スイスは9日、国連安全保障理事会の非常任理事国に初めて選出される見込みだ。そこで何を実現すべきなのか、国連開発計画(UNDP)のアヒム・シュタイナー総裁に話を聞いた。
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swissinfo.ch:スイスは国連加盟から20年で、国連の最高権力機関である安全保障理事会に初めて参加することになります。安保理の常任理事国であるロシアが、国連加盟国であるウクライナを軍事攻撃するというような状況下で、スイスのような小さな非常任理事国に何ができるのでしょうか。
アヒム・シュタイナー:スイスは何十年もの間、小国という立場を利用して国際舞台で調停役として介入してきました。国連第2の拠点がジュネーブにあるのは偶然ではありません。
スイスはジュネーブを会議や交渉の場として前面に押し出す術を熟知しています。非常任理事国入りすると、紛争が起こった際に直ちにどちらの味方に着くのか立場表明を迫られるようになります。このため、スイスは安保理ではっきりと個性を打ち出していくことが重要です。
swissinfo.ch:その個性については、安保理の選挙を前にスイス国内で激しく議論されました。ウクライナ戦争を背景に、中立政策の是非も問われています。フィンランドとスウェーデンは北大西洋条約機構(NATO)への加盟申請を決めました。中立と安保理加盟は両立するのか、という疑問が湧きますが。
シュタイナー:答えは明確、「両立する」です。国連は党派的な組織ではなく、現在193カ国が加盟し、考えうる全ての体制やイデオロギーを網羅しているからです。
過去20年間、国連に加盟したスイスの中立性が揺らぐことがなかったように、常任理事国入りによって中立性を疑われることもないでしょう。
世界は今、進行中の軍事劇で迷走することのないよう、強い力を必要としています。力を結集し、ウクライナに対して行われているような侵略は国連の掲げる原則と相容れないことを、ロシアのような国にはっきりと示す必要があります。戦争が多くの苦しみと困窮をもたらすことを、私たちは歴史から学んできました。戦争や暴力が形を変えて起きるたびにそれを繰り返し指摘することが重要なのです。その点で、スイスが今後大きな役割を果たすことを期待しています。
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swissinfo.ch:明らかな国際法・国連憲章違反を犯しているのは隣国を侵攻したロシアだけではありません。1948年の世界人権宣言に定められた普遍的な基本権が、多くの国連加盟国で侵害されています。これらの原則はまだ有効なのか?
シュタイナー:世界人権宣言を根本から疑問視する人に、私はまだ1人も会ったことがありません。表現の自由や集会の自由といった基本的な自由を無視することは、そもそも論外です。
とはいえ国家や社会によって解釈が大きく異なることは紛れもない事実です。人権が道具として扱われるケースも多々あります。自分たちに都合のいい時だけ原則を重んじ、都合の悪い時にはいきなり相対化される。失望や矛盾が生じるのはそのためです。
国連にとって重要なのは、日常的に原則を思い起こし、原則から逸脱しがちな現実に向き合うことにあります。この点でも、スイスは架け橋としての役割を果たすことができます。
(独語からの翻訳・ムートゥ朋子)
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