スイス国立銀行(中央銀行、SNB)がマイナス金利政策を導入した2015年以来、スイスの銀行がSNBに支払った金利は80億フラン(約9千億円)にのぼることが独民間調査会社の調べで分かった。2019年は最も多い20億フランを支払った。
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独デポジット・ソリューション外部リンクの算出した負担額は、毎年約20億フランとするスイス銀行協会(SBA)外部リンクの推計値とほぼ一致する。商業銀行は富裕層や法人顧客にマイナス金利を転嫁せざるを得ず、SBAはSNBのマイナス金利を強く批判している。
SNBは2015年1月以降、政策金利をマイナス0.75%に設定している。金利が低いと投資家にとってフラン建て資産で運用する魅力が減るため、需要の集中によるフラン高騰を防ぐことができる。フラン高はデフレや輸出競争力の低下、外国人観光客の減少など、スイス経済にとってマイナスが大きい。
欧州中央銀行(ECB)も14年6月にマイナス金利政策を導入し、段階的にマイナス幅を0.5%まで下げてきた。14年6月以降、ユーロ圏内の銀行がECBに支払った金利は250億ユーロ(約3兆円)にのぼる。
デポジット・ソリューションによると、最も負担額が多いのはドイツの銀行で、累積80億ユーロ。スイスとフランスの銀行が続く。だがスイスの銀行が経営上受けるダメージは他の欧州銀行よりも大きいと指摘。ユーロ圏では税引き前利益の平均5.6%だが、スイスでは同13.1%に当たるとはじき出した。
マイナス金利の仕組み
民間銀行は中央銀行に当座預金口座を持ち、顧客から預かった資産の一定比率以上の金額を準備預金として中銀に預けることが義務付けられている。顧客の引き出し要求にすぐに応じたり、銀行が倒産したときに顧客の資産を守ったりするためだ。
世界経済に対する不安が高まると、投資を減らして預金に回し、資産価値が下がらないよう安全通貨のフランに振り向ける傾向が強まる。スイス国内の銀行にたくさんの預金が集まり、その結果SNBの当座預金残高が増える。
SNBは、準備預金が一定額を超えた銀行に対し、超過部分にマイナス金利を課している。つまり預金が集まりすぎた銀行は、SNBに金利を支払うことになる。
現在は法定準備金の25倍まではマイナス金利が免除されている。19年9月まで、免除対象は20倍だった。免除対象の拡大により、SBAは銀行にかかる負担が今年は10億フラン前後に下がるとみている。
だがSNBはマイナス金利政策がさらに長引くと示唆。マイナス幅を広げる可能性もちらつかせている。
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(英語からの翻訳・ムートゥ朋子)
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