スイス南部で開催中のロカルノ国際映画祭は5日、映画界でジェンダー平等を目指す文書の調印式を行った。同映画祭は今後、女性監督による映画作品をより多く取り上げることになる。
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フランスの男女平等推進団体「5050×2020外部リンク」が発案した同文書は「映画祭におけるジェンダー平等のための宣誓書外部リンク」と呼ばれ、今年5月にはカンヌ国際映画祭の代表者が初めて調印した。
ロカルノ国際映画祭はスイスの女性オーディオビジュアル・ネットワーク(SWAN)外部リンクの働きかけで参画を決定。同映画祭の開幕直前に「ロカルノはカンヌに次ぎ調印する一流の映画祭。スイスの映画祭では初となる」と明かした。
調印式はフランス語、ドイツ語、イタリア語で行われ、映画祭各部門の全ての女性審査員が出席した。
SWANによると、この宣誓により同映画祭には今後、「男女比の統計― 特に出品される映画作品の男女比の統計を出すこと」、「審査委員会の任命で幅広い、適切な人選がされているかを確認するためのメンバーリストの公開」が義務付けられる。
>>ロカルノ国際映画祭、70年の歩みを写真で振り返る
アヌシー国際アニメーション映画祭も参画を決めており、3つの映画祭は「早期に男女差別をなくす」ようただちに取り組みを開始する。
連邦内務省文化局のイサベル・シャソット局長は、連邦政府と芸術評議会プロ・ヘルヴェティア文化財団もまた、助成金や雇用の割り当てに男女差別をなくすよう取り組みを進めていると発言。近年、スイスのメディア・アートスクールの卒業生の半数、および映画・TVプロデューサーの4割は女性であるという統計を示した。
しかしその一方で、ポスト・プロダクションに勤める女性の割合は25%と低く、また政府助成金(自治体、州、国)の8割も男性によるプロジェクトが受け取っているという。
5日午前に行われた調印式後、ロカルノ国際映画祭の批判家週間でスイス人女性の映画監督、バーバラ・ミラー氏による「#Female Pleasure外部リンク(仮訳:#女性の悦び)」が世界初上映された。
スイスドイツ語圏で制作された同ドキュメンタリー映画は、ユダヤ教、イスラム教、カトリック教、ヒンドゥー教など宗教観や、現代社会の誤認に基づく女性への性的圧力が主なテーマ。ロカルノ国際映画祭の記者会見で、議論を呼びそうな映画として、映画祭ディレクターのカルロ・シャトリアン氏が同作品名を挙げていた。
ロカルノ国際映画祭
第1回の開催は1946年で、最も歴史ある映画祭の一つとして知られる。ピアッツァ・グランデ広場に設置される屋外スクリーンはヨーロッパ最大で、8千人を収容。
無名作品を取り上げる映画祭として名を広めていった同映画祭では、これまでにジム・ジャームッシュ、スパイク・リー、ガス・ヴァン・サントなど、数々の監督が名を上げた。
(英語からの翻訳・大野瑠衣子)
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