クレディ・スイスの緊急買収、訴訟不可避か
スイス最大の金融機関UBSによる同業のクレディ・スイス買収が、法廷闘争に発展する可能性がある。
スイス年金基金などで構成されるエトス財団は20日、声明外部リンクを発表。UBS、クレディ・スイス(CS)両行の株主として株主総会で買収について投票できないなど不利を被ったとし「この大失敗の責任を明らかにするため、法的手段を含めあらゆる選択肢を検討する」と発表した。
UBSによるCS買収は株主投票を経ないで成立した。
CSが発行した160億フラン(約2兆2千億円)相当の特別社債が買収の一環で無価値化されたことを問題視する声もある。債券保有者の1人は米紙フィナンシャル・タイムズの取材に対し、この行為が「スイスの金融債務に長期的な影響を与えるだろう」と憤った。
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同紙の報道では、英資産運用会社アルジェブリス・インベストメンツのダビデ・セラ最高経営者(CEO)は投資家らに電話で「彼らは法律を変え、実質160億フラン相当の債券を盗んだ」と語った。
独語圏の日刊紙ターゲス・アンツァイガーによると、米国の国際法律事務所Quinn Emanuel Urquhart & Sullivanは買収に関連し法的措置を検討するチームを作った。CSの社債を所有している投資家と既に協議中だという。同事務所はチューリヒにも拠点がある。
法学者のペーター・V・クンツ氏は、独語圏のスイス公共放送(SRF)に対し、国外の株主らが訴訟を起こす可能性があると発言。「一連の出来事はパニック行為以外の何者でもない。法の支配の観点からも問題がある」と述べた。
クンツ氏は、クレディ・スイスの筆頭株主であるサウジ・ナショナル・バンクが、買収を巡る意思決定プロセスから締め出されたことに対し法的手段に訴えることも考えられるとした。
買収前の段階で、米国ではクレディ・スイスにだまされたと訴える人たちが同行を相手取って訴訟を起こした。
※英語の原文に一部加筆しました。
英語からの翻訳編集・宇田薫
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