2020年のスイス報道写真大賞はイヴ・ルルシュ氏が受賞した。主催したラインハルト・フォン・グラッフェンリート財団外部リンクの審査委員会は、同氏が写した女性ストライキを高く評価した。
このコンテンツが公開されたのは、
イヴ・ルルシュ外部リンク氏が受賞したのは、2019年6月に全国で開かれた女性ストライキのシリーズ写真(本記事トップ)。出身地ローザンヌで、男女の不平等に対する女性たちの叫びを写した。スイスでは1996年に男女平等法が施行されてからも、賃金格差など多くの不平等が残っている。「女性たちから溢れ出るエネルギーを切り取ろうした。それを題材の中心に据えた」(ルルシュ氏)
ルルシュ氏は1991年からフリーの報道写真家として、ローザンヌを拠点に活動。特に社会の端に追いやられた人々、移動少数民族のロマや社会的な不平等に焦点を当てている。1997年の世界報道写真大賞(アムステルダム)外部リンクを始め、これまでにもたくさんの受賞歴がある。
部門別では、アドリアン・モーザー外部リンク氏が韓国の団体旅行客を写したシリーズ写真が「日常」部門を受賞した。ユングフラウヨッホを訪れた旅行者らは、わずか1時間半の滞在で景観を満喫し、多くの記念写真で思い出を刻んだ。
「スイス・ストーリー」部門では、エレニ・クジョニ外部リンクス氏がバーゼルの慈善団体「Schwarzer Peter (黒いピーター)外部リンク」の日々の活動を写した写真が受賞した。社会の底辺にいる人々、困窮する人々に手を差し伸べる団体だ。
「スポーツ」部門はロリス・フォン・ジーベンタール外部リンク氏に贈られた。嵐の中レマン湖で開催された内陸湖帆走レースの最高峰「ボル・ドール外部リンク」のシリーズ写真だ。無数のボートが帆布や帆柱を失い、乗組員たちが船から落ち、いくつかの船は転覆した。
クリスティアン・ボブスト外部リンク氏は「外国」部門を受賞。セネガルのイスラム教徒の95%が信仰する一宗派、スーフィー教の人々に密着した。「この写真で、イスラムやアフリカに対する人々の偏見を取り除きたかった」(ボブスト氏)
スイス報道写真大賞
ラインハルト・フォン・グラッフェンリート財団が主催するコンテスト。財団はスイスのジャーナリズムや報道写真を振興する目的で、2009年に設立された。コンテストは毎年開催され、大賞の受賞者には2万5千フラン(約280万円)の賞金が贈られる。
(独語からの翻訳・ムートゥ朋子)
続きを読む
おすすめの記事
優れた報道写真はどのように生まれるのか
このコンテンツが公開されたのは、
いつも誰かがどこかで写真を撮り、膨大な数の画像がネットに上げられる現代。そんな時代にも「プロの仕事は何物にも代えがたい」とスイス人写真家ミヒャエル・フォン・グラッフェンリートさんは考える。
もっと読む 優れた報道写真はどのように生まれるのか
おすすめの記事
世界報道写真賞に輝いたスイス人 ペーター・ダムマン
このコンテンツが公開されたのは、
1998年、ロシアの士官候補生の写真で称賛を得たスイス人の写真家ペーター・ダムマン。昨年、ダムマンの残した豊富な作品を振り返る写真集がスイスで出版された。また現在、写真展がベルンで開催されている。
もっと読む 世界報道写真賞に輝いたスイス人 ペーター・ダムマン
おすすめの記事
バーゼルのアートシーン、アートバーゼルとの関係に変化
このコンテンツが公開されたのは、
スイスのバーゼルで13~16日、世界最大のアートフェア「アートバーゼル(Art Basel)」が開催される。12日のヴェルニサージュ(特別招待)では、展示会、イベント、パーティー が目白押しだ。しかし、誰もが喜んでいるわけではない。バーゼルのアートシーンは、この巨大イベントを複雑な思いで見ている。アートバーゼルで集められるのはアートよりも金だ、と話すアーティストやギャラリストが増えている。
もっと読む バーゼルのアートシーン、アートバーゼルとの関係に変化
おすすめの記事
企画記事「スイスの地方移住」、スイス報道大賞にノミネート
このコンテンツが公開されたのは、
昨年10月にswissinfo.chが配信した企画記事「山で暮らしながら働く―デジタル化が可能にした地方移住」がスイス報道大賞にノミネートされた。
もっと読む 企画記事「スイスの地方移住」、スイス報道大賞にノミネート
おすすめの記事
ロブ・グナント―スイス写真界のゴッホ
このコンテンツが公開されたのは、
スイス人写真家ロブ・グナントは、社会の重要課題を力強い写真で表現する能力に長けていた。今年8月、20万点のネガを遺してこの世を去った。
もっと読む ロブ・グナント―スイス写真界のゴッホ
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。