スイス南部ヴァレー州の山村に、142年前に作られたチーズがある。持ち主の男性がスイスのニュースメディアに語ったところによると、1875年製のビンテージチーズは男性の祖母が存在をすっかり忘れ、最近まで地下室に置きっぱなしになっていたためにできた偶然の産物だった。食べても問題ないという。
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チーズの持ち主はグリメンツというフランス語圏の村に住むジャン・ジャック・ジュフュレさん。「このチーズはイエダニやネズミ、熱波を免れて来た」と話す。
ジュフュレさんの職業は州の畜産部門の責任者。プライベートでは古くてレアなチーズを集めることに情熱を燃やしている。自宅の地下室には現在、1944年製を含む72点の標本がある。ジュフュレさんはコレクションをもっと増やしたいという。
ジュフュレさんはスイスのニュースメディアに「お金持ちの変人に大金を払うからと言われても、自分のコレクションは絶対売らない」ときっぱり。142年前のチーズは数年前、父親が地下室で見つけた。ジュフュレさんは、自分の祖母が単にチーズの存在を忘れてしまい、父親が見つけるまでそのままになっていたのではないかという。
ジュフュレさんの1875年製のチーズが世界最古と言い切るのはまだ早い。2014年、中国で発掘された複数のミイラ化した遺体の間から、3800年前のチーズの一部が見つかった。昨年には、スウェーデン人ダイバーが沈没船の中で340年前のチーズが見つかったと公表していた。
世界最古でなおかつ食べられるチーズについて確実な記録は存在しないものの、ジュフュレさんは自身のチーズが有力な候補になると自信をのぞかせる。
チーズのサンプルは3年前、有害物質が含まれていないか調べるため、ベルン州にある専門機関に送られた。検査の結果、有害なバクテリアは検出されなかった。
(英語からの翻訳・宇田薫)
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スイス国民が2016年に食べたチーズの量は、一人当たり22.05キロで総計18万6756トン。スイスの農業団体が今月16日に発表した。
同年のチーズ消費量は、前年に比べ6千トン増えた(一人当たり2.6%増)。スイスでは年々チーズの消費量が増えているという。
とりわけ人気のチーズは、グリュイエール、アッペンツェラー、ティルジット、ラクレットチーズ、ヴァシュラン・フリブルジョワ。比較的値段の高い羊やヤギのチーズの人気も高まっているという。
農業団体によると消費されるチーズの種類に近年変化がみられているという。過去10年間ではフレッシュチーズやクワルクの消費が年間一人当たり1.6キロ増えた(25%増)一方で、セミハードチーズの消費量は490グラムの増加に留まり、ハードチーズの消費量は680グラム減少した。
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牛乳価格の値下がり 酪農家の生存競争
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生産過剰が招いた牛乳価格(乳価)の大幅な値下がりは、欧州だけでなくスイスの市場も直撃した。酪農家は生存競争を勝ち抜くため、より一層の合理化を求められている。そんな中、なんとか安定した経営を続ける二人の酪農家がいる。一人は農場に最新のハイテク設備を投入、もう一人はハイパフォーマンスな乳牛を飼育する。
ロボットが牛の都合に合わせて乳を搾り、牛舎の掃除や餌やりも行う。そんな最先端の設備が導入された、スイスで最大手の酪農場がある。この酪農場の持ち主(本人の希望により匿名)は、「事業を酪農一本に絞り、合理化と効率化に多額の投資をしてきた」と言う。
スイスにおける乳価は過去の数カ月間で一層下落し、、1リットル当たり0.5フラン(約55円)を割り込んだ。この農場の場合、効率を最大限に高めたとしても0.55フランの乳価を維持できなければ採算が取れない。この酪農家は、「今の状況では、牛舎の戸を開くごとに100フラン札を置いてくるようなものだ」と、赤字経営の実態を自嘲気味に語る。
しかし、あきらめるつもりはない。「とにかく生産し続けるしか活路はない。生産の拡大とスピードアップ、そして低価格化が進んでいる。先に脱落するのは競争相手か自分か。破滅への道をまっしぐらなのかもしれない。だが競争をあきらめた時点で敗北が決定するのは間違いない」
複数の従業員を抱えるこの酪農家は、今は貯蓄を切り崩して生活している。乳価が間をもなく上昇に転じるよう願いつつ、投資を最小限に抑えて現在の低価格時代を耐え抜こうとしている。
「牛乳生産国としてのスイスを守りたければ、生産コストを削減しなければならない。そのためには政治の力で大枠を変える必要がある」。このハイテク酪農業者はその一例として、国産穀物の価格を維持するための保護策をあげる。「スイスの穀物農家にとっては収入増につながるありがたい策だ。しかし、このために濃厚飼料(栄養価の高い飼料)の値段はドイツの2倍以上にもなり、牛乳生産者は壊滅的なダメージを被っている」
厳格な経営方式
アールガウ州フィズリスバッハに住むトーニ・ペーターハンスさんは、乳価の下落に不満を言わない。2013年のアールガウ州最優秀飼育業者に選出されたペーターハンスさんの所有するホルスタイン牛は「スイスで一番」だと言う。スイスの乳牛が一生のうち生産する牛乳の量は平均して1頭当たり約2万3千リットルだが、「我々の乳牛は5万8千リットルまで生産できる。また、寿命は平均よりも約2倍と長く、対費用効果に優れている」。
ペーターハンスさんの成功は偶然の産物ではない。彼の農場では、最適化された飼料作りから牛糞の詳細な分析まで細部に至り、「軍隊並みの厳格さ」でコントロールされている。「我々の農場は、毎週の尻尾洗いから年3回の全身の蒸気洗浄まで、綿密なスケジュールに従って管理されている。農場内の清掃も徹底しており、長靴を履かなくても汚れないほどだ」
新しい車、新しいトラクター
現状の乳価では、ペーターハンスさんのような優良業者といえども採算ラインを割り込んでしまう。それだけに、効率性で劣る他の酪農家が置かれた状況の厳しさは想像に難くない。「同業者の多くは眠れない夜を過ごしている。節約に徹し、投資を控え、支払いも遅れがちだ。ひどい状態にある農場も少なくない」。そう語るペーターハンスさんだが、誇らしげに次のように付け加える。「我々は違う。最近も15万フランの新しいトラクターを購入したところだ」。しかもローンは組まずに一括払いで、と強調する。
ペーターハンスさんは、トラクターの他にも新しい乗用車を購入した。この好調ぶりは、彼の事業に四つの柱があることが大きい。一般的な農業コンサルタントの勧めに反し、彼は事業を一つに絞らなかった。所有する52ヘクタールの農地では、牛の飼育の他に農作物の耕作も行われ、太陽光パネルも設置されている。また、所有する機材を他業者の
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