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ローザンヌバレエ、吉田合々香さん 6年で3回ローザンヌに 「今回はプロとして」

クイーンズランド・バレエ団で踊る吉田合々香(ねねか)さん Christian Tiger

クイーンズランド・バレエ団所属の吉田合々香(ねねか)さん(20)が今日5日、ローザンヌ入りする。ローザンヌ国際バレエコンクール2015の決勝の幕間で踊るためだ。吉田さんのように6年間で3回もローザンヌに来るダンサーはあまりいない。初めの2回は生徒として参加。2回目には決勝進出も成し遂げた。「今回はプロとしてお客さんに楽しんでもらえる。たくさんのプレゼントをもらったローザンヌに少しでもお返しができたら」と話す。2、3年先を行く先輩として、ローザンヌや今のキャリアなどについて語ってもらった。

 吉田さんは今年1月、オーストラリアのクイーンズランド・バレエ団の正団員に昇格した。しかも、ローザンヌの今年のコンテンポラリー課題曲の振りを、模範ダンサーとして踊る役にも選ばれた。「振付師のルイーズ・ドゥラーさんがオーストラリア人。我々の公演を見に来てくれた後ですぐに、この役に抜擢(ばってき)してくれた。ローザンヌとまたつながりができたと思い、すごくうれしかった」

 「ところがその後で、バレエ団の芸術監督のリーさんが私を含めた6人で踊る作品をローザンヌの決勝の幕間に持っていくと言い、本当にびっくりした。もう一度ローザンヌに関わりたいと思っていた夢がこんなに早く実現するなんて…」

 こうして二重の形で今年のローザンヌと関わる吉田さんは、ローザンヌの13年の決勝で入賞こそしなかったが、一つのサクセスストーリーの道を着々と進んでいる。そして、この道はローザンヌに参加する若いダンサーにとって、「一つのモデル」となることは確かなようだ。

 スイスインフォは、2年前に吉田さんにインタビューさせてもらっているが、今回スカイプのビデオチャットで見る吉田さんの姿も、話しぶりも、その内容も、そのときに比べ別人のように「大人」に感じられる。そう言うと、「異国の地で苦労して、精神的に少し成長できたかな」という答えが返ってきた。

swissinfo.ch: この6年で3回もローザンヌに来るダンサーは、あまりいません。しかも今回はプロとしての参加。今、どういった気持ちでしょう?また、吉田さんにとってローザンヌとは何でしょう?

吉田: ローザンヌは、小さいときからのあこがれのコンクールでした。10年の初めての参加では、準決勝まで進めたけれど、結局駄目でくやしくて。でも1週間の間に、ここが足りないとか、ローザンヌ後に改善すべき課題などをたくさん見つけられた。2回目の13年は、雰囲気に慣れ、自分をアピールできる気がして、前より楽しめましたが、とにかく、2回とも強い刺激を与えてくれ、驚くほど自分を成長させてくれた。

一言で言えば、バレエ人生で役に立つたくさんのプレゼントをもらったコンクールがローザンヌ。

例えば、コンテンポラリーの課題曲で(ビデオを見るだけなので)違う振りを持ってきていて、初日に直されたりする。そのときすぐにさっと変えられる柔軟性が要求される。実際、カンパニーに入ったらそうしたことの連続。だから、そうした柔軟性の大切さに気づかせてくれ、プロになるために鍛えてくれる場だと思います。

「もう一度ローザンヌに関わりたいと思っていた夢がこんなに早く実現するなんて…」と吉田さん Christian Tiger

振り返ると、ローザンヌは記憶にくっきりと残る濃い1週間で、プロになる心の準備ができたと思います。プロになって、新しい局面に遭遇したら、「あそこで習った通りにすればよいのだ」という自信を与えてくれるので。

私個人のキャリアでは、2回目の参加の時に頂いたオファーで現在があり、今回の3回目にまたローザンヌに来られた。毎回私のバレエ人生を開いてくれるコンクールだと言う気がする。縁も深いし。だから、たとえわずかでも(今回の模範演技や幕間での踊りで)お返しができるように感じ、うれしいです。

swissinfo.ch: では、13年のローザンヌで決勝進出された後、14年1月にクイーンズランド・バレエに入団された経緯を教えてください。

吉田: 決勝で入賞を逃した日の翌日に開催されたネットワークフォーラムで、審査員を務めたクイーンズランド・バレエの芸術監督、リー・ツウシンさんに「心に触れる踊りだった。うちで働かないか」と誘われた。しかも、「入団するだけではなく、これからあなたを育てていく」と言ってもらい、有名で素晴らしいダンサーでもあるリーさんに育ててもらえることに魅力を感じて入団を決心しました。

それまで勉強していたパリを離れることになるけれど、新たな環境で学べることがたくさんあるとも思いました。14年の1年間は研修生でしたが、団員としてお給料を頂きました。ローザンヌのコンクールの後に、このような待遇で迎えてもらえて幸運だったと思います。

swissinfo.ch: 昨年の1年間は、たくさんの舞台に出て活躍されています。育ててもらっている感じですか?

吉田: 確かに1年目の研修生なのに、たくさんの役をもらいました。リーさんは、「舞台の上でも成長してほしい」という考えの持ち主。それで、誰にでも舞台で踊るチャンスをくれる。例えば、昨年は「ロミオとジュリエット」を上演しましたが、そのとき私はジュリエットの友人役をもらいました。

でも、自分の役だけこなしてればいいのではなく、突然代役がくることもあるので、どれでもこなせるように準備していなくてはならない。それぞれの役に対しての注意も自分のことのようによく聞いて、頭に入れておかなくてはならない。

もし、代役で求められているものができないと、その後外されることもある。だから、丁寧にしがみつくようにしていれば、若い子にもチャンスはどんどん訪れる所。

そういう風にして、舞台で何回も踊りながら、すごく成長させてもらっています。いつも、たくさんのことを吸収している感じです。

swissinfo.ch: 今年、ローザンヌのコンテンポラリーの課題を模範演技されました。踊り方など、ローザンヌの参加者にアドバイスがありますか?また、幕間の6人の踊りについても一言コメントを下さい。

吉田: 実は、コンテンポラリーの課題曲は1日1時間で7日間やっただけ。そのため、どういう作品なのかを探るのは、なかなか難しいのです…。

タイトルの「Touch、Fell、Sense」が、まさにそうであるように、手で触る感覚が中心にある。振りも、手に存在感があって、手を目立たせるようなものがたくさんある。もちろん全身も大きく使うのですが…。

何かしら、踊っている間に手からエネルギーが発散され、空間が広がっていくような感じをイメージして、私は踊っています。

幕間の6人の踊りは、アクロバティックな動きが多くて、25分もあるのに、ある人が作品を見て「あっという間だった」と言ったくらい、集中して楽しんでもらえるものだと思います。

swissinfo.ch: 最後に、ローザンヌに対して特に感じていることがありますか?

吉田: たくさんの人、それはローザンヌのスタッフであったり、それまで教えてくれた先生方であったり、そしてもちろん家族であったりしますが、そうした人に支えてもらって、ローザンヌに参加させてもらった。そして今がある。

ローザンヌに参加できるなんて、そんなに簡単なことではないと思うので、そうしたたくさんの人に心から感謝しているということは、どうしても伝えたいことです。

吉田合々香(ねねか)さん略歴

1994年年2月21日生まれ。宮西圭子、ドミニク・カルフーニ、ヴィクトル・ウリャーテに師事の後、パリ国立音楽舞踊学校で学び、同校修了資格取得。平成24年度文化庁新進芸術家制度派遣員。パリ・ショッソンドールコンクール、ビアリッツ国際コンクール金賞受賞。ローザンヌ国際バレエコンクール2010年のセミファイナリスト、13年のファイナリスト。

クイーンズランド・バレエ団の芸術監督リー・ツンシン氏にスカウトされ、14年1月より同バレエ団に入団。研修生(Jette Parker Young Artist)から、15年1月にカンパニーの正団員に昇格。14年の上演作品「くるみ割り人形」では、雪の精・人形・スペイン・芦笛・花のワルツなどを務めた。

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