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)のフィリップ・ラザリーニ事務局長は、パレスチナ自治区・ガザ地区での燃料不足は深刻で、同地区でのUNRWAによる支援を停止せざるを得ない状況にあると話す。

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UNRWAは1948年のイスラエル建国後に故郷から逃れてきたパレスチナ人の子孫約590万人を支援している。医療施設や教育施設を運営する他、ガザ地区の200万人の人々に救命援助を提供している。  

左派・緑の党(GPS/Les Verts)のフェリックス・ウェッツスタイン氏と社会民主党のフランツィスカ・ロス氏はSRFで、現地の壊滅的な状況を考慮すべきだと述べ、UNRWAを擁護した。ロス氏は「明確な証拠がない限り、唯一の地元援助団体からの支援を撤回すべきではない」と主張した。

資金削減でどうなる?

UNRWA事務局長を務めるスイス出身のフィリップ・ラッザリーニ氏は、かねて機構の財政難を訴えてきたが、今回の疑惑は深刻な打撃となる可能性がある。UNRWA予算の9割以上は各国からの自発的な寄付で賄われているが、主要なドナー国である米国とドイツはすでに資金提供を停止すると発表している。   

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中国、ロシア、一部の裕福なアラブ諸国などは口頭ではパレスチナ人への支援を表明しているが、具体的な資金がなければUNRWAは崩壊しかねない。ラザリーニ氏は27日、X(旧ツイッター)に「ガザのパレスチナ人は、この集団処罰を必要としなかった。(拠出停止は)私たち全員を汚すものだ」と投稿した。

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海外の反応  

米国は2018年に発足したドナルド・トランプ政権下でUNRWAへの拠出を停止したが、2021年になって再開した。今回、ジョー・バイデン政権は拠出の即時停止を決断した。 

英国政府も追随したが、米国と同様に大きな批判も呼んだ。人権団体のアムネスティ・インターナショナル英国支部は、拠出停止は「ひどい」決定であり、撤回されるべきだと述べた。  

オーストラリア、エストニア、ドイツ、イタリア、日本、ルーマニア、オランダなども支援を停止している。  

対照的に、アイルランドのマイケル・マーティン首相は資金拠出の継続を公言し、UNRWAは「多大なる個人的犠牲を払って230万人の命を救う支援」であると強調した。ノルウェーのエスペン・バルト・エイデ外務相も、ガザの「壊滅的な」状況を受けて支援を継続すると表明した。

国連のアントニオ・グテーレス事務総長は30日、ニューヨークでUNRWAの主要ドナー国の代表と会談した。グテーレス氏は「非難に愕然としている」としながらも、各国に対し「UNRWAの活動継続を保証する」よう求めた。

編集:Reto Gysi von Wartburg/amva/livm、英語からの翻訳:ムートゥ朋子、校正:大野瑠衣子

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