経済協力開発機構(OECD)は14日発表したスイスに関する2017年の経済報告書で、労働生産性を高める改革を行うよう提案した。
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報告書は「スイスは経済ショックから著しい回復を見せたものの、成長のスピードは遅く、一人当たりの収入は金融危機前の水準で停滞している」と指摘した。OECDは6月、スイスの2017年の成長率を1.5%としていたが、最新予想では0.8%に修正。18年は1.7%、19年は1.8%を見込む。
OECDは「生産性の回復や収入引き上げ、高い生活・健康水準を次世代に引き継ぐためにはさらなる改革が必要だ」と強調した。
また、スイスに農業の補助金以外に予算を投じるよう促した。スタートアップ企業の立ち上げを支援し、エネルギー、通信、運輸分野への国の関与を減らし自由競争を促進するよう求めた。
スイスの高い生活水準を保つため、労働力をめぐる改善策にも触れた。「人口の高齢化に対応するために、スイスは全労働者の定年年齢を一律65歳とし、それ以降は平均寿命に合わせるべきだ」とした上で、「より長く働いてもらうための奨励金の増額や、健康的に働ける期間を長くするためのプログラムを普及させる」ことが必要だとした。
報告書では「高いスキルを持った労働力の供給」や「迅速、大胆で包括的な能力訓練と生涯学習システム」の必要性も強調。中小企業での実習制度の充実などを具体策に挙げた。女性や移民がスイスの労働市場で能力を発揮し切れていないことも指摘。働く母親のキャリアアップを促進するため、家計に優しい保育制度の充実を推奨した。
(英語からの翻訳・ムートゥ朋子)
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スイス人労働者のほぼ半数が、場所に縛られずに働けるようになってきた。背景にはデジタル技術やシェアリングエコノミーの普及があるが、「コワーキング」という仕事場を共有する働き方の登場で、この傾向がさらに強まっている。
インド出身の私は、神経が高ぶった同僚リポーターやあたりをうろつく編集者がいる騒がしいニュース編集部で仕事を学んできた。ジャーナリズム以外の仕事についた時もあったが、集中して考えることに価値を置く職場でさえも静かだったことはあまりなかった。しかし、これはコワーキングスペースには当てはまらない。
コワーキングを広めたい人なら誰でも言うことだが、コワーキングスペースは単なる物理的なスペースではなく、何よりもコミュニティーである。そこでは人々が共同または個人で働き、各人の雇用主が違うことも度々ある。
コワーキングはホットデスキングとも呼ばれ、1990年代中頃にドイツで始まり、サンフランシスコで形を整えた後、世界的に広まったとされる。従来の仕事場に取って代わるものとして、スイスでもコワーキングスペースは急速に増えており、その数は2年前の25から現在は約100に達しようとしている。約80のコワーキングコミュニティーを代表するCoworking Switzerlandによると、コワーキングスペースは予想通りジュネーブとチューリヒに最も集中しているが、郊外エリアにも続々とオープンしているのは興味深い。
スペースを求めて
私がこのようなコミュニティーを探し始めたのは、キャリアの転向を図っていたおよそ2年前にさかのぼる。私は数年前、ミャンマーのエーヤワディー川を終日ボートで巡っていたときに、スーザン・ケインのベストセラー本「内向型人間の時代 社会を変える静かな人の力」を読み終えた。ケインは、協働やオープンオフィスを強調する「新集団思考(new groupthink)」に疑問を唱えている。人々が本当に必要なのは、実際に考え、働ける静かな場所なのだと。ケインはあるインタビューでこう語っている。「人々、とりわけ内向的な人々は、じっくり時間をかけて集中し、フローと呼ばれる心理的状態の中で、仕事をこなしたいと思っている」。私はその著書に感銘を受けた。
モダンで、光があふれ、ソフトな色合いが特徴的なコワーキングスペースWork’N’shareを見つけたとき、ここが私の隠れ家になると確信した。そこは広いオープンオフィスで、以前はガレージおよび建築士事務所として使われていたところだ。ここでは様々な分野の人たちがおおよそ各自で「選んだ」仕事をこなしている。登録者は約100人おり、1日に平均25人ほどがここで働く。
ここのコミュニティーは様々な人々から成り立っており、食品・ビール会社を立ち上げた企業家から、プログラマー、テクノロジーやライフサイエンスのギーク(おたく)、マーケティングのプロなど幅広い。学者やデザイナーと共に働き、ついでにこうした特別な友達が持てることが私には嬉しかった。
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