スイス連邦政府は、日本の国民年金にあたる老齢・遺族年金制度(AHV)の財源確保を目的とした年金制度改革について新たな骨子案をまとめた。女性の定年を64歳から男性と同じ65歳へ引き上げ、付加価値税(VAT)の税率も上げる。一方で対象となる女性への緩和措置も盛り込んだ。
このコンテンツが公開されたのは、
政府は自治体や関係団体に骨子案への意見を求める手続きを開始。期限は10月17日までで、政府は来春までに最終的な改革案をまとめ、議会に提出したい考えだ。
新たな骨子案は▽女性の年金受給開始年齢を改革実施2年目から1年ごとに3カ月ずつ引き上げ、最終的に男性と同じ65歳とする▽VATの税率を1.5%引き上げ、年金財源に充てる▽年金受給開始年齢を62~70歳の間(現在は63~70歳)で選択可能とするーなど。
改革開始後に受給年齢を迎える1958~66年生まれの女性への緩和措置については、二つの選択肢を用意。一つ目は現行どおり64歳で年金を受給する人には、現行の受給前倒しに伴う減額措置を緩和し、一定の年収を下回る女性は減額を行わない。
もう一つはこれに加え、65歳を過ぎても働く人の年金受給額を増額するというもの。政府は一つの目の措置に4億フラン(約440億円)、二つ目の措置に8億フラン(約880億円)の追加財源が必要だとしている。
政府によると、老齢・遺族年金制度は2014年以降、急速に赤字が膨らみ、2021~2030年の投資益を除いた累積赤字は約430億フランに達する見込みという。ベビーブーム世代が今後退職し少子化も進んでいることから、連邦政府は年金財源の確保が喫緊の課題だとしている。
連邦政府は今年3月に発表した老齢・遺族年金の改革案でVATを最大1.7%引き上げるとしていた。今回の1.5%引き上げにより、一般物品のVATは9.2%、生活必需品は3%となる。
世論調査では「1.9%も可」
一方、スイスの世論調査機関gfs.bernが今年5月末から6月初旬にかけて全国の有権者1336人を対象に実施した調査外部リンクによると、女性の定年を65歳に引き上げることについて「賛成」「おおむね賛成」と答えたのは全体の66%に上った。また全体の64%がVATを1.9%引き上げてもいいと答えた。
スイスでは昨年秋、女性の定年年齢やVATの引き上げなどを盛り込んだ老齢・遺族年金と企業年金の抜本的な年金制度改革案「老齢年金2020」が国民投票で否決されたが、この世論調査では当時とは異なる傾向が見られた。
おすすめの記事
おすすめの記事
スイス、男性と女性の定年年齢が違うのはなぜ?
このコンテンツが公開されたのは、
スイスでは男性は65歳、女性は64歳で定年を迎える。男性の方が平均寿命が短いのだから、不公平だという人もいるかもしれない。なぜそのような差が出来たのだろう?スイスの老齢・遺族年金制度の歴史を紐解いた。(SRF/swissinfo.ch)
もっと読む スイス、男性と女性の定年年齢が違うのはなぜ?
おすすめの記事
ETHチューリヒ、気候に優しい除湿機を開発
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの連邦工科大学チューリヒ校(ETHZ)は10日、電気を使わない除湿器を開発したと発表した。壁や天井の建築材として、空気中の湿気を吸収し一時的に蓄えることができる。
もっと読む ETHチューリヒ、気候に優しい除湿機を開発
おすすめの記事
スイスでX離れ進む
このコンテンツが公開されたのは、
スイスで「X」から撤退を表明する企業や著名人が相次いでいる。
もっと読む スイスでX離れ進む
おすすめの記事
スイスの研究者、キノコで発電する電池を開発
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの研究者たちが、キノコで発電する電池を開発した。農業や環境研究に使われるセンサーに電力を供給できるという。
もっと読む スイスの研究者、キノコで発電する電池を開発
おすすめの記事
ジョンソン・エンド・ジョンソン、スイスでの人員削減を計画
このコンテンツが公開されたのは、
米ヘルスケア大手ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)は、スイスでの人員削減を計画している。
もっと読む ジョンソン・エンド・ジョンソン、スイスでの人員削減を計画
おすすめの記事
「スイス銀行のナチス関連口座は再調査を」 歴史家ら提唱
このコンテンツが公開されたのは、
スイス最大手のUBS銀行の資料室には、第二次世界大戦中の行動に関する秘密がまだ残されている可能性がある――。過去にスイスの銀行と独ナチス政権とのつながりを調査した歴史家、マルク・ペレノード氏は、再調査の必要性を強調する。
もっと読む 「スイス銀行のナチス関連口座は再調査を」 歴史家ら提唱
おすすめの記事
スイス航空の緊急着陸 客室乗務員の死因は酸欠
このコンテンツが公開されたのは、
スイスインターナショナルエアラインズ(SWISS)のブカレスト発チューリヒ便が先月オーストリアのグラーツで緊急着陸した後、客室乗務員(23)が死亡した事件で、死因は酸欠だったことが分かった。複数のスイスメディアが報じた。
もっと読む スイス航空の緊急着陸 客室乗務員の死因は酸欠
おすすめの記事
ユングフラウヨッホ、2024年の来場者が100万人を突破
このコンテンツが公開されたのは、
ユングフラウ鉄道グループは、ユングフラウヨッホの2024年の来場者が105万8600人となり、2015年以来6度目の100万人の大台を超えたと発表した。
もっと読む ユングフラウヨッホ、2024年の来場者が100万人を突破
おすすめの記事
2024年のスイスの企業倒産件数、過去最高に
このコンテンツが公開されたのは、
スイスは2024年の企業倒産件数が過去最高を記録した。
もっと読む 2024年のスイスの企業倒産件数、過去最高に
おすすめの記事
国民投票に向けた署名がまたも偽造
このコンテンツが公開されたのは、
医療品の安定供給を求める国民投票に向けて集められた署名のうち、3600筆以上が無効な署名だったことが明らかになった。
もっと読む 国民投票に向けた署名がまたも偽造
おすすめの記事
スイスの柔道家エリック・ヘンニ、86歳で死去 東京五輪柔道銀メダリスト
このコンテンツが公開されたのは、
1964年東京オリンピックで銀メダルを勝ち取ったスイス人柔道家のエリック・ヘンニ(Eric Hänni)さんが25日、86歳で死亡した。スイス柔道・柔術協会が発表した。
もっと読む スイスの柔道家エリック・ヘンニ、86歳で死去 東京五輪柔道銀メダリスト
続きを読む
おすすめの記事
スイス人の心配事は「年金」と「健康」 外国人や難民問題も上位に
このコンテンツが公開されたのは、
2018年の「心配事バロメーター」の調査によれば、今年も引き続き老後の蓄え、そして健康問題がスイス人の大きな心配事として挙げられていた。失業問題は順位が下がった。
もっと読む スイス人の心配事は「年金」と「健康」 外国人や難民問題も上位に
おすすめの記事
スイス版「税と社会保障の一体改革」
このコンテンツが公開されたのは、
スイス連邦議会は17日、法人税改革と年金制度改正を組み合わせた政府提出法案を承認した。2019年に国民投票にかけられる見込みだ。
もっと読む スイス版「税と社会保障の一体改革」
おすすめの記事
年金受給者の暮らしを支えるスイスの「補足給付」とは?
このコンテンツが公開されたのは、
スイス連邦議会が貧困高齢層への支援策の縮小をめぐり紛糾している。年金だけでは生活できない人に支給される「補足給付」は、給付額が2000年以降倍増。下院は給付額を抑制すべく制度改革に前のめりで、改革に消極的な上院との議論はかみ合わない。一体何が問題なのか?
もっと読む 年金受給者の暮らしを支えるスイスの「補足給付」とは?
おすすめの記事
スイスのベルセ大統領、年金改革の必要性強調 国内紙に
このコンテンツが公開されたのは、
スイスのベルセ連邦大統領兼内務相は独語圏の日刊紙NZZのインタビューで、付加価値税(VAT)の最大1.7%引き上げなどを盛り込んだ新しい年金改革案について「安定した年金制度を維持するためには追加の資金調達が不可欠」と強調した。
もっと読む スイスのベルセ大統領、年金改革の必要性強調 国内紙に
おすすめの記事
女性の定年65歳、エイジレス社会ースイスと日本の年金改革案は?
このコンテンツが公開されたのは、
急速に進む高齢化にどう対処するかー。スイスも日本も年金制度改革が長年の課題になっている。スイスでは女性の定年年齢や税率の引き上げをめぐる議論が再燃。日本の安倍晋三内閣は今年始め、年金の受給開始年齢を70歳以降に引き上げる案を打ち出した。
もっと読む 女性の定年65歳、エイジレス社会ースイスと日本の年金改革案は?
おすすめの記事
在外スイス人への年金給付に課税案
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの連邦議会で、海外で暮らすスイス人の老齢年金に対し源泉徴収で課税する案が提出された。住む場所によって年金受給者が不利な取り扱いを受けずに済むようにするためだ。
もっと読む 在外スイス人への年金給付に課税案
おすすめの記事
女性の定年年齢65歳に スイス内閣が再び年金改革案
このコンテンツが公開されたのは、
スイス連邦内閣は2日、新たな遺族・老齢年金基金(AHV)制度改革案のガイドラインをまとめた。財源確保に伴う付加価値税(VAT)の引き上げと、女性の定年年齢を64歳から65歳に延長するのが主な内容。昨年秋の国民投票で否決された改革案と似た内容だが、内閣はこのままでは年金財源が枯渇するとして、再び改革案を議論の場に上げる考えだ。
もっと読む 女性の定年年齢65歳に スイス内閣が再び年金改革案
おすすめの記事
年金改革は否決 食料安全保障は賛成多数
このコンテンツが公開されたのは、
年金改革案 連邦議会は今年3月、年金財源を確保するための年金改革案「老齢年金2020外部リンク」を全州議会(上院)、国民議会(下院)で可決。この改革案と、付加価値税の引き上げの2点が強制的レファレンダムによって国民投票…
もっと読む 年金改革は否決 食料安全保障は賛成多数
おすすめの記事
高齢化がのしかかるスイスの年金制度
このコンテンツが公開されたのは、
スイスでは24日、女性の定年年齢を64歳から65歳に引き上げることなどを盛り込んだ抜本的な年金制度改革案「老齢年金2020」が、国民投票にかけられる。スイスは日本と同じく社会の高齢化が進み、このままでは年金財源が破綻するおそれがあるため、政府は改革案を実現したい考えだ。
もっと読む 高齢化がのしかかるスイスの年金制度
おすすめの記事
女性の定年年齢、スイスは64歳 各国は?
このコンテンツが公開されたのは、
スイスは女性の権利や男女平等の分野で遅れを取って来た。女性の参政権が国全体で認められたのは1971年。その頃は欧州のどの国にも、一部の国ではそれより10年も前にこの権利が存在していた。 また、国民投票で女性の産休が保…
もっと読む 女性の定年年齢、スイスは64歳 各国は?
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。