スイスの伝統的格闘技、シュヴィンゲン(スイス相撲)が過熱している。完璧なまでに商業化され、トップ選手が手にする報酬とスポンサー収入は右肩上がりだ。
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26~28日、3年に1度の全国大会(連邦シュヴィンゲン・アルプス祭外部リンク)がバーゼル・ラント準州プラッテルンで開催される。3日間で40万人以上の観客が会場を訪れ、さらに数十万人が家で中継を見守ると見込まれる。
スイスでこれほど大きなスポーツイベントは他にない。開催予算は4200万フラン(約60億円)。連邦シュヴィンゲン連盟のロルフ・ガッサー事務局長は、2004年以降シュヴィンゲンの人気がうなぎのぼりだと話す。「シュヴィンゲンはすっかり定着し、今日ではとても広く認識されている。ブームだ」
同氏によると、その背景にはスイスの伝統と独自の文化が改めて高い地位を持つようになったことがある。その意味で、真正のスイス文化であるシュヴィンゲンは、スポンサーにとっても魅力的だ。過去10年、選手たちが広告契約から得る収入は増え続けており、昨年は220万フランだった。
だがガッサー氏によると、選手の大半はシュヴィンゲンで生計を立てているわけではない。全部で約3千人いる選手のうち、スポンサー収入を得るのはわずか70~80人。それも年間500フランから10万フランとさまざま。がっつり稼げるのはわずかな強豪だけだ。
「純粋なトップ選手はいくらか稼ぐことができる。シュヴィンゲンで食べていけるのはせいぜい5~10人だ。それでも引退後も暮らせるほどの稼ぎにはならない」(ガッサー氏)
それでもシュヴィンゲン王者は年間数万フランのスポンサー収入を得る。全国大会の優勝者として君臨する3年間はおよそ100万フランが懐に入る。マーケティング企業ESBのハンス・ウィリー・ブロッケス社長は、スイスにしか存在しないスポーツとしては破格の金額だと話す。
それはオリンピックや欧州・世界選手権競技にも引けを取らないという。マイナースポーツがいかに格式を得るかという点で、シュヴィンゲンは1つの好例を示す。「シュヴィンゲンはものすごい成功例だ」
大衆紙ブリックによると、シュヴィンゲン市場は通年で約5千万フラン、全国大会のある年はその2倍の収益を生む。
スイス的価値
連盟、開催者、選手それぞれがうまくやっている。「雰囲気、伝統、スイスらしさ、そして大いなる真正さ。それが多くのスポンサーを惹きつける」(ブロッケス氏)。ドイツ発のディスカウントスーパー、リドルやアルディが自分にないスイスらしさをもとめてシュヴィンゲンを広告に使うのはまさにこのためだ。
全国大会の優勝者は、賞品として種牛を受け取る。牛も他の賞品も金額的にはおまけ程度に過ぎず、多くの選手は家に連れて帰りはしないが、それも大会ならではだ、とガッサー氏は説明する。力強い雄牛を授与される儀式が象徴的なのだ。その絵になる光景は、スポンサーを喜ばせるものでもある。
連邦シュヴィンゲン連盟の5つの地域支部は、現役力士として全国大会に出場する計280人を指名する。さらに10人の出場枠が在外スイス人向けに用意されている。今大会にはカナダ在住者2人と米国在住者4人が出場する。カナダのトーマスとロジャー・バダト兄弟は前大会にも出場。2人はカナダ・スイスの二重国籍で、両親は1993年にゴミスヴァルトからケベック州キングシー・フォールズに移住した。
独語からの翻訳:ムートゥ朋子
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