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2019年ロカルノ国際映画祭はどうなる? 新芸術監督アンスタン氏語る

新芸術監督に就任したリリ・アンスタン氏を報道陣に紹介するロカルノ国際映画祭のマルコ・ソラリ総裁
新芸術監督に就任したリリ・アンスタン氏を報道陣に紹介するロカルノ国際映画祭のマルコ・ソラリ総裁。スイス、フランス、イタリアの映画専門家が選ばれることの多い芸術監督の座に女性が選ばれたのは、アンスタン氏で2人目 KEYSTONE/TI-PRESS/SAMUEL GOLAY

ロカルノ国際映画祭が新しい芸術監督を迎えた。昨年12月1日付で就任したリリ・アンスタン氏、42歳。スイスで最も権威ある映画祭の名声を維持するという大きなチャレンジに挑む。映画祭の今後の展望をスイスインフォに語った。

アンスタン氏は昨年8月、ロカルノ映画祭開催直前にベルリン国際映画祭の共同ディレクターに指名されたカルロ・シャトリアン氏の後任に選ばれた。折しもその夏のロカルノ映画祭ではジェンダー平等を目指す宣言書が採択された。今では世界各国で多くの映画祭がこれに追随している。

ロカルノ映画祭の芸術監督に女性が起用されたのは、今回が初めてではない(イレーネ・ビニャルディ氏が2000~2005年に就任)。だが今回アンスタン氏が選ばれたのは、明らかに、ジェンダー平等に向かおうという映画祭の意欲の表れだろう。仏ベルフォール国際映画祭で芸術監督を務めていたアンスタン氏は、番組制作や映画制作の豊富な経験もある。

アンスタン氏はパリで生まれ育った。フランスの歴史と芸術に興味深く関わった家系の出身でもある。

曾祖父の1人は、1871年のパリ・コミューン弾圧を率いた陸軍大将だった。「とても誇りに思えることではないので、家族はこの曾祖父についてあまり話してこなかった」のだという。その兄弟のギュスターヴ・アンスタンは教師で、「僕の元レトリック教師、アンスタン先生」に作品を捧げると記した詩人、ロートレアモン伯爵ことイジドール・デュカスの恋人だったと考えられている。

アンスタン氏の祖父シャルル・アンスタンは20世紀の冒険家の典型のような人だった。1920年代にシカゴで機械工として働いた後、カメルーンで金鉱を探し、戦時中はレジスタンスの兵士として戦い、アフガニスタンのカブールでその生涯を閉じた。亡くなる少し前にカブールでフランス人小説家のジョゼフ・ケッセル(著書に『昼顔』がある)にも出会っており、ケッセルは彼を短編小説の一つ「Le Zombie(ル・ゾンビ)」の主人公にした。

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探究者

アンスタン氏は、カブールで自ら命を絶ち一度も会うことのできなかった祖父を、小説を通して知った。いくつもの顔を持った祖父の足跡を探し求めて作ったのが、ドキュメンタリー映画「Le Zombie(ル・ゾンビ)」。ケッセルの小説と同じタイトルの同作品は、2008年に公開された。当時すでに、アンスタン氏はローマのヴィラ・メディチにあるフランス・アカデミーで映画・映像関連プログラムの作成をしていた。その後スイスの国境に近いフランスのベルフォール国際映画祭の芸術監督に就任した。

プロデューサーからプログラム作成者になったのはごく自然な成り行きだったという。ドキュメンタリー制作で生計を立てるのは難しかったからだ。映画というものに貪欲なアンスタン氏は、作品を「商業映画」や「芸術映画」のように分類して評価することを好まない。「重要なのは、その映画が良い作品かどうか」だからだ。

バーチャル・リアリティやトランスメディアなどの新しいテクノロジーを試すことも恐れない。ネットフリックスやアマゾンが製作で存在感を現しつつあるような、新しい環境に適応していくことにも問題はないという。

就任後初めてとなる今年のロカルノ映画祭(8月7~17日)では、実験的で革新的な映画作品を紹介する「サイン・オブ・ライフ部門(Signs of Life)」が残されるという。呼び方は変わるということだが、どんな名称になるのか、変更が作品の選定にどのように影響するのかに関して詳細が語られることはなかった。

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このコンテンツが公開されたのは、 ロカルノ国際映画祭の新芸術監督、リリ・アンスタン氏にインタビュー。「映画祭のエクスペリメンタル・フィルム(実験映画)部門について」(swissinfo.ch)

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近年のロカルノ映画祭では、アジアやアフリカ地域の幅広い作品に無関心な評論家もいたようだが、アンスタン氏自身は、特にチュニジアやアルジェリア、モロッコなどの北西アフリカ地域の作品に惹かれていると明かした。

その地域で新しい才能を発掘するために、専門のコンサルタントを雇ったほどだ。また、70~80年代の映画制作ブームが去ったとは言え、サハラ砂漠以南のアフリカ地域での制作動向にも注目しているという。

2019年のレトロスペクティブ

映画祭の最終プログラムは7月半ばまで公表されない。だがアンスタン氏は、今年のレトロスペクティブでは、自らの映画観に完全に一致するアメリカのブレイク・エドワーズ監督の特集が予定されているとスイスインフォに明かした。ハリウッドに籍を置きながらも、独特で、ほとんど芸術映画と呼べるほどの優れた作品の数々を生み出した監督だ。

初期の傑作の「ティファニーで朝食を」(1961)、「酒とバラの日々」(1962)、ピーター・セラーズを起用した「ピンクパンサー・シリーズ」、「ビクター/ビクトリア」(1982)などのラインナップを見れば、今年の夏、会場のピアッツァ・グランデが大いに賑わうことは間違いないだろう。

撮影現場でのブレイク・エドワーズ監督と、妻で女優のジュリー・アンドリュース。1969年撮影
撮影現場でのブレイク・エドワーズ監督と、妻で女優のジュリー・アンドリュース Keystone

リリ・アンスタン氏に会える無料チケットプレゼント

リリ・アンスタン氏は2月5日(火)、チューリヒのスイス国立博物館(Landesmuseum)が主催するフランス語カンファレンスに参加します。この機会にアンスタン氏をもっとよく知りたい方は、フルネームと連絡先を添えてthomas.waldmeier@swissinfo.ch までご連絡ください。カンファレンスのメディアパートナーであるスイスインフォより、先着順に読者の方々へ入場チケットをプレゼントします(数に限りがあります)。


(英語からの翻訳・由比かおり)

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