ウクライナ・マリウポリ郊外のスタリ・クリム村の墓地
Keystone / Alessandro Guerra
スイス・ジュネーブの国連代表部に配属されていたロシア人外交官が、自国のウクライナ侵攻に抗議して辞職した。自国への帰還は望まず、スイス連邦政府の支援を求めている。
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23日に辞職した外交官はボリス・ボンダレフ氏(41)。同氏はロイター通信に対し、「いつもの月曜日の朝のように公館に行き、辞表を提出して、外に出た」と語った。ビジネス向け交流サイト「リンクトイン」のプロフィール欄によると、ロシア国連代表部の参事官として軍備管理を担当していた。
辞職については「数年前から(辞職を)考えてはいたが、この惨事のスケールの大きさが私を追い込んだ」と、2月24日に始まったロシアのウクライナ侵攻が決定打になったと説明した。
ボリス・ボンダレフ氏
Keystone
同氏は複数回にわたり、大使館の上級職員に侵攻に対する懸念を訴えたが「波風を立てないよう、口をつぐむよう言われた」という。
ロシア国連代表部からはただちにコメントを得られなかった。
ボンダレフ氏は辞職に先立ち、リンクトインへの投稿で「外交官になるために勉学に励み、20年間外交官として勤めてきた。ロシア外務省は私のホームであり、家族だった。だが、私はもうこの血なまぐさい、配慮に欠けた、まったく無用な不名誉をこれ以上共有することはできない」と告白していた。
ウクライナは3月の国連人権理事会で、ロシアの複数の外交官に対し辞任を促した。しかしボンダレフ氏は、誰かが自身にならい辞職をするとは思っていないと話す。「残念ながら、私ひとりだけだ」
政治亡命か?
ボンダレフ氏は23日、スイス・ドイツ語圏日刊紙ターゲスアンツァイガーの取材外部リンクに応じ、「ロシア政府は既に昨年から、より攻撃的な立場を取るよう外交官に命じてきた」が、それがますます大きな問題として立ちはだかるようになったと語った。
「私はジュネーブで自国を代表しているが、同時に外交官として、現場の組織と共通の解決策を見出すよう努めなければならない。そのため内部で対案を出したが、すべて一蹴、無視された。12月には我慢ができなくなり、内部にこう疑問を投げかけた。戦争をしたいのか、と」
自身の人生はこの先どうなるか分からないと不安をのぞかせる。現在は他国の外交官仲間からの協力を得ており、「ロシアに行くことは絶対にない」が、「しばらくはどこかに滞在しなければならない」と述べた。スイス政府の支援を望んでいるとも話した。
スイスのイグナツィオ・カシス外相は23日午後、ボンダレフ氏の辞任について情報を得ているとし、ボンダレフ氏が亡命する可能性については「すべての人が亡命を申請する権利を持っている。申請は個別に審査される」と答えた。
(英語からの翻訳・大野瑠衣子)
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