1990年代以降のグローバル化により、スイスが世界で最も大きな利益を得たことがドイツの民間機関の調査で明らかになった。日本は2番目に大きく、成長率著しい中国やインドではグローバル化の恩恵は小さかった。
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独ベルテルスマン財団が8日発表した報告書外部リンクは、先進・途上国42カ国の1人当たりの実質国内総生産(GDP)を調べた。1990~2016年の間に、実質GDPは全体で毎年約1兆ユーロ(約129兆円)拡大した。GDPが増えると国民所得も表裏一体で増加する。
全42カ国で1人当たりGDPが伸びた一方、その伸び方は大きくばらついた。スイスの伸び幅は年平均1913ユーロと、42カ国中1位となった。2位は日本で1502ユーロ、次いでフィンランド(1410ユーロ)、アイルランド(1261ユーロ)が伸びた。伸びが最も低かったのはインド(22ユーロ)で、中国(79ユーロ)が続いた。
ベルテルスマン財団の最高経営責任者(CEO)のアールト・デ・グース氏は、「調査結果が示すのは、グローバル化は間違いなく福祉利益を生むことだ。保護主義は正しい道ではない。しかし、その道によって形成されたグローバル化は人々に焦点を当てている。これこそが成功するための唯一の道だ」と結論付けた。
同財団は、グローバル化による利益が各国に均等にもたらされていないことを批判。問題の解決には、途上国の市場を開放し、先進国の補助金政策を減らすことが有効だと指摘した。
「我々は、強きを助け弱きを挫くのではなく、共通の拘束力のあるルールや標準を定めるような国際秩序を目指さなければならない」。同財団の経済専門家、コーラ・ユングブルート氏はこう話す。「それがグローバル化の利益を可能な限り広く分配する唯一の手段だ」
グローバル化指標
調査は同財団の委託を受けスイスのコンサルティング企業プログノスが実施。各国の経済、政治、社会的なグローバル化指標を使って「国際的なつながり度合い」を計測し、一人当たり実質GDPとの相関を調べた。グローバル化指標は連邦工科大学チューリヒ校景気調査機関(KOF)が算出するものと似たような手法で、各国を0~100で評価したものだ。
報告書は、グローバル化指標の低い国は、先進工業国に比べて市場開放が遅かったために、依然として貿易障壁に直面していることがその原因である可能性を指摘した。
(英語からの翻訳・ムートゥ朋子)
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