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コロナ禍でわかる ロカルノはただの映画祭ではない

ロカルノ映画祭
今年のロカルノ国際映画祭は新型コロナウイルスの影響で、規模を大幅に縮小した Keystone / Pablo Gianinazzi

今年のロカルノ映画祭(8月5~15日)は規模を縮小して開催された。それでもスイス人はこの国際映画祭に忠実であり続ける。ロカルノに集まるのを伝統にしている家族もいる。

今年のロカルノ国際映画祭は新型コロナウイルス感染拡大のため、主にオンラインで開催された。開催地ロカルノの劇場、映画館での上映会は限られ、中央広場ピアッツァ・グランデに設置される野外シアター、国外からのゲスト招待、授賞式、パーティーは行われなかった。それでも同映画祭は多くのスイス人を魅了してやまない。ある家族は、映画祭の開催時期にロカルノに集まることを伝統にしている。

スイスのクリスマスは、家族全員が揃う大事な日。でも、それができない家族もいる。そのような家族は他の季節に会える日を探す。映画やアート、音楽に興味のある総勢14人のマイヤー一家にとって、それは夏だった。一家の「クリスマスディナー」は10年前からロカルノで行われている。もちろんそれは今年も、だ。

クリスマスディナー
マイヤーさん一家の「クリスマスディナー」。ロカルノで swissinfo.ch

多くの場合、メインは映画ではない。家族でも映画の好みや興味は異なるからだ。朝食時や映画の鑑賞時に偶然会ったら、同じ時間を共有する。

swissinfo.chはロカルノで、マイヤー一家に話を聞いた。

swissinfo.ch8に開催されるロカルノ映画祭で家族と一緒に「クリスマス」を祝うという特別なアイデアは、どのようにして生まれたのですか?

B. グルッツ・マイヤー:私の姉妹の一人が映画に興味を持ったのがきっかけでした。彼女と彼女のパートナーは共に映画好きで、何年も前にロカルノ映画祭を訪れていました。今から10年以上前に、2人は私のもう1人の姉妹と、私を含めて一緒にロカルノに旅行に行こうと決めたんです。反論する必要はありませんでした。だって私は年に一度、ただ食事をするよりも長い時間を2人の姉妹と過ごせる機会を得られたんですから。姉妹の1人はスイスの反対側に住んでいて、もう1人は何年もアフリカで暮らしているんです。そうして私たちはまず、4人でロカルノで会いました。翌年からは他の家族も加わりました。

swissinfo.ch:映画を見ていない時は、ロカルノで何をしていますか?

B. グルッツ・マイヤー:本当に映画を楽しむために来ている家族もいます。私自身、次の映画祭までの1年、スクリーンの前に一日中座っていられるのをずっと楽しみにしているんです。一方で自転車やハイキング、水泳など、スポーツを中心にしている家族もいます。時に「スポーツをする人が映画祭来場者からベッド(宿泊ホテル)を奪う」と批判されますが、これは事実ですね。ロカルノがただ、年に一度、家族全員が集まる場所というだけのことです。

S. グルッツ・マイヤー:普段の生活よりも少し怠けた時間を過ごして、いつもよりも短時間でお金を使って、いつもの母・父・子の輪より少し大きくなった「家族」を感じています。

ロカルノの周りを歩くだけでいいんです。絵のように美しい路地、湖、住宅街の間に迷い込んで噴水を発見したり、思いがけず小さな森の中に到着したり、誰がこの町でまるまる1年を過ごしているのかと密かに自問自答したり。この魅力的な小さな町の幅広さを足元で感じることができます。

رجل يجلس على مدرجات في لوكارنو
ベンチに座ってショーの開始を待つグルッツ・マイヤーさん Thair Alsaadi /swissinfo.ch

swissinfo.ch家族はいつ、どのようにして集まるのですか?「クリスマスディナー」についても教えてください。

B. グルッツ・マイヤー:集まり方は非常に淡々としています。映画館で会ったり、その前後に一緒にコーヒーを飲んだりちょっとしたものを食べたり、夜に集まる約束をしたり。そうすると異なるメンバー・異なる編成で何度も会うことになり、数日後には結局、全員が一度は連絡を取ったことになります。一度だけ、勝手な行動がダメな夜があります。全員が一緒に食事に出かける「クリスマスディナー」の日です。

swissinfo.chあなたにとって映画祭のハイライトは?

S. グルッツ・マイヤー:ロカルノでの数日間でたくさんの良い映画を見た後に感じる、精神的な飽和感のようなものです。

B. グルッツ・マイヤー:ここに来た人達ほぼ全員にとってのハイライトの1つは、グランデ広場で行われる夜の上映会です。夜9時半になると街灯が消え、古い建物が色とりどりにライトアップされ、広場が暗くなる。そうするとスクリーンにはいつも最初に、客席の様子がさまざまな角度から映し出されます。知っている誰かが映るのではないかという期待や、自分の姿が突然スクリーンに映し出されたときに見せる、人々の特別な表情への期待に胸が膨らみます。隣の席の人にキスをする人もいれば、アイスを特別派手に「ガツガツ」と食べ始める人もいるんですよ。

swissinfo.ch:グランデ広場での上映が無い今年のロカルノ映画祭をどのように過ごしますか。

S. グルッツ・マイヤー:映画に対する情熱が薄いにもかかわらず、私は毎年ロカルノに来ています。理由は一年を通してあまり会えない家族に会いたいから。なので、結局今年も昨年と同じような過ごし方をしています。ただ今年は映画ではなくお互いの会話が中心になるので、少し変わった年になるかもしれません。今年はいつもより時間があるので、会話も長く、密なものになるでしょうね。

F. マイヤー:家族の中で最も怠惰な映画鑑賞者の私たちなので、縮小された上映プログラムは、過ごし方にあまり影響を与えません。毎晩、グランデ広場の最前列を確保するために20時半に食事の席を離れる必要がないので、時間的なプレッシャーがないのは良いことです。

それでも映画館で上映される数少ない映画を見に行くのは、とても気持ちが良いものです。しっかりとした座席予約システムが導入されているので混み合わず、長い列に並んでも希望の座席を確保できないというイライラからも解放されましたし、新型コロナウイルス感染の心配なく映画館を訪れることができます。

(独語からの翻訳・大野瑠衣子)

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