最新の優れたスイス映画が集結する第55回ソロトゥルン映画祭外部リンクが今日開幕し、新ディレクターのアニータ・ウギさんがひのき舞台を踏む。ウギさんはswissinfo.chとのインタビューで、スイス映画やスイス人のアイデンティティーにあるお決まりのイメージを一蹴した。
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イタリア出身で、子供時代をアフリカで過ごした映像制作者。今はスイスを故郷と感じる。イタリア国立映画学校で映画監督を学び、ベルリンとウィーンでドキュメンタリー編集者および監督・プロデューサーとして活躍。マルチメディアを用いた魅力的な物語を制作している。
ブラジル・サンパウロ生まれ。ポルトガル語編集部員で文化担当。映画学および経営学の学位を取得後、ブラジル大手新聞社フォーリャ・デ・サンパウロに入社。2000年にスイスへ移住し、様々なブラジル・メディアの国際特派員を務める。チューリヒを拠点に、活字・デジタルメディアやドキュメンタリー映画の国際共同制作、視覚芸術(第3回バイア・ビエナール展、チューリヒのヨハン・ヤコブ美術館)に関わる。13~17年までルツェルン応用科学芸術大学カメラアーツコースでトランスメディア・ストーリーテリングのゲスト講師を務める。
Eduardo Simantob &Carlo Pisani(映像)
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‘The Swiss are all foreigners, aren’t we?’
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“Wir Schweizer sind alle Ausländer, nicht?”
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Anita Hugi: «Les Suisses sont tous des étrangers, n’est-ce pas?»
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“Gli svizzeri sono tutti stranieri, o sbaglio?”
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‘Os suíços são todos estrangeiros, não somos?’
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“السويسريون جميعهم أجانب، أليس كذلك؟”
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“瑞士人不也都是外国人吗?”
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«Все швейцарцы – иностранцы, не так ли?»
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ソロトゥルン映画祭事務局は、ソロトゥルン旧市街から離れた何の変哲もない通りにある。以前はガソリンスタンドだった建物の屋根には、欧州連合(EU)の旗がはためく。「Kulturgarage(文化のガレージ)」と名付けられた事務所は、街のカルチャーライフの原動力となっているようだ。映画祭事務局にはとてもくつろいだ雰囲気が漂っている。swissinfo.chがウギさんに会ったのは、映画祭開幕のちょうど10日前だ。「ホリデーシーズンを活用して、スイス中の人が休暇に出掛けている間に仕事を進めていました」とスタッフの1人が話す。
ウギさんは一連のインタビューを終えると、私達を迎え入れた。ソロトゥルン映画祭のディレクターに就任したばかりのウギさんは、映画祭のラインナップに負けず劣らず注目されている。映画産業(やインディペンデント映画)やテレビ業界で築いた確かな経歴を見れば、ウギさんはディレクターにうってつけの人材のようだ。最近では、モントリオール国際芸術映画祭外部リンク(FIFA、カナダ)のディレクターを務めた。ウギさんはしっかりとした自分の意見を持っている。スイスにおける映画制作の現状を議論するには格好の相手だ。
ソロトゥルン映画祭
ソロトゥルン映画祭は1966年創設。スイスで最も歴史のある映画祭の1つで、スイス映画産業にとって最も重要な祭典だ。アニータ・ウギ氏は、55年のソロトゥルン映画祭史上、まだ4代目のディレクター。2011年から同映画祭を率い、今はプロ・ヘルヴェティア文化財団に移ったゼライナ・ローラー氏の後任だ。今年の「ソロトゥルン賞」を選考する審査委員は、フランス・スイスの映画監督ウルスラ・メイヤー氏、ドイツ出身のクルド人アーティストのチェミル・シャイン氏とスイス人外交官のミルコ・マンツォーニ氏だ。マンツォーニ氏は最近では、モザンビーク和平交渉を調停した。
スイス映画のグローバルな側面
映画祭のプログラムに目を通すと、いくつかの特徴に気付く。まず、昨年スイスで制作あるいは共同制作された映画の量だ。特に、人口800万人余りの国の規模を考えると多い。次に、スイス公共放送協会(SRG/SSR、swissinfo.chの親会社)が、ほとんどのすべての共同制作で重要な役割を果たしていること。そして、スイス映画のグローバル化だ。国際共同制作が増え、特に若い世代の映画制作者には外国にルーツを持つ人が多い。また、多数の映画が外国各地を舞台にしている。
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時間と手間と好奇心
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ソロトゥルン映画祭の新ディレクター、アニータ・ウギさんに、スイス映画にみられる「スイスらしさ」を聞いた。
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ところが、ウギさんは、スイス映画の国際的な側面に驚くことはないと考えている。「スイス人はみな外国人ですよね?」といたずらっぽく言う。ウギさんはむしろ、深刻化する気候変動や環境問題の他、家族生活や大人になること、存在意義といったより普遍的な問題を扱う映画の多さに驚いている。
ウギさんもお決まりのイメージには屈せず、積極的に闘う。スイス人にはユーモアのセンスがない(ほんの少ししかない)という先入観を覆そうとする。そのために、映画祭のオープニング作品としてミヒャ・レビンスキー監督の「Moskau Einfach!外部リンク(仮訳:とにかく、モスクワ!)」を選んだ。冷戦末期に暴露された悪名高い「フィシュ・スキャンダル」を下敷きにして脚色したコメディーだ。スイスが長年にわたり、明確な法的根拠なく90万人の政治信条について個人ファイルを作成していたことが明るみに出たこのスキャンダルは、スイス現代史で最も国民の怒りを買った出来事の1つだ。
このようなデリケートな主題をユーモラスに扱うのは簡単なことではない。しかし、ひとたび成功すれば、その映画はより多くの観客を獲得し、映画としての質を超える重要性を得ることができる。「とにかく、モスクワ!」は、ロルフ・リシー監督の「ザ・スイスメーカーズ」を思い起こさせる。「ザ・スイスメーカーズ」は、(スイス国籍の取得を申請する)イタリアと東欧からの移民を尾行調査する移民局の職員を扱ったコメディー映画だ。同映画の封切は1978年。当時の移民に関する権力層の演説は差別主義と不寛容に満ちていた。右翼の政治家ジェームズ・シュバルツェンバッハ氏が提起した外国人労働者の数を制限するイニシアチブも一役買った。「ザ・スイスメーカーズ」は世代を超えて鑑賞され、今日でも引き合いに出される。
もしスイス人にコメディーが作れるなら、お決まりの真面目な役も演じることができる。ウギさんが好んで強調するように、映画制作者のテーマの扱い方にスイス映画の特質がある。日常生活の社会的道徳観念に反して、不謹慎なあるいは不都合な問題を恐れず扱うというある種の努力があるのだ。
自由、博愛と平等
ウギさんは、今回の映画祭に応募のあった600本以上の作品を鑑賞し、178本の作品(特別上映作品除く)を最終リストに残した。その中には、(ハイジ・スペコーニャ監督の)回顧作品や、スイス映画界の女性パイオニア-パトリシア・モラ、クリスティーヌ・パスカル、ポール・ミュレ-へのオマージュもある。ところで、ソロトゥルン映画祭は、男性と女性の監督作品がほぼ半々の男女平等なラインナップが自慢だ。
それは、ウギさんが在職期間中に自分の足跡を残す様々な活動の1つでしかないのかもしれない。しかし、どのように自身の方針を特徴づけるつもりかという質問に対し、ウギさんとても謙虚に答えた。「まず、私にはソロトゥルン映画祭の歴史をとても深く知る必要があります。伝統を重んじる路線です。ソロトゥルン映画祭の最も重要な役割は出会い。来場者と映画関係者との橋渡しをし、知り合う機会を提供することです」
ウギさんは「レシュティの溝(レシュティはスイスドイツ語圏のジャガイモ料理)」をも越えようとしている。レシュティの溝とは、スイスのフランス語圏とドイツ語圏とを隔てる、ベルリンの壁のように高く、越えることのできない仮想境界線のことだ。ウギさんは、スイスの3つの言語圏-フランス語、ドイツ語、イタリア語-から映画を学ぶ学生を集め、イベントを開催する。イベントでは、映画監督の報酬や映画産業の労働環境について議論が交わされる。「これこそがソロトゥルン映画祭の神髄です!」
(英語からの翻訳・江藤真理)
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