夏の間、高地の牧草地に牛を連れて行く慣習は、中世以来の生きた伝統だ
© Keystone / Gian Ehrenzeller
ユネスコ(国連教育科学文化機関)は5日、ボツワナで開いた第18回政府間委員会で、スイスの「アルプセゾン(アルプスでの放牧シーズン)」を無形文化遺産に登録することを決めた。スイスがオーストリアなどと連名で申請した「灌漑」も登録された。
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スイス内務省は5日の声明外部リンクで、アルプセゾン外部リンクは高山での酪農に関連する技術、習慣、儀式全体を指すと説明した。アルプスへの上り下り、牧草管理やチーズ製造のノウハウ、工芸技術、伝統的な牧歌などが含まれる。
夏の間にアルプスの牧草地に牛を移動させる伝統は、少なくとも中世の記録に残っている。以来、アルプセゾンは各地域の気候や社会、経済状況に合わせ絶え間なく変容してきた。スイスを代表する質の高い食品もアルプセゾンに生産されてきた。
多国籍の灌漑
オーストリアなど欧州6カ国と連名で申請した「伝統的な灌漑:知識・技術・組織」も無形文化遺産に登録された。
スイス南部ヴァリス(ヴァレー)州で行われている、共有財産を管理する協同組合「ゲタイルシャフテン」を中心とした伝統的な灌漑と水管理モデルが評価された。
内務省外部リンクによると、スイスではベルン州とルツェルン州のオーバーアルガウの水草原と、ヴァリス州のビッセ集落(オーバーヴァライザー・ゾンネンベルゲ、アイエント、レンズ、トリエント、ナンダ、グレヘンの集落)が文化遺産に指定された。
生きた伝統を守る
ユネスコの無形文化遺産は同保護条約に基づき、建物や空間ではなく、時代や地域社会の慣行、社会的交流と結びついた文化遺産の保護を目的としている。
口頭表現や舞台芸術、社会的慣行、儀式や祭り、自然や宇宙を扱う知識や慣習、伝統的な職人技などの生きた伝統が無形文化遺産として指定される。
英語からの翻訳:ムートゥ朋子
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