スイスの科学者たちが英知を結集してチーズフォンデュの材料と食感の関係を解き明かした。モノの姿かたちがどう変わるか、どう流れるかを研究する「レオロジー(流動学)」を応用した。
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「スイスでトロトロすぎたりゴムのようにドロドロしていたり、分離したチーズフォンデュを食卓に出すことほど恥ずかしいことはない。だが現存する完璧なフォンデュの作り方は、神話のようなもので科学的裏付けがない」。スイス連邦工科大学チューリヒ校(ETHZ)の食品・栄養・健康研究所外部リンクの研究者たちは論文にこう研究の意義を説いた。
典型的なフォンデュはグリュイエールチーズとヴァシュランチーズを混ぜ、コーンスターチと白ワインを加える。スイス料理の素人でも、コーンスターチを増やせばフォンデュは濃くなり、白ワインを増やせば薄くなると安易に想像がつくだろう。だがETHZの研究者たちは、最も適切な粘性になる原材料比率を科学的に証明しようと考えた。
論文は「フォンデュの流れ方、すなわちレオロジーは、口当たりや味わいの放ち方、そしてフォンデュチーズのパンへのくっつき方にとって非常に重要だ」と指摘。米化学協会の出版する科学誌「ACSオメガ」に掲載外部リンクされた。
研究者たちは実験室で、コーンスターチの割合が異なる「試料」を作成。それぞれチーズがどう分離して滴り落ちるかを観察した。
研究主任のパスカル・ベルチ氏はスイスインフォの取材に「液体チーズの抵抗力を測定するのは難しい」と話した。「だがボールを使った測定方法がうまく機能した」。ベルチ氏のチームは「ゲル化点」と呼ばれる口の中で知覚される弾力性と流動性の均衡点が、完璧なフォンデュ作りの決め手になると突き止めた。
研究チームは純アルコールと酸を別々にチーズと混ぜる実験によって、白ワインがなぜフォンデュを薄める効果を持つのかも究明した。ベルチ氏は「酸は粘度を高めると予想していたが、実際は両方とも粘度を下げることが分かった」と話す。
結局のところ、最高のチーズフォンデュの作り方はどのようなものか?
「私はいつもたくさんのにんにくを入れるが、最高のレシピがたった一つしかないとは考えていない。私たちが目指したのは、異なる原材料がフォンデュのレオロジーにどう影響するかを理解し、失敗しかけたフォンデュの救済に役立ててほしいということだ」。ベルチ氏はこう話し、研究室に充満したチーズ臭が「予想したほどひどくなかった」と振り返った。むしろ、試料を食べてしまいたい衝動と戦うのが大変だったという。
ベルチ氏は「ある夜、午後8時になっても研究室にいたが、そこには実験用のパンがいくつか残っていた」と明かす。ただ、通常であれば、化学薬品の並ぶ研究室に置いてあるものを口に入れるのはよろしくないとも強調した。
ワインかお茶か
パン以外にジャガイモやバナナ、パイナップルなど何を浸すかによってチーズの粘度が変わったかどうか尋ねると、ベルチ氏は「パイナップル!なんでそんなものを?」と聞き返したうえで、それらの食材では実験しなかったことを明かした。ただパイナップルはパンより「おそらく消化に良い」との見方を示した。
2010年にはチューリッヒ大学病院がチーズフォンデュと一緒に飲むのに紅茶、白ワイン、キルシュのどれが最も消化に適しているのかを研究外部リンクした。20人の健康で空腹なボランティア被験者の協力のもと、「スイスチーズフォンデュを高濃度のアルコールを合わせると、胃の排出機能が著しく遅くなり、食欲を抑制した。一方お茶や水と合わせると消化は格段に速まった」ことが明らかになった。
(英語からの翻訳・ムートゥ朋子)
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同年のチーズ消費量は、前年に比べ6千トン増えた(一人当たり2.6%増)。スイスでは年々チーズの消費量が増えているという。
とりわけ人気のチーズは、グリュイエール、アッペンツェラー、ティルジット、ラクレットチーズ、ヴァシュラン・フリブルジョワ。比較的値段の高い羊やヤギのチーズの人気も高まっているという。
農業団体によると消費されるチーズの種類に近年変化がみられているという。過去10年間ではフレッシュチーズやクワルクの消費が年間一人当たり1.6キロ増えた(25%増)一方で、セミハードチーズの消費量は490グラムの増加に留まり、ハードチーズの消費量は680グラム減少した。
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