スイスの政党青年部が今熱い!
気候変動とパンデミック(世界的大流行)を受け、スイスの若者の間で政治への関心が高まっている。政党青年部に加わる若者も増加中だ。しかし、どの党も同じようにその恩恵を受けているわけではない。
スイスの若者の間で政治への関心が今までにないほど高まっている。これを裏付けるのが、世論調査機関gfs.bernが5月に発表した調査結果(easyvote-Politikmonitor)だ。15~26歳の回答者のうち、少なくとも部分的に政治に関与していると答えた人の割合が調査開始以降初めて過半数を超えた。最新の調査でもこの傾向が確認された。
gfs.bernの政治学者マルティナ・ムッソン氏は「若者の政治への関心は以前から高かった。難しいのは、それを制度の活用へとつなげることだ」と語る。つまり、若者は気候変動などのグローバル問題の解決を求めたり、人種差別に反対したりするために街で抗議活動をすることはあっても、選挙や住民投票、党活動への参加にはおっくうということだ。
ただ、最近では変化の兆しがみられる。独語圏のスイス公共放送(SRF)の最新調査によると、パンデミックが始まって以降、スイスの政党青年部の党員数が急増している。
スイスのすべての主要政党は独自の青年部を持つ。青年部の目的は、若い有権者に働きかけ、政治への参加意欲を高めることだ。ムッソン氏はこう説明する。「スイスの政党青年部は裁量の余地が大きい。近年では母体政党の立場から大きく離れることもあり、独自の立場やスローガン、イニシアチブなどで周囲を驚かしている」
挑発的な行動や著名な党員がきっかけとなって、政党青年部はメディアの注目を頻繁に浴びるようになった。「政党青年部は今やスイス政治で重要なプレーヤーだ」(ムッソン氏)
時代の恩恵を浴びた左派
左派・右派を問わず、昨年は若者の間で政治への関心が高まった。この異例の年に最も多くの若者を動員できたのは、どの政党青年部だろうか?
社会民主党青年部は新規党員数が例年の倍近くを記録している。数字でみると、2020年初頭から1889人が新たに入党し、全党員数は4500人に達した。
緑の党青年部は新規党員1237人、全党員数4432人で、同様に高い増加を記録。気候変動に関する議論を背景に、新型コロナウイルス感染症の流行以前から党員数を増やしてきたが、パンデミックも押し上げ要因となった。
緑の党青年部のユリア・キュング共同代表はこう指摘する。「パンデミックを機に、政治的決定が日常生活の中で明らかに重みを増し、私たちの生活に明確な影響を及ぼすようになった。そのため、望む未来を一緒に作りたい思う人が増えているのだろう」
自由緑の党青年部も似たような状況にある。トビアス・フェーゲリ共同代表は、パンデミック以降に新規党員が記録的に増えたとは言えないが、パンデミックは党員数を増やす一因になったと考える。「パンデミック対策が講じられたことで、以前は政治に無関心だった人の多くが政治に関心を向けるようになった。特に、政治的に長い間忘れられた存在でありながらも、政治的決定の影響を強く受けてきた若者がそうだ」。同党青年部は20年初め以降、1425人が新たに入党し、全党員数は3022人になった。
スイス公共放送(SRF)の報道番組「ターゲスシャウ(Tagesschau)」はこのテーマを下のように報じている。
党員数が最も多い政党青年部でも増加がみられた。国民党青年部は新規に1千人が加わり、全党員数は7200人。ダヴィッド・トラクセル代表は、新型コロナウイルス感染症の影響は明らかだと考える。「国民党青年部は当初から制限措置に反対してきた。だからこそ入党希望の若者が私たちのところに殺到したのだ」
一方、時代の恩恵にあまりあやかれなかったのが中央党青年部と急進民主党青年部だ。中央党青年部は20年初めから800人が新規に加入し、全党員数は3200人になった。ただ、同党青年部の代表によれば、この増加数でも平均を大いに超えており、コロナ危機もその要因として考えられる。
コロナ効果が得られなかった唯一の政党が、急進民主党青年部だ。20年初めからの新規党員数はわずか450人で、全党員数は4450人だ。しかし、マティアス・ミュラー代表はこの数字を高く評価する。「私たちの政策や価値観、私たちが提案する解決策は、現在の状況とは無関係に有効で正当だと言える。したがって、党員数は今後も確実に増え続けていくだろう」
(独語からの翻訳・鹿島田芙美)
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