スイス連邦政府は16日、ワクチン接種などを示す「COVID証明書」の提示義務やマスク着用義務など、新型コロナウイルス感染対策の大半を翌日から解除すると発表した。オミクロン株の流行で感染者数はなお高水準にあるが、医療がひっ迫していないためだ。
このコンテンツが公開されたのは、
「スイスは正常化に向け、決定的で重要な一歩を踏み出している」。同日ベルンで開かれた記者会見で、イグナツィオ・カシス大統領はこう強調した。
連邦政府の発表外部リンクによると、17日からレストランやバー、スポーツ施設、劇場、コンサートホールなど屋内施設に入るために「COVID証明書」を示す必要がなくなる。同証明書は▽ワクチン接種済み▽感染・回復済み▽検査で陰性だった人に発行されてきた。
国外に旅行するスイス居住者向けに、欧州連合(EU)で通用するCOVID証明書を引き続き発行する。
私的な集まりの人数制限や、大規模イベントの許可制も撤廃される。
マスク着用は学校や小売店、コンサートホール、職場で義務でなくなる。ただし公共交通機関と医療機関では3月末まで義務づけられる。また検査で陽性判定を受けた人に課せられる5日間の隔離義務も3月末まで残る。
連邦政府はこれら2つの義務を維持する理由について、高齢者など重症化しやすい人々を守ることが狙いだと説明した。ただし感染状況がさらに改善すれば、3月末よりも早く解除される可能性がある。
スイス入国者に対する一連の感染対策もなくなる。ワクチン接種や感染、陰性の証明や、入国フォームは不要になる。
即時解除に広範な支持
感染対策の即時解除は、議会や各州政府、関連団体との協議で全ての意見が賛成だったことを踏まえて決めた。各州は必要に応じて国より厳しい措置を維持・導入することができる。
政府は21年10月以降、感染者の急増を受けて感染対策を強化してきたが、オミクロン株の脅威が一服すると段階的に緩和を進めてきた。濃厚接触者の隔離義務や自宅勤務義務は2月3日に解除された。スイス入国者に対する検査や隔離義務も1月下旬に撤廃済みだった。
欧州ではデンマークや英国、フランス、オランダなどがこの数週間で相次ぎコロナ対策を緩和している。スイスもこれに続いた格好だ。
感染者数はピークアウト
スイスでは21年10月中旬から気温の低下に伴い感染者が急増し、同12月以降はオミクロン株の上陸で爆発的に増えた。一時期は1日4万人前後の感染者が出たが次第に落ち着き、2月8日に政府の科学タスクフォースが流行はピークアウトしたとの認識を示した。
15日に発表された新規感染者数は2万1032人。7日間平均でみると前週から25%減少した。
政府は声明で「疫学的状況は引き続き改善している。国民の免疫が高水準に達したおかげで、ウイルスが流行していても医療機関に過大な負荷がかかる可能性は低い」と説明した。「これは社会的・経済的生活をすぐに正常化する条件が整っていることを意味する」と明言した。
保健当局によると、スイスの人口860万人の9割以上がワクチン接種かり患したことで免疫を獲得した。
スイスの新型コロナによる累計死者は1万2200人を超える。ワクチンを2回接種したのは人口の約68%、3回接種は41%だ。
一方、世界保健機関(WHO)は、多くの国でオミクロン株の流行がピークを迎えていないことを踏まえ、制限の解除には慎重を期するよう勧告している。
WHOは15日、東欧の感染者数の急増を注視していると述べた。ロシアやウクライナなど6カ国で感染者数が2週間で倍増している。
(英語からの翻訳・ムートゥ朋子)
おすすめの記事
スイスの核廃棄物処分場計画、反対派が国民投票計画
このコンテンツが公開されたのは、
チューリヒ州の放射性廃棄物処分場建設計画が、正式な認可が下りる前から反対運動に直面している。
もっと読む スイスの核廃棄物処分場計画、反対派が国民投票計画
おすすめの記事
ジョン・レノンの盗まれた腕時計、所有権はオノさん スイス最高裁が認定
このコンテンツが公開されたのは、
ビートルズのジョン・レノンさんが殺害される2カ月前にオノ・ヨーコさんから贈られ、その後盗まれた腕時計について、スイスの連邦最高裁判所はオノさんに時計の完全な所有権があるとの判決を出した。
もっと読む ジョン・レノンの盗まれた腕時計、所有権はオノさん スイス最高裁が認定
おすすめの記事
スイス証取、英プロバイダーを買収 MTF参入へ
このコンテンツが公開されたのは、
スイス証券取引所を運営するSIXグループは11日、英国の証券取引サービスプロバイダー、アクイス・エクスチェンジを買収すると発表した。今後、多角的取引システム(MTF)に参入する方針だ。
もっと読む スイス証取、英プロバイダーを買収 MTF参入へ
おすすめの記事
2022年の可処分所得は約95万円 スイス統計局
このコンテンツが公開されたのは、
スイス連邦統計局は12日、2022年の1世帯平均の可処分所得はひと月6902フラン(当時レートで約95万円)だったと発表した。前年からほぼ横ばいだった。
もっと読む 2022年の可処分所得は約95万円 スイス統計局
おすすめの記事
CERNとロシアの研究協力協定、11月末に期限迎える
このコンテンツが公開されたのは、
今月30日、ロシアの研究機関とジュネーブに拠点を置く欧州原子核研究機構(CERN)との協力協定が終了する。研究者はCERNのプロジェクトに影響を及ぼすと警告している。
もっと読む CERNとロシアの研究協力協定、11月末に期限迎える
おすすめの記事
女子優位のクラスを出た女性は高収入の傾向 スイス調査
このコンテンツが公開されたのは、
スイス・バーゼル大と英ダラム大が1989年から2002年の間にスウェーデンで初等教育を修了した75万人以上の生徒のデータを用いて行った調査で、女子生徒の方が多いクラスを出た女性はより多くの収入を得る傾向があることが分かった。
もっと読む 女子優位のクラスを出た女性は高収入の傾向 スイス調査
おすすめの記事
11月のスイスアルプス、季節外れの暖かさ
このコンテンツが公開されたのは、
スイスアルプスで、季節外れの暖かさが続いている。スイスで最も標高の高い地点にあるユングフラウヨッホでは観測史上最高を記録した。
もっと読む 11月のスイスアルプス、季節外れの暖かさ
おすすめの記事
スイスでベジタリアン・ビーガン増加 若者・高学歴に多く
このコンテンツが公開されたのは、
スイスで肉食をやめる人が増えている。植物性食品を推進するスイスベジ協会(Swissveg)は30日、スイスのベジタリアンやビーガンの数は過去5年間で約40%増加したと発表した。
もっと読む スイスでベジタリアン・ビーガン増加 若者・高学歴に多く
おすすめの記事
スイスを縦断するツルが過去最多
このコンテンツが公開されたのは、
スイス鳥類研究所によると、スイスでは今季、はやくも過去最多のツルが観察されている。なかには約800羽の大規模な群れもみられた。
もっと読む スイスを縦断するツルが過去最多
おすすめの記事
「金銭目的」で自殺ほう助 スイスの裁判所が元看護師に有罪判決
このコンテンツが公開されたのは、
スイス南部ティチーノ州ルガーノの州刑事裁判所は23日、利己的な動機で他人の自殺を手助けしたとして、自殺教唆・ほう助の罪に問われた同州の元看護師の女(67)に条件付き罰金刑を言い渡した。
もっと読む 「金銭目的」で自殺ほう助 スイスの裁判所が元看護師に有罪判決
続きを読む
おすすめの記事
スイスのコロナ情報 マスク義務再開はなし
このコンテンツが公開されたのは、
スイスは4月1日、新型コロナウイルス感染症に対する全国的な感染対策を全て撤廃した。秋冬の感染再拡大が懸念される中、スイス公衆衛生当局はマスク義務の再開は必要ないとしている。
もっと読む スイスのコロナ情報 マスク義務再開はなし
おすすめの記事
データとグラフで見るスイスの新型コロナウイルス
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの新型コロナウイルスの感染状況と推移を示す最も重要な数値を、グラフィックで紹介する。グラフィックは最新データを基に自動的に更新される。
もっと読む データとグラフで見るスイスの新型コロナウイルス
おすすめの記事
スイスの「緊急事態」法制
このコンテンツが公開されたのは、
新型コロナウイルスの拡大防止策として、スイス連邦政府は13日、全国の小中学校を休校にし、100人以上が集まるイベントや施設の営業を禁止した。こうした措置は国民生活に多大な影響を与え、経済損失も免れられない。感染症の拡大を防ぐために、スイス当局はどこまで強権を発動できるのか。
もっと読む スイスの「緊急事態」法制
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。