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2億円の医薬品 なぜそんなに高額なのか

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史上最高額をたたき出した遺伝子治療薬「Zolgensma」 Keystone

米食品医薬品局(FDA)はこのほど、スイス製薬大手ノバルティスの脊髄性筋萎縮症(SMA)に対する遺伝子治療薬「ゾルゲンスマ(Zolgensma)」を承認した。この薬が話題をさらったのは、史上最高額の210万ドル(約2億3300万円)という薬価だ。なぜそんなに高いのだろうか。

ゾルゲンスマ外部リンクは遺伝子治療薬で、薬品開発では比較的新しく、急成長を遂げている分野だ。この薬は、遺伝子の正しいコピーが疾患を引き起こしている突然変異の遺伝物質と入れ替わる。これらの治療法はある意味で、病気の根本的な原因、つまり欠陥のある遺伝子に働きかけ、致命的な小児疾患、まれな血液疾患、遺伝性のがんの多くに効果がある。

脊髄性筋萎縮症外部リンク(SMA)は遺伝的欠陥が原因で、体の筋肉が劇的に弱まり、体を動かすことはもとより、飲み込む力や呼吸することも難しくなる。急性乳児型SMAにかかった乳児の多くが2歳前に死亡する。新生児 1万人に1人がかかるとされる難病だ。

米FDAは、細胞・遺伝子治療製品承認済み一覧外部リンクの17番目にゾルゲンスマを加えた。FDAは2025年までに年間10〜20件の細胞・遺伝子治療製品の承認を見込む。遺伝子治療の臨床実験は現在、38カ国で約2600件が進行中、もしくは完了している。

スイスの製薬大手ノバルティスとロシュは、遺伝子治療革命の旗振り役だ。両社は最近、複数の小規模バイオテクノロジー企業を買収した。

医薬品価格の高さがクローズアップされるのは、何もゾルゲンスマに限った話ではない。数年前、スイスではC型肝炎治療薬の6万ドルという価格をめぐり、大きな議論が起きた。

ノバルティスのヴァス・ナラシンハン最高経営責任者外部リンク(CEO)は米CNBC外部リンクの解説で、遺伝子治療はわずか1回の投与で致命的な遺伝子疾患を治療できる、医学の大きな進歩だと強調した。場合によっては、複数回投与による治療もあるという。

2歳未満の子供に投薬が認められたゾルゲンスマは、1時間の点滴で1回投与すれば済む。ロシュは経口薬も開発中だ。

もう一つの治療薬は疾患の進行を抑制するスピンラザ外部リンクだ。1年に4回投与する生活が生涯続く。定価は、1年目は75万ドル、それ以降は年間35万ドルで、10年間で約400万ドルかかる計算だ。

新薬の価値に見合った薬価を査定する非営利団体「臨床経済レビュー研究所」は、ゾルゲンスマの適正価格を120万~210万ドル外部リンクとはじき出した。理由は「この致命的な病気に侵された患者家族の生活を劇的に変えるから」という。

計算は主に、それぞれの治療方法によって得られた余命にかかるコストなどを基準に算出される。

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問題はいくつかある。 1つ目は、そのような価格がどのように決められるのか、企業の利益がどれくらいなのかということだ。特にそのような薬の開発費について、詳細はほとんど明らかにされていない。ノバルティス自体がゾルゲンスマを開発したわけではないが、米企業AveXisを87億ドルで買収し外部リンク、この薬を手中に収めた。

さらに、多くの企業は、価値ベースの価格決定モデルによって薬価は決まると主張する。とすると頭をよぎるのは、人ひとりの命にどれだけの価値があるのか、ということ。またその治療法が有効なのか、長期的にみてリスクがないのかどうか、証拠が不足している。市場に出ている治療薬の中にはImlygicなど、期待に十分応えていない製品もある。

遺伝子治療の多くが、患者がわずかしかいない難病をターゲットにしているため、どうしても複雑になる。このため一部では、糖尿病や高血圧のような一般的疾患に対する焦点が薄まっていると批判が上がる。

遺伝子操作という倫理的な問題、さらに遺伝子操作された赤ちゃん「デザイナーベビー」にもつながりかねない。

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高額な医薬品に社会がどうお金を出すのか。それが問題の源流だ。ほとんどの健康保険システムは、1回限りの高額な治療法を想定して作られていない。ノバルティスノバルティスはゾルゲンスマに関してはすでに、保険会社と協力し、購入者には年間42万5千ドルの5年払いを可能にする仕組みを作っているとコメント。治療がうまくいかない場合は部分的な返金も行うとした。しかし、これが各国でどう機能するのかは未知数だ。

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