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夢破れて:スイス、冬季オリンピック招致の失敗の歴史

スイス・オリンピック委員会のユルグ・シュタール会長とヴィオラ・アムヘルド・スポーツ相が2030年、2034年冬季五輪の正式招致のポスターを公開したのは、つい1週間前のことだった
スイス・オリンピック委員会のユルグ・シュタール会長とヴィオラ・アムヘルド・スポーツ相が2030年、2034年冬季五輪の正式招致のポスターを公開したのは、つい1週間前のことだった © Keystone / Peter Klaunzer

ウィンタースポーツの国スイスが、2030年と2034年の冬季五輪の開催立候補地から漏れた。連邦制や政治的影響力の低下が関係しているのだろうか。

レマン湖畔に本部がある国際オリンピック委員会(IOC)は29日、スイスに二重のショックを与えた。IOCは、2030年大会の開催候補地をフランス、34年大会を米ソルトレイクシティに絞り込み、いずれの大会にも立候補を表明していたスイスは含まれなかった。最終決定は来年夏の予定だが、それは単なる形式的なものだ。

スイス国内では失望と動揺が広がる。IOCの発表直後、元スポーツ相のアドルフ・オギ氏は仏語圏のスイス公共放送ラジオ(RTS)で「理解しがたいことだ」と語り「スイスは平手打ちを食らった。私たちはこの大会を開催するためにすべてを尽くしてきたと思ったのに。非常に失望している」とショックを隠し切れない様子だった。

招致を支持していたヴァレー(ヴァリス)州のスポーツ担当相フレデリク・ファーブル氏も「失望以外の何物でもない」としたが、希望もあると指摘した。スイスは候補地からは漏れたが、2038年大会の開催に関しIOCと「優先的に対話」することになったためだという。

ヴィオラ・アムヘルド・スポーツ相もこの点を強調し、独語圏のスイス公共放送テレビ(SRF)に対し、14年後にスイスで開催できる可能性があること喜んでいると語った。

同氏は「オリンピックの立候補と開催がどれほど大きなものであるかを考えると、今しばらく時間が与えられたことに不満はない」とした。

政治的保証の欠如

スイスが2030年、2034年冬季五輪開催に立候補したのは比較的最近だ。スイスオリンピックは3月、招致の実現可能性について調査を開始。立候補に合意したのは、正式な招致のわずか5日前だった。

元IOC幹部でローザンヌ大学名誉教授のジャン・ルー・シャペレ氏は仏語圏の日刊紙ル・タンに「この6カ月は政府と議会の支持を取りつけることに費やした方が良かっただろう。スウェーデンやフランスと比べると、スイスはこの点に欠けた」とコメントした。

独語圏の日刊紙ターゲス・アンツァイガーによれば、この政治的支持のギャップはスイスにとって明らかな弱点だった。フランスの立候補はエマニュエル・マクロン大統領の全面的な支持を受け、国の財政支援も約束されていた。

一方、スイスにはレファレンダム(国民表決)というリスクがある。レファレンダムはスイスの民主的プロセスの中心だが、IOCにとっては「大きなリスク」だった、と同紙は付け加えた。

2022年のサン・モリッツとダボスの共同招致、2026年のヴァレー州の招致など、スイスではここ数年、冬季五輪の開催を目指したいくつかの試みが住民投票によってとん挫している。

スイスでは、1928年と1948年の2回、サン・モリッツで冬季五輪が開催された
スイスでは、1928年と1948年の2回、サン・モリッツで冬季五輪が開催された Keystone / Martin Ruetschi

IOCのクリストフ・デュビ五輪統括部長は、ローザンヌに本部を置くIOCが、スイス国民の拒絶反応を恐れたという見方は事実ではないと否定した。実現可能性についての調査では国民の67%が2030年大会に賛成していたと、RTSとのインタビューで指摘した。

しかし、スイスの場合、自治体、州、連邦政府から大会に対する政治的な支持を確保する必要があることも認めた。シャペレ氏によれば、大会期間中の安全確保と良好な交通の便を確保するためには、これら様々な政治レベルの支援が不可欠となる。

日刊紙トリビューン・ド・ジュネーブと24 Heuresは「連邦制は、IOCが求める保証とは相容れない」と報じた。

招致に敗れたのは、見方によってはスイスの政治的影響力が弱まっていることの表れだとオギ氏は言う。フランスが来年夏のパリ五輪の直後に、また開催地に選ばれることに驚いたという。両紙によれば「スイスが負けたとすれば(中略)それはロビー活動が不可欠な環境において、オリンピックのコミュニティ内に影響力のある人がいなくなったからだろう」。またフランスにはスポーツ界に力を持つ数人の有力者がいると主張した。

「持続可能な」大会

スイス、フランス、スウェーデン(29日に候補地から落選)はいずれも、世界初の「持続可能なオリンピック」を開催すると発表していた。史上最高の550億ドル(約8兆円)を費やした2014年ソチ冬季五輪以来、IOCは金食い虫の新規建設を避け、既存会場を活用する必要性を主張してきた。

スイスは、既存インフラを活用し、競技を国内に分散して開催する計画を立てていた。この方法であれば、新規建設が必要になるのは五輪14競技のうち1競技にとどまるからだ。しかし、このアイデアが裏目に出たようだ。

「スイスの招致活動を見ると、ローザンヌからグラウビュンデンにかけて、約10のオリンピック村からなるインフラが非常に大きく広がっている」とデュビ氏は言う。IOC委員会は、アスリートが集まりやすく「真のオリンピック精神」が発揮できるような、よりコンパクトな計画を望んでいたという。IOCは29日、スイスは資金調達計画を最適化することもできたと述べた。

米ソルトレイクシティーは、2002年の冬季五輪会場を今も良好な状態に維持している
米ソルトレイクシティは、2002年の冬季五輪会場を今も良好な状態に維持している Keystone / Elise Amendola

IOCは、フランスでの大会はオーヴェルニュ・ローヌ・アルプ地域圏とプロヴァンス・アルプ・コート・ダジュール地域圏に集約され、国や民間の強力な支援の恩恵を受けるだろうと述べた。一方、ソルトレイクシティは、2002年大会時のインフラが完全な状態で残っており、これを活用するため多額の財政投資が不要だという。

振り出しに戻る

2030年と2034年の大会を逃したことは「失敗ではない」とドゥビ氏は言う。「スイスには冬季五輪を開催できる素晴らしい能力があるが、招致には改良が必要だ。今回の決定は、2038年に向けてこの招致活動を一緒にやり直す可能性を与えるものだ」

同氏によれば、2038年大会の開催地として候補に上がっているのは今のところスイスだけだ。

「2038年大会の招致はどこにも声をかけない。ただし2027年までは」とドゥビ氏は言う。その年までに、スイスは改良版の計画が必要になる。

もし委員会の言葉通りだったとして、スイスが4年以内により確かな提案をすれば、2038年の大会開催は間違いないだろう。実現すれば、1948年にサン・モリッツで開催された最後の冬季五輪からちょうど90年後になる。

編集:Virginie Mangin、英語からの翻訳:宇田薫

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