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スイスのバレエ界でまた虐待スキャンダル

ダンサー
スイスのバレエ界でまた虐待スキャンダルが起こった Keystone / Martin Divisek

ベルン・バレエ団の複数のダンサーが、指導者から虐待を受けた。スイスのダンス業界では似たような問題が相次ぐ。業界でのハラスメントは増加傾向にあるのか。それとも沈黙を破ろうとしていることの表れなのか。

10月9日、スイスで最も有名な劇場の1つ、チューリヒ・シャウシュピールハウス(Schauspielhaus Zurich)でいじめ問題があったと報じられた。ベルン・バレエ団でも最近、同じようなスキャンダルが浮上したばかりだ。

事の発端は、2021年春にあるダンサーが虐待を受けたと訴えたこと。同僚たちもこれに加わった。ダンサーの1人がドイツのメディアに語ったところによると、リハーサルの指導者が若手ダンサーたちを口説くなどし、誘いに乗らないダンサーは契約を更新しないなどの行為をしていた。独バレエ団は直ちに外部調査を始め、この男性指導者を一時的に謹慎させた。

ベルン・バレエ団は先週、この指導者による言葉のセクハラがあったと認めた。だが調査責任者によると、身体的な性的虐待はなかった。フロリアン・ショルツ芸術監督は「したがって、このリハーサル指導者はバレエ団で働き続けることが認められる」と述べた。

このセクハラ事件は、地域紙ベルナー・ツァイトゥング、バーズラー・ツァイトゥング、独語圏の日刊紙NZZ、大衆紙ブリックなどが一斉に報じた。

ダンサーの労働組合は怒りに震え、リハーサル指導者を続投させるバレエ団の決定に抗議した。舞台芸術界の労働団体ツェーネ・スイス外部リンクのサルヴァ・ロイテネッガー氏はスイス公共放送ラジオ(SRF)に「権力を乱用する者をどうして支持できるのか。何も変わらなければ、また同じことが起こる」と語った。

記者会見
9月29日の記者会見で、セクハラ告発についてコメントするベルン市立劇場ディレクターのフロリアン・ショルツ氏(中央)、ベルン・バレエ団のダンスディレクター、イザベル・ビショフ氏(左)、弁護士のモニカ・ヒルツェル氏 © Keystone / Peter Klaunzer

匿名の証言

悲しいことに、これは何も新しいことではない。2021年6月、有名なベジャール・バレエ・ローザンヌ(BBL)は、ハラスメントや権力乱用などの疑惑を含むスキャンダルに巻き込まれた。

ベジャール・バレエ財団は当時、「職場の安全衛生、労働環境、経営に関する監査が必要だ」と発表。財団の評議会は最近、監督下で加害者の職務続行を認めることを決めた。

仏語圏のスイス公共放送(RTS)が取材で集めた複数の匿名証言によると、2007年のモーリス・ベジャール氏亡き後、芸術監督を引き継いだジル・ロマン氏の精神的な嫌がらせが報告されていた。

RTSによると、ロマン氏は過去にも同様の告発を受けたことがある。最初の告発は2008年だった。しかしその後、ベジャール・バレエ団がロマン氏を擁護する嘆願書を立ち上げ、団員の82%が署名した。これによってロマン氏の職務続行が認められた。スイスの舞台芸術組合のアンヌ・パピルー氏は「監査によって、当時の芸術監督が無罪になったことは理解しがたい」と語る。

しかし、ベルン・バレエ団の調査責任者であるモニカ・ヒルゼル氏は、身体的ハラスメントに対する法的根拠がダンスの労働法に存在しないと指摘する。

ヴァレー(ヴァリス)州のインターフェースやジュネーブのアリアスなど、スイスの他のダンスカンパニーも、ダンサーに対する権力の乱用で何度かメディアの注目を集めたことがある。

6月には、バレエスクール「チューリヒ・ダンス・アカデミー」も醜聞を作った。13人の元生徒からの証言をもとに、オリバー・マッツ校長、芸術監督シュテフィ・シェルツァー氏をはじめとする教師たちがダンサーを侮辱し屈辱を与えたとして、職権乱用で告発されたのだ。調査結果は2023年初めに発表される予定だ。 

サポート部門

しかし、なぜダンス界はとりわけハラスメント事件の影響を受けるのか。

この職業では、身体が主な仕事道具だ。身体的な接近は、ダンサーの日常生活の一部でもある。ジュネーブの「パヴィヨンADC(コンテンポラリーダンス協会)」のディレクター、アンヌ・ダヴィエ氏は2021年12月、swissinfo.chにこう語った。「こうした環境では境界があいまいになり、性犯罪の温床になる可能性がある」

パピルー氏は、恐怖心やキャリアを危険にさらしたくないがために、多くのアーティストがそうした被害を報告しないと言う。

国内の労働組合は「不服申し立て部門」を2021年11月1日に開始した。スイスでは唯一のこの機関は、心理的・性的嫌がらせや圧力など、職場で苦しみや困難を感じている人たちに、中立的なサポートを提供することを目的としている。

ダンス界における虐待事例は後を絶たない。だが最近、ダンサーたちは沈黙を破り、長い戦いの幕開けとなるであろう最初の一歩を踏み出した。

ベルンのダンサー協会BETAの理事会は「ベルン・バレエ団のメンバーたちが、これまで、またこれからも置かれていたであろう労働環境を知り、悲しく、落胆している」と述べた。また、声を上げた当事者らの勇気に感謝の意を表した。

編集:Virginie Mangin、英語からの翻訳・宇田薫

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