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スイスのメディアが報じた日本のニュース

虹色の旗を掲げてデモをする日本人
swissinfo.ch

今週(6月8〜15日)スイスの主要メディアが伝えた日本関連のニュースから4件をピックアップ。要約して紹介します。

LGBT理解増進法案、岐阜市の陸自射撃場で銃発射、スイスの若者に人気の韓国と日本、富士山の登山者制限を求める要望書、無花粉スギ研究、浦沢直樹作「あさドラ!」の人気と魅力―などがスイスメディアで取り上げられました。

この中から今回は「LGBT法案」「富士山の登山者制限要望書」「無花粉スギ研究」「スイスの若者に人気の韓国と日本」をご紹介します。

「及び腰」のLGBT法案

性的少数者への理解を広めるための「LGBT理解増進法案」可決成立に向け日本の国会が審議を進める中、複数のスイスメディアがこれについて報じました。 

独語圏の大手日刊紙NZZは11日、「日本、同性婚の合法化に尻込み」という見出しとともに、同法案をめぐる社会と政府の意識の差を指摘。東京渋谷区のパートナーシップ証明や、社内規則で同性パートナーシップを異性婚と同等に扱う全日本空輸(ANA)を引き合いに出し、日本社会ではすでに意識が高まっているにもかかわらず、法案はあくまで「LGBT差別に対する社会の認識を高めること」にとどまり、国は同性間のパートナーシップを異性間の婚姻関係と同等に扱うことに消極的だと報じました。また、共同通信社の世論調査では71%が同性婚の合法化に賛成する一方、国会議員の賛成は41%だっだとも伝えました。(出典: NZZ外部リンク・独語)

仏語圏の日刊紙ル・マタンは8日付けの記事で、LGBT理解増進法案を「及び腰な法案」と表現。同性婚が認められないのは憲法違反だとして日本の複数の同性カップルが国を訴えた件を取り上げ、違憲かどうかについては意見が分かれていても、日本の裁判所はすべて「同性間のパートナーシップにも、異性間の婚姻と同様の法的保護を与えるべき」との判断を下していると伝えました。 (出典: ル・マタン外部リンク・仏語)

同トピックはニュースサイトnau.chも注目。日本は主要7カ国(G7)で唯一、LGBTQに対する差別禁止法を持たず、同性婚も認めていない国であると強調しました。 (出典:nau.ch外部リンク・独語)

富士山の登山者制限要望書

観光産業関連では、山開きを来月に控えた富士山についてスイスの複数メディアが報じました。富士山は来月、新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけを5類に移行してから初めての登山シーズンを迎えます。今年は富士山のユネスコ世界文化遺産登録から10年という節目の年でもあり、登山客のさらなる増加が予想されます。

また、宿泊予約が取れなかった人たちが十分な休憩をとらずに徹夜で山頂をめざす「弾丸登山」の急増も懸念されることから、山梨県の自治体が12日、登山客数の制限を求める要望書を県に提出したと伝えられました。(出典:nau.ch外部リンク・独語、Blick外部リンク・独語)

無花粉スギ研究 

スイス国内の一部地域で花粉の飛散量が過去最高を記録する中、独語圏のスイス公共放送(SRF)は日本の無花粉スギの研究を取り上げました。 

日本の商業用の木材は10本中4本がスギのため花粉の飛散量が多く、日本国内の花粉症患者の約70%はスギ花粉が原因とされています。そのため、花粉症緩和の重要な対策として、花粉を飛ばさない無花粉スギの研究が行われています。 

国立研究開発法人森林研究・整備機構の主任研究員を務める上野真義さんがSRFの取材に応じ、研究について動画で説明を行いました。 

また今後の見通しについて上野さんは「従来の品種がすでに良いため、森林所有者は新しい品種を使うことに消極的。新しい品種は最終的にどのような品質をもたらすのか、森林所有者には想像がつかない」と説明。5~10年後には木材の品質についてより正確な結果を提示できるようにし、森林所有者にもっと受け入れてもらえるように研究を進めたいと話しました。(出典: SRF外部リンク・独語)

日本と韓国、なぜスイスの若者に人気? 

ドラマ、K-POP、アニメ・漫画、ゲームなどの人気を背景に、スイスから日本や韓国に行く若者が増えています。仏語圏の日刊紙トリビューン・ド・ジュネーブは10日付けの記事で、両国の人気の理由を分析しました。 

同紙によると、若者がNetflixシリーズ「イカゲーム」やBTSなどのK-POPグループの存在をきっかけに韓国に興味を持ち、語学留学も兼ねて現地に行くケースが増加しています。日本の場合はアニメ・漫画やゲームを端緒とした語学留学が多く、コスプレ人気なども日本を渡航先として選ぶ大きな理由の1つとなっています。韓国は17~30歳、日本は21~40歳の間で特に人気があると伝えています。 

渡航目的は語学留学に限りません。観光会社DER Touristik Suissのアジア部門ディレクターを務めるルート・アンドルトさんは「特に韓国は、トレンド好きな人には流行の観光地。数年前までは理解しにくいという理由で敬遠されがちだったものの、近年は一般家庭でも気軽に日本料理や韓国料理を楽しめるようになり、ハードルが下がった」と話しています。 (出典:トリビューン・ド・ジュネーブ外部リンク・仏語)

注目のスイスのニュース 

今週、最も注目されたスイスのニュースは、スイス連邦議会で行われたウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領のビデオ演説(詳しくはこちら)です。また、スイスの上院が武器再輸出案を可決したこと(詳しくはこちら)、スイス議会での日本を含む第三国出身者の就労に関する審議も話題になりました(詳しくはこちら) 。

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次回の「スイスが報じた日本のトピックス」は、6月23日(金)に掲載する予定です。

編集:ムートゥ朋子

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