スイスの税優遇措置、EUと対話に
10月5日、ハンス・ルドルフ・メルツ財務相はジュネーブでの記者会見で、財務相としての4年間の任期中、国家財政の立て直しに努力したと語った。
またスイス経済が健全であるためにも、欧州連合 ( EU ) 側からのスイスに対する企業の税優遇措置への非難は認めがたいとの姿勢を示した。
メルツ財務相は、過去15年間に累積した財政赤字1300億フラン( 約13兆円 ) のうち昨年60億フラン( 約6000億円 ) 、今年30億フラン ( 約3000億円 ) と各々の削減を実現し、スイス財政の立て直しをアピールした。同時に健全な経済、競争力がある金融事業と税制こそがスイスが世界経済で生き残っていく道だと語った。
スイスの税優遇措置
メルツ財務相は、問題となっているスイス側の企業への税優遇措置に対する、EU側からの非難に言及し「 EU は我が国の税制に対し、我々とは違う論理を押し付けようとしているようだ」と語った。
EU は様々な形で企業に補助金を与え、その代償に高い税率を押し付けているが、スイスはまったく反対の立場をとる。国際市場での競争に打ち勝つためにも企業に補助金を与えず、税優遇措置をとっているのだという。
スイスはEU に対話を求め、「我々の税制が自由競争に反するというなら、EUの補助金はそうではないのか」といった質問を投げかけているが答えはまだ返ってこないという。「要するに、EU側のメンバー国による直接の企業補助とスイス側の企業への合法的な税優遇措置という、2つの対立する哲学の違いだ」とメルツ財務相は言う。
しかし、EUはこの税制問題を除けば、スイスにとっては大切なパートナーで今後も交渉を続けて行くとメルツ財務相は結んだ。
UBSの損失
一方メルツ財務相は、スイスの大手金融UBS の投資銀行部門が第3四半期の決算で、アメリカの低所得者向け ( サブプライム ) 住宅ローンによって引き起こされた損失にもふれ、「7月以前の好成績のお陰で、損失の被害をカバーできる」と説明した。
「今回の損失を危機的なものとみなす必要はまったくない。スイス金融界はこれに耐えられる十分な力を持っている」と続けながらも、税収入の面では損失の影響を受けるだろうと結論した。
swissinfo、里信邦子 ( さとのぶ くにこ )
今年初め、欧州連合 ( EU ) は、スイスの一部の州で行われている企業に対する税優遇措置は、1972年に締結した当時の欧州共同体 ( EC ) との自由貿易協定に違反するとして、スイスを非難した。特に幾つかの州によるホールディング会社などへの優遇措置が非難の的になっている。
メルツ財務相は、EUとの対話を進めると同時にスイス各州との調整も行っているという。
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