The Swiss voice in the world since 1935

スイス金融当局、「仮想通貨リブラは決済システムの認可が必要」 声明発表

リブラのロゴ
Keystone / Kay Nietfeld

スイス連邦金融市場監督局(FINMA)は11日、米フェイスブック社が独自に発行を計画する仮想通貨「リブラ」について、決済システムに該当し関連法を順守するよう求める声明外部リンクを発表した。リブラの発行を司るフェイスブックの子会社「リブラ協会」がジュネーブに本拠を置くことから、スイス金融当局の対応が米国を始め世界から注目されていた。

おすすめの記事

リブラ外部リンクは相場を安定させるため複数の国の通貨や短期国債を担保にする「ステーブルコイン」に分類される。FINMAは2018年に仮想通貨などトークン(デジタル権利証)を3分類しそれぞれが順守すべき法令を整理した指針を発表したが、ステーブルコインそのものを規制する法制度はない。このためリブラ協会がFINMAに対し、どのような基準を満たすべきか照会していた。

FINMAは声明で、リブラは現在の発行計画によればスイスの金融市場インフラ法に基づく「決済システム」の認可が必要だと明記。スイスの決済システムは国際水準である「金融市場インフラのための原則」に基づき、サイバーリスクなどへの対処を求めている。反マネーロンダリング(資金洗浄)法にも則る必要がある。

「同じリスクには同じルールを」原則を踏襲し、一般の決済システムが備えるべき引当金も必要だとする。リブラは一般の決済システムよりリスクが高いことから、資本配分や流動性、リスク分散、引当金管理の分野などで追加的な要件が課される。銀行法の規定が適用される可能性があるとする。

FINMAは引当金の管理に関する収益とリスクは、ステーブルコインを所有する一般消費者ではなく、リブラ協会が引き受けるべきだと強調した。またコーポレートガバナンス(企業統治)や反資金洗浄については国際的な規制も考慮するよう求めた。税法や競争法、データ保護法に関してはFINMAの権限外だとする。

FINMAによる営業許可の手続きは、該当の申請をFINMAが受領してから始まる。それまで個別企業の認可の経緯については口外されないとした。一方、リブラ協会は11日、FINMAに決済システム業の許可を申請したと発表外部リンクした。

FINMAの声明に先立ち、スイス銀行協会は10日、ウェブサイトで「リブラは銀行業の認可が必要だ」とする見解外部リンクを表明していた。FINMAは「銀行に似たようなリスクはある」としながらも、銀行業に当たるとは認定しなかった。

5日にはスイス国立銀行(中央銀行)のトーマス・ジョルダン総裁が「外貨担保型のステーブルコインがスイスで流通すると、金融政策の効力が発揮されなくなる」との懸念を表明。10日には米国のシガル・マンデルカー財務次官(テロ・金融情報担当)がベルンの米国大使館で記者会見し、リブラは法人登録先に関わらず米国の資金洗浄対策の規制を守る必要があるとの認識を示していた。

一方、スイス連邦政府は8月、上院のビルラー・ハイモ・プリスカ議員から質問主意書外部リンクでリブラに対する政府見解を問われ、「(スイスの)経済的位置にとって前向きな動き」であり、関連規制に関して「改正は必要ない」と回答していた。

人気の記事

世界の読者と意見交換

ニュース

コーデリア・ベール

おすすめの記事

TIME誌、スイス人弁護士を「最も影響力のある100人」に選出

このコンテンツが公開されたのは、 米誌タイムズの「2025年最も影響力のある100人」に、弁護士コーデリア・ベール氏がスイス人女性では唯一ランクインした。ベール氏は気候訴訟で異例の勝訴判決を勝ち取った人物だ。

もっと読む TIME誌、スイス人弁護士を「最も影響力のある100人」に選出
卵の棚

おすすめの記事

ミグロ、スイス初の年中無休スーパーを開店へ

このコンテンツが公開されたのは、 スイス小売大手のミグロ(Migros)は14日、アッペンツェル・アウサーローデン準州ヘリザウにある1店舗を年中無休化すると発表した。

もっと読む ミグロ、スイス初の年中無休スーパーを開店へ
スイスのカリン・ケラー・ズッター大統領

おすすめの記事

スイス大統領、関税でトランプ氏と電話会談

このコンテンツが公開されたのは、 スイスのカリン・ケラー・ズッター連邦大統領は、米国の追加関税について、ドナルド・トランプ米大統領と電話会談した。

もっと読む スイス大統領、関税でトランプ氏と電話会談
スイスのケラー・ズッター大統領とパルムラン経済相

おすすめの記事

スイス、トランプ関税に報復せず

このコンテンツが公開されたのは、 スイス政府は3日、ドナルド・トランプ政権が同日発表した関税に対し、当面は対抗措置を取らないと表明した。

もっと読む スイス、トランプ関税に報復せず
BYDの車

おすすめの記事

スイスにBYDが上陸 年内に15店舗

このコンテンツが公開されたのは、 中国のEVメーカー比亜迪(BYD)が正式にスイス市場に進出する。年内に全国で15店舗を出店する計画だ。

もっと読む スイスにBYDが上陸 年内に15店舗
スイスFINMA

おすすめの記事

スイス金融当局が組織再編 リスク管理部門を新設

このコンテンツが公開されたのは、 スイスの金融市場監督機構(FINMA、日本の金融庁に相当)は1日、監督体制を強化するため組織を再編したと発表した。クレディ・スイス危機への反省から、立ち入り検査機能を増強する。

もっと読む スイス金融当局が組織再編 リスク管理部門を新設
シモン・プリュス氏

おすすめの記事

スイスで凍結されたロシア資産、1.25兆円に 所有者の特定進む

このコンテンツが公開されたのは、 スイス連邦経済管轄局(SECO)は1日、これまでに国内で凍結したロシア資産は74億フラン(約1兆2500億円)になったと発表した。資産の所有者の特定が進んだことで、昨年4月から1年で16億フラン増えた。

もっと読む スイスで凍結されたロシア資産、1.25兆円に 所有者の特定進む

swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。

他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部