スイスのメディアが報じた日本のニュース
今週(6月16〜22日)スイスの主要メディアが伝えた日本関連のニュースから4件をピックアップ。要約して紹介します。
防衛強化を図る日本で自衛隊員不足、電気自動車で遅れが目立つ日本メーカー、子宮内膜症に新しい発見、ポケモンカード強奪、性交同意年齢引き上げ、2022年の出生率1.26で過去最低―といったトピックスがスイスメディアで取り上げられました。
この中から今回は「防衛強化を図る日本で自衛隊員不足」「電気自動車で遅れが目立つ日本メーカー」「子宮内膜症に新しい発見」「ポケモンカード強奪」について、スイスのメディアが報じた記事を要約してご紹介します。
自衛隊に入隊したがらない若者
防衛費を2027年度に国内総生産(GDP)比2%に増額すると決めるなど、中国や北朝鮮の脅威を理由に防衛力増強を目指す日本で今、若い自衛隊員のなり手が不足していると独語圏のスイス公共放送(SRF)が18日報じました。
SRFによると、日本の現在の自衛隊員数は25万人。今年はすでに、1万人の採用目標に対し志願者数が数千人下回っているとし、日本の防衛戦略における最大の課題は軍需品の調達ではなく、若い自衛隊員、特に女性隊員の確保だと指摘しました。
こうした人手不足に陥っている理由としてSRFはまず、第二次世界大戦後に平和主義憲法を制定せざるを得なかった日本人の間には、ベースとして反軍国主義的な考え方があると説明。また、給料や自衛隊員という職業に対する評価が低いことも志願者が集まらない原因としました。自衛隊設備の老朽化や少子化の影響も否めません。
SRFはこうした問題は欧米諸国も抱えているものの、日本ほど差し迫った状況ではないとしています。(出典:SRF外部リンク/独語)
遅れが目立つ日本のEV産業 巻き返しは?
独語圏の日刊紙NZZは19日「最古の自動車大国、日本― EV産業で再び追いつけるか」という見出しで、トヨタ、日産、ホンダを焦点に、電気自動車(EV)へのシフトで遅れが目立つ日本メーカーの巻き返しについて論じました。
NZZによると、2023年第1四半期(1~3月)の中国の自動車輸出は前年同期比58%増の107万台。一方、日本は6%増の95万4185台にとどまりました。同紙は中国の急成長の主な理由はEV産業の急拡大にあると指摘。国の基幹産業として550万人が従事する日本の自動車産業がEVで出遅れるのは致命的だと警鐘を鳴らしました。
タイで開催されたバンコク国際モーターショーを視察したSBI証券企業調査部の遠藤功治氏はNZZの取材に応じ「中国(EVメーカー)のBYDが一番大きなブースを構えていたのが衝撃的だった。今後5年間で急速に変わる可能性がある」と話しました。
トヨタは2026年まで10モデルの新型EVを、日産は2030年度までに19車種のEVを含む27車種のEV投入を計画。ホンダも2030年までにグローバルでEVの年間生産200万台超を予定しています。
NZZは、日本メーカーはこれまでEVを最優先事項にしてこなかったが、ハイブリッド技術をはじめ、電動化やバッテリー技術に関する多くのノウハウを持ち合わせていると説明。出遅れた差は大きいものの、追いつける可能性はあると、今後の巻き返しに期待を寄せています。
また「メーカーが決めるのではなく、買い手が決める」といった日本的な考え方とスピード、柔軟性が巻き返しを図る上での強みになるとしています。(出典:NZZ外部リンク/独語)
子宮内膜症に歯周病の原因菌関与の可能性
名古屋大などの研究チームは今月、月経痛や不妊の原因となる「子宮内膜症」の発症に歯周病の原因菌が関わっている可能性があると発表しました。これは、抗生剤による新しい治療法への道を切り開く発見です。米科学誌「サイエンス・トランスレーショナル・メディシン」に発表され、仏語圏日刊紙ル・マタンは17日付でこれを報じました。(出典:ル・マタン外部リンク/仏語)
狙われやすいポケモンカード
アニメやゲームでスイスでも人気の「ポケットモンスター」のトレーディングカードを強奪したり盗んだりする事件が昨年末から日本全国で多発していると、スイスの複数のメディアが報じました。
独語圏の日刊紙ターゲスアンツァイガーは16日付の記事で、同カードは切手に代わるコレクターズアイテムとして長く親しまれており、レアなカードはかなりの高額で取引されると説明しました。
人気ユーチューバーのローガン・ポールさんは2022年、ピカチュウのホログラフィックカードを史上最高額の527万5千ドル(当時のレートで約6億5千万円)で購入したことを明らかにしています。
独語圏の日刊紙NZZは、ポケモンカードは盗むのが簡単で、なおかつ服の中などに隠しやすく、シリアルナンバーもないと指摘。需要が非常に高く転売もしやすいため、狙われやすいと伝えました。(出典:ターゲスアンツァイガー外部リンク , NZZ外部リンク/独語)
注目のスイスのニュース
今週、最も注目されたスイスのニュースは、輪番制の大統領職を兼任しているアラン・ベルセ内務相が突然、年末をもって退任すると表明したこと(詳しくはこちら)でした。また、18日の国民投票結果(詳しくはこちら)や、約3800円の最低賃金導入案が可決されたチューリヒ市の住民投票結果なども話題になりました(詳しくはこちら) 。
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次回の「スイスのメディアが報じた日本」は、6月30日(金)に掲載予定です。
編集: 宇田薫
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