国際交渉を絵にするとしら、あなたは何色を選ぶ?外交官であり画家でもあるモハマディア・アルナサンさんが人権理事会(HRC)を描くのに手に取った絵の具の色は黄色だ。彼女の油彩画の個展が開かれている世界知的所有権機関(WIPO)館内にはこの色が際立って映える。国際都市ジュネーブの今の雰囲気を描写したというこれらの作品は、外交とアートを明るい有彩色で結んでいる。
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横浜市出身。1999年からスイス在住。ジュネーブの大学院で国際関係論の修士号を取得。2001年から2016年まで、国連欧州本部にある朝日新聞ジュネーブ支局で、国際機関やスイスのニュースを担当。2016年からswissinfo.chの日本語編集部編集長。
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The colours of diplomacy
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シリアのダマスカス出身のアルナサンさんは、ジュネーブの国際機関シリア代表部に勤務して4年になる。主に国連貿易開発会議(UNCTAD)、WIPO、HRCでの交渉を担当する。
7月26日から2週間、WIPOのホールで開かれている個展は、パンデミックが始まって以来、国連が主催する初のイベント。アルナサンさんが仕事を通じて観た自身の視点をもとに、外交官としての人生を色彩で表現した。
外交を展開するのに欠かせない演説とその威力、旅行やハードワーク、プレッシャーで感じた不安感情、同僚との出会い、国連の庭にいる孔雀から感じ取った高貴な安らぎ、最近の新型コロナウイルスへの対応に当たった焦点、オンラインで行われるHRCなどを主題にした21点の絵画が飾られている。
「Diplomat’s Journey(仮訳:外交官の旅)」と題する抽象画は、職務での旅行や経験、多様な感情、自身の外交官としての人生の本質を描写している。
アルナサンさんは、ジュネーブに在住し働く3万2千人の外交官・公務員の1人。国際交渉の場であるジュネーブには、国連欧州本部があり、世界保健機関(WHO)、世界貿易機関(WTO)、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)など、42の国際機関が本部を置く。
WHOがパンデミック(感染症の世界的大流行)を宣言し、多国間交渉が新型コロナウイルスへの対応に集中し始めた2020年3月から、アルナサンさんはコロナウイルスをモチーフに「外交の焦点」を描き始めた。鮮やかな色彩は、ウイルスと闘う挑戦を乗り越えるというシンボルであると同時に、彼女自身の楽観主義を反映している。
年間3400回以上行われるジュネーブでの多国間交渉は、新型コロナウイルスによる規制で、会議や交渉のほとんどがオンライン形式で行われている。対面での議論が欠かせない外交において、それは根本的な変革となった。世界の人権を促進・擁護する国連機関であるHRCも同様だ。
こうした中、アルナサンさんは、自分が座るシリア代表者の席からの視点で絵を描き、この異常な時代を記録に残すことにした。この作品では、2年前からHRCのセッションで女性が議長を務めていることに誇りと感動を覚えたことから、HRCのセッションで外交官が登壇してまず述べる言葉を国連の公用6カ国語で書き記している。「マダム議長、ありがとうございます」と。そして、オンラインで非対面の会議とはいえ、「人間の精神エネルギーの存在」の象徴である黄色をベースに選んだ。
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