スイス・チューリヒ郊外に5日、無印良品外部リンクのポップアップストアがオープンした。日本の小売大手の参入は以前から国内各紙で報じられ注目を集めたが、気になるのは、同じく日本ブランドで男子プロテニスのロジャー・フェデラーを広告塔に持つユニクロ外部リンクがスイスに来るかどうかだ。
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マルチメディア・ジャーナリスト。2017年にswissinfo.ch入社。以前は日本の地方紙に10年間勤務し、記者として警察、後に政治を担当。趣味はテニスとバレーボール。
チューリヒ州ヴァリゼレンの大型ショッピングセンター「Glatt外部リンク」内にできた無印良品のポップアップストア。オープン2日目の6日は週末ということもあり、大勢の買い物客でにぎわった。店内にはロンドンの店舗で売り上げが好調な文房具、掃除用品、スキンケア用品、食品類などが並ぶ。
ストアの担当者は「初日の売上は目標の145%に達した。今日も同じくらいの勢いだ」と感触を語る。
初日は無印のファンが大半だったが、この日は他店舗への買い物のついでに寄る人が多かったという。無印良品を展開する良品計画は10月、Glattに約1000平方メートルの店舗を開店予定。担当者は、チューリヒ市中心部、ジュネーブへの出店も検討していると話す。
国内紙も注目
無印良品のチューリヒ出店は昨年、「日本の巨大ブランド、スイス上陸」(ドイツ語圏の新聞NZZ外部リンク)「25カ国超で年間35億ユーロを売り上げる日本のブランドがスイスで勢力拡大」(アールガウアー・ツァイトゥング外部リンク)などと報じられ、開店当日には無料紙ブリックが「買い物客で殺到外部リンク」と写真付きで紹介した。
チューリヒ店の担当者によると、良品計画はかねて欧州市場における事業拡大を狙っていた。特に「スイス人はドイツの店舗までわざわざ買い物に来るほど。需要の高さを感じていた」。良品計画も昨年の声明外部リンクで「スイスは先進国の中でも有数の成長マーケット」としていた。
一方、Glatt側もMUJIを呼び込むメリットは高いとにらんでいた。Glattのラゲス・クラヴァデッシャー社長はドイツ語圏の商業紙ハンデルス・ツァイトゥング外部リンクに「生き残るためには、ユニークな案でほかと差別化を図ることが不可欠」と話し、「シンプルでオーガニック、サステナビリティに優れた」(同社長)日本ブランドはスイスでも広く受け入れられると思ったという。
ユニクロは?
一方、スイスが誇るテニス界のスーパースター、ロジャー・フェデラーを広告塔に据えたユニクロはどうなのだろうか。
フェデラーが昨年7月のウィンブルドン選手権で突如、20年来のスポンサーだったナイキではなくユニクロのウェアを着て現れたとき、観客席からどよめきが起こった。ユニクロの親会社ファーストリテイリングと結んだ契約は10年で3億ドル(約330億円)超ともされ、その契約内容もメディアの大きな注目を集めた。
ユニクロのグローバルブランドアンバサダー外部リンクに就任したフェデラーは、すでに同社のCMに出演。自身のフェイスブックアカウントでも、ユニクロのウェア姿で頻繁に登場している。
ユニクロは2018年8月期の欧州事業が大幅な増収を計上し、同月末の欧州の店舗は78カ所に拡大。19年春にはデンマーク1号店、同年秋にはイタリア・ミラノに1号店をオープンするなど、欧州で着々と販路を拡大している。
ユニクロのスイス上陸の可能性は、フェデラーとの契約発表当初から国内各紙で取りざたされてきた。Glattのクラヴァデッシャー社長もハンデルス・ツァイトゥング外部リンクに「ユニクロがうちに来るなら大歓迎だ」と乗り気で、ユニクロ側と実際に協議中だと明かしている。
「税制上の理由」
ただ、ユニクロ側から表立った発表はない。スイス公共放送ラジオの消費者雑誌「エスプレッソ」がユニクロに取材外部リンクしたところ、ユニクロからは「税制上の理由により、現在はスイス市場への参入を考えていない。状況が変わり次第、公式発表する」と短い返答があったという。
スイスインフォの取材に対し、22日時点でファーストリテイリングからの回答はない。
一部のスイス人は冷ややか
ユニクロの上陸を心待ちにするファンは多い。だがファストファッションの過酷な労働環境がクローズアップされる中、国内の一部ネットユーザーは低価格帯の衣料品を扱うユニクロにあまりいいイメージを持っていない。
スイス公共放送(SRF)電子版外部リンクに、あるユーザーは「私が気になるのは、ユニクロが中国で生産しすぎなこと」とコメント。別のユーザーは、倒産したインドネシアの下請け会社が、解雇された労働者の退職金をファーストリテイリングに支払うよう求めている問題に触れ「ユニクロなどの商品を作っていた労働者2千人が2015年からずっと、550万ドルの補償金を待っている。この会社とフェデラーが抱えているのは『税制上の』問題だけではない」と辛らつだ。
「またチープなディスカウント衣料品店がスイスに来ないからって、誰が気にするというのか。ファストファッションがこれ以上増えるのはお断り」と言う人もいた。
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