「パナマ文書」スキャンダル、元告発者が経験を告白
パナマの法律事務所から大量の内部文書が流出し、世界の著名人が資産隠しに関わった可能性が出てきた問題で、元告発者のルドルフ・エルマー氏が、オフショアビジネスの今後の見通しや自身の経験について、スイスの人気トーク番組で語った。
「パナマ文書」スキャンダルはタックスヘイブン(租税回避地)を止められない
パナマの法律事務所「モサック・フォンセカ」から流出した約1100万点におよぶ資料によると、オフショア銀行の主な利用者は、スイスの銀行(クレディ・スイス・チャンネル諸島有限会社、HSBCプライベートバンク・スイス、UBS銀行)やスイス人弁護士たちだ。
これについてエルマー氏はこう語る。「タックスヘイブンがなくなることはなく、今後もそれをめぐるビジネスは続き、ますます金になるだろう」。主要7カ国(G7)や国連の後押しがなければ、租税の透明化が世界基準になることはないと、同氏はみる。
すべてのオフショア企業が闇ビジネスをしているわけではない
オフショア企業が利用される理由には、マネーロンダリングやテロリストの資金移動のほかに、個人情報の保護、制裁回避、税逃れがある。
「ロシアの誰かがスイスに自分の資産を移そうとするのはよくわかる。ロシアでは資産が没収される可能性があるからだ。政治的に安定した土地に金を移したいのだ。こうした目的は合法的だ」(エルマー氏)
告発者には情報を漏らす理由がある
エルマー氏は以前勤めていた会社のオフショアビジネスに関する情報が入ったハードディスクを盗んだ。データを分析してみると、かなり違法な行為に関する情報が見つかった。エルマー氏は本を出版し、それは後に映画化された。
「私の顧客にどのような『犯罪者』がいるのかがわかったとき、私はとても驚いた。(金融)システム全体が信用できなくなった」(エルマー氏)
企業内での違法行為は見つかりにくい
オフショアビジネスの問題の一つは、関係者それぞれが情報のかけらしか持っておらず、全体像がつかみにくいということだ。そのため、エルマー氏は彼が働いていた会社で何が起こっているのかを完全に把握することができなかった。担当分野は銀行とコンプライアンス(法令遵守)だったが、セキュリティは担当ではなかった。会社のガイドラインは「良いものに思えた」が、現実は違った。
「チューリヒとニューヨークにいる経営陣が決定を下しているのかと思っていた。彼らは信用できる人たちなのだと。だが、私が病院で(盗んだ)データをみたときは『まさか!』と思った」
個人のモラルは重要
モラルの乱れはどこにでもあると、エルマー氏。「ドイツにもスイスにもモラルが乱れた人たちはいる」
「何らかの時点で社会的責任が出てくる。人として、自分の考えにもとづいて『それは良くない。世間に知らせるべきだ』と思えるようにならなくてはならない。いずれ何らかの時点で、公共の利益が個人企業の利益を上回るときが出てくる」
(英語からの翻訳・編集 鹿島田芙美)
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