スイスで相次ぐ雪崩 監視・予防体制は?
スイス南部のスキーリゾート、クラン・モンタナで先月19日に発生した雪崩は死者1人、負傷者3人を生む惨事となった。1月には東部のシュヴェッガルプでホテルに雪崩が襲い掛かり、3人が軽傷を負った。スイスはそんなに雪崩のリスクが高いのか?どのように監視しているのだろうか?
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ユネスコ無形文化遺産登録へ期待膨らむ「雪崩リスクマネジメント」
クラン・モンタナのスキー場では、幅400メートルのスキーゲレンデを幅840メートルの雪崩が襲い、死者が発生した。また1月にアッペンツェル・アウサーローデン準州シュヴェッガルプで起こった雪崩はホテル・ゼンティス外部リンクのレストランを襲い3人が負傷、駐車場の自動車25台が押し流された。スイスでは雪崩による人的被害が相次いで いる。
スイスの雪崩リスクはどのくらい高いのか
過去20年間外部リンク、人的被害を出した雪崩は毎年平均100件発生している。毎年平均23人が雪崩で命を落とし、その9割はコースから外れた場所でスキーやスノーボードを楽しんでいた人々だ。
道路、鉄道、住宅街や整備されたスキーコースなど、管理された場所に限ると、1996~2010年の年間の雪崩犠牲者数は平均1人以下。1935~49年の年平均の15人から激減した。雪崩により建物内にいる人が死亡したのは、1999年が最後だ。ホテル・ゼンティスの雪崩は稀なケースと言える。
雪崩はどのように監視しているのか?
1945年以降、ダボスにある連邦雪・雪崩研究所(SLF)外部リンクが国営の雪崩監視・警報システムを運営している。200人の専門家と、アルプス地域170カ所に配備された自動測定システムからデータを集め、1日に2回雪崩日報外部リンクを配信している。スイス全国の警察や州、基礎自治体、山岳リゾート、救助隊やその他ウィンタースポーツのプロたちが参照する重要情報だ。
雪崩の監視や被害抑制はうまくいっているのか?
これだけの雪崩警告システムとプロ・専門家を備えているのはスイスならではだ。だがそれでもすべての雪崩を捕捉できるわけではない、とSLFの雪崩予報士フランク・テッヒェル氏はスイスインフォに話す。
「スイスはアルプス山脈とジュラ山脈全域を網羅する広大な監視ネットワークを備えている。それでも我々が観測できるのは雪崩の断片でしかない。時には視界が悪かったり激しく雪が降っていたりするし、人里離れた場所に人が立ち入ることもあり、全ての雪崩を監視できるわけではない。すべての谷に監視役がいるわけでもない」
1951年冬に大きな雪崩が起きて以来、雪崩予防の技術は格段に向上。雪崩日報やハザードマップ、雪崩抑止プロジェクトが確立された。鉄柵やネットなどがアルプス中の防雪林張り巡らされ、現在は延べ1000キロに及ぶ防護設備がリゾート地や民家を守る。
昨年11月には、スイスとオーストリアに継承されてきた雪崩リスクマネジメントがユネスコの無形文化遺産に登録されることが決まった。
下図はSLFによる積雪量マップ(2019年1月10日時点)だ。長期的な平均値に比べてどのくらい深く積もっているかをパーセンテージで示す。
雪崩のリスクがある地域での建設規制はあるのか?
州や基礎自治体の当局はハザードマップを参考に、雪崩が頻繁に起きる場所や安全な区域を定義。前者では追加的な予防策を義務付けている。
雪崩のリスクが高まったら?
該当する地域の行政や警察、山岳ガイド、スキー場スタッフなどで構成される雪崩委員会が招集され、SLFの雪崩予報やその他の天候データを分析。状況に応じてスキー場、登山道、自動車道、施設の閉鎖や、住民・観光客の避難と言った取るべき措置を決める。
アルプス観光を予定する人は何に気を付けたらいいのか?
雪崩が心配な時には、ツアー運営者や現地の観光局に問い合わせるのが一番だ。またSFLやスイス気象台(メテオ・スイス)、SRF天気予報でも最新情報を確認できる。
(英語からの翻訳・ムートゥ朋子)
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