ビジュアル・アーティストのポール・ルッソ氏がニューヨークのアヴァント・ギャラリーで開催中の個展「ビッグ・マネー」には、スイスフランの旧札も登場している。
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会場には色々な国の紙幣や新聞紙、雑誌や色とりどりの包装紙など、西洋文化で日々廃棄されるモノがレプリカになって並ぶ。その中に、2017年に役目を終えた旧20フラン札が約2メートル長の作品となって展示されている。この作品には1万5980フラン(約200万円)の値が付いた。
「紙とインクの隆盛と、最終的な没落」。ルッソ氏はコレクションのコンセプトをこう説明する。仮想通貨や非代替性トークン(NFT)の登場により、自身が考えていたよりも速くそれが起こっているという。
お金で芸術家を称える
「A Swiss Twenty(仮題:スイスの20)」と題された作品は、1995~98年にスイス国立銀行(中央銀行、SNB)が発行した第8代20フラン札がモチーフだ。
SNBが通貨発行権を一任されたのは1907年。以来、平均して20年ごとに新デザインに切り替えている。昨年4月に第8代は法的価値を失い、新札に流通の道を譲った。第8代はイェルク・ツィンツマイアーが、スイスの著名建築家やデザイナーをモチーフにデザイン。10フラン札にはル・コルビュジエの名で知られるシャルル・エドゥアール・ジャンヌレ・グリ、1千フラン札には美術史家のヤーコプ・ブルクハルトが描かれた。
ルッソ氏が20フランを選んだのは、「スイス人がその紙幣をもって芸術家を称える」手法と、作曲家アーサー・ホネッガーの肖像画が気に入ったからだという。
ポップアートを21世紀流に
ルッソ氏は1958年、ノースカロライナ州生まれ。美術大生時代に、「遠近感」や「空間・奥行きの錯覚」の創出を試みたプレモダンの画家たちに魅了された。また、頭角を現し始めた同世代のポップアーティスト、ジャスパー・ジョーンズやアンディ・ウォーホルたちの、2次元的なモチーフを平面に落とし込む手法に心を打たれた。彼らが目標としたのは画家ポール・セザンヌ。1839年に出現した写真と、それが芸術に与えた影響にいち早く呼応した画家だ。セザンヌのような画家は世界の新しい見方を考案しなければならなかった。
ポール・ルッソ氏は、同世代のアーティストが採用したコンセプトの枠組みを覆し、「フラットな奥行き」という、平面的な2次元のイメージを3次元の物体に、あるいはその逆に変換することを目指した。ルッソ氏の手法は絵画、印刷、彫刻、溶接、化学など多岐にわたる。作品は世界中のギャラリーや個人コレクションで展示されている。
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スイス国立銀行(中銀)は10日、新20フラン札を発表。新紙幣の基本色は赤色で、モチーフにはロカルノ国際映画祭のスクリーン、チョウ、地球儀が描かれる。新紙幣は今月17日から流通が開始する。
新紙幣各種のテーマは「多様なスイス」。スイス中銀のフリッツ・ツアブリュック副総裁は記者会見でそう話し、新20フラン札はスイスの創造的な面を象徴していると語る。新20フラン札ではスイスが文化の場として、また様々な分野における文化的、芸術的活動の場として描かれているという。
「この紙幣の主な要素は光だ」とツアブリュック氏は話す。「光のおかげで、自然や、人が創造した作品を視覚的に認識できる。そのため光は創造性というテーマと深く結びついている」。新20フラン札の基本色はこれまでと同様の赤色だ。
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スイスの50フラン紙幣が、国際銀行券協会(IBNS)の紙幣コンペで「バンクノート・オブ・ザ・イヤー2016」を受賞した。
芸術的価値があり、革新的なセキュリティ機能を備えた紙幣に与えられる「バンクノート・オブ・ザ・イヤー」。今回受賞したスイスの50フラン紙幣は偽造防止のために、特殊な繊維や赤外線吸収インク、光学的変化インクを使うなど、計15種類の特殊性を備えている。さらに3層構造のうち2層には、綿紙と補強性のある高分子素材が使われており、従来の紙幣よりも耐久性がある。
IBNSはスイスの50フラン紙幣について「3層構造のDurasafe® 技術を採用した鮮緑の縦型紙幣には、タンポポの綿毛、山脈を背景に宙を舞うパラグライダー、創造性にあふれる人間の手が描かれている」と話す。
高分子素材を使用した紙幣が「バンクノート・オブ・ザ・イヤー」に選ばれるのは今回で3度目だ。
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スイスの1000フラン札(約11万円)は世界で最も高額な紙幣の一つだ。欧州中央銀行は今月4日、違法行為を防止する目的で2018年末までに高額紙幣の500ユーロ札の発行を停止する計画を発表したが、スイス政府は「1000フラン札はスイス文化に欠かせない」として同紙幣発行の継続を明らかにした。
スイス国内で流通している1000フラン札は、2000~14年の間に2千万枚から4千万枚へと倍増した。
中道左派のスイス社会民主党マルグレット・キーナー・ネレン議員はテロリストや犯罪者間での現金取引やマネーロンダリングに悪用されやすいとの観点から、高額紙幣の流通を懸念する。
だがスイス政府は19日、こうしたリスクを認識しており、高額紙幣を使った違法行為の防止に必要な対策はすでに講じられていると文書で回答した。
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