スイス投資に酔いしれる中国企業
中国企業によるスイスへの昨年の投資額は48億ドル(約5400億円)と、前年の4倍に達したことが、法律事務所ベーカー&マッケンジーの調査で分かった。430億ドルにのぼった中国化工集団(ケムチャイナ)による農業バイオ大手シンジェンタ外部リンクの買収案は、規制当局の審査結果待ちにあり、同調査では除外している。
活発な中国投資の全体像を外観すると、同社の調査では中国による欧州全体への2016年の直接対外投資(FDI)は総額460億ドル(前年比90%増)、対北米では480億ドル(189%増)となった。
昨年、中国の海航集団外部リンク(HNAグループ)はスイスの旅客機関連サービス、ゲートグループ・ホールディングやSRテクニクスを買収。その前に同社はスイスポートを買収していた。その他、近年の巨額取引としては、Haers社によるアルミ製ボトル製造のシグ(Sigg)社買収がある。
他の中国企業はスイス企業を買収せずにスイスに投資してきた。中国のソフトウエア大手、東軟グループ外部リンク(Neusoft)は09年以来、欧州の拠点をアッペンツェルに置いている。東軟の劉積仁(リュー・ジレン)会長は先月の世界経済フォーラム(WEF)で、「最先端のサービス分野への多角化を図り、中国のFDIは今後数年でさらに増えるだろう」とスイスインフォに語った。
「中国において、スイスは透明性が高くて親しみやすく、ビジネス環境のさまざまなランキングで上位を占める安定した国、というイメージだ。海外展開を考えている中国企業は、今後さらにスイスに進路を向けるようになるだろう」
ベーカー&マッケンジーによると、中国企業による欧米への投資額はこの10年間で26億ドルから940億ドルに増えた。その過半は過去3年で急増した。
だが同社は、各国の規制当局が買収案件をより厳しく監視し、中国当局も資本の海外流出を抑えようとするため、中国によるFDIの増加ペースは減速するとみている。同社の調査では、昨年は欧米で計740億ドル以上に値する30の買収提案が阻止された。
ベーカー&マッケンジー中東アフリカ・中国グループのトーマス・ギレス会長は「政治的・規制的な監視の目はより厳しくなり、政治的なリスクの精査と規制への対応は、全体的な買収戦略として非常に重要になる」と話す。
(英語からの翻訳・ムートゥ朋子)
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