スイス全州議会(上院)は2日、軍事費を現在の56億フランから2030年までに70億フラン(約9500億円)に引き上げる予算案を可決した。
このコンテンツが公開されたのは、
国民議会(下院)は先月可決済み。2030年までに少なくとも国内総生産(GDP)の1%に達する見込み。
今回の引き上げは、冷戦終結後の軍縮の流れに逆行している。軍事費は1990年から2019年の30年間で、GDP比1.34%から0.67%に減った。
しかし、ロシアによるウクライナ侵攻で、スイス国内でも国防に関する議論が高まりを見せたことが政治潮流の転換点となった。ヴィオラ・アムヘルト国防相は2日の審議で、軍事費増額により「以前予見されたよりも早い段階で、防衛組織の能力のギャップを埋めることができる」と述べた。
増額分は軍の予算と概括され、毎年国会の承認が必要になるが、現時点では具体的な使途は明かされていない。しかし、アルムヘルト氏は、陸軍の老朽化した装備の交換や、新しいサイバー防衛メカニズムへの投資が必要だと主張している。
左派の反対
左派政党の議員は、予算増額が医療や社会サービスなど他の分野の支出不足につながることを懸念し、反対票を投じた。また、予算の使い道が明確でないことを指摘する声も挙がった。
それに対し賛成派は、軍への投資は国防に不可欠であり、無条件に軍にお金を与えるものではないと答えた。急進民主党(FDP/PLR)のティエリー・ブルカート党首は、むしろ軍に「計画通り進めるための安全保障」を今後数年にわたり与えるものだと述べた。
スイスでは、米ロッキード・マーティンのF-35A戦闘機購入が依然として論争の的になっている。スイスの有権者は20年9月の国民投票で、計60億フランの戦闘機購入計画を超僅差で可決した。連邦政府は戦闘機の調達計画を迅速に進めたい考えだが、左派を中心とした反対派はF-35Aをスイスのニーズに合わない不要な攻撃機と考え、国民投票の再実施に向けて署名活動を行っている。
(英語からの翻訳・大野瑠衣子)
おすすめの記事
11月のスイスアルプス、季節外れの暖かさ
このコンテンツが公開されたのは、
スイスアルプスで、季節外れの暖かさが続いている。スイスで最も標高の高い地点にあるユングフラウヨッホでは観測史上最高を記録した。
もっと読む 11月のスイスアルプス、季節外れの暖かさ
おすすめの記事
スイスでベジタリアン・ビーガン増加 若者・高学歴に多く
このコンテンツが公開されたのは、
スイスで肉食をやめる人が増えている。植物性食品を推進するスイスベジ協会(Swissveg)は30日、スイスのベジタリアンやビーガンの数は過去5年間で約40%増加したと発表した。
もっと読む スイスでベジタリアン・ビーガン増加 若者・高学歴に多く
おすすめの記事
スイスを縦断するツルが過去最多
このコンテンツが公開されたのは、
スイス鳥類研究所によると、スイスでは今季、はやくも過去最多のツルが観察されている。なかには約800羽の大規模な群れもみられた。
もっと読む スイスを縦断するツルが過去最多
おすすめの記事
「金銭目的」で自殺ほう助 スイスの裁判所が元看護師に有罪判決
このコンテンツが公開されたのは、
スイス南部ティチーノ州ルガーノの州刑事裁判所は23日、利己的な動機で他人の自殺を手助けしたとして、自殺教唆・ほう助の罪に問われた同州の元看護師の女(67)に条件付き罰金刑を言い渡した。
もっと読む 「金銭目的」で自殺ほう助 スイスの裁判所が元看護師に有罪判決
おすすめの記事
スイス、外来診療の新料金体系で合意 定額制を一部導入
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの医療機関団体は22日、外来患者向けの新料金体系を承認したと発表した。エリザベット・ボーム・シュナイダー内務相は積年の議論に決着がついたことを歓迎した。
もっと読む スイス、外来診療の新料金体系で合意 定額制を一部導入
おすすめの記事
スイス製武器の再輸出解禁案まとまる 主要政党の賛否まとまらず
このコンテンツが公開されたのは、
スイス国民議会(下院)安全保障委員会は、スイス製武器の再輸出の解禁案をまとめた。武器の輸出から5年経過を条件に、ウクライナなど紛争中の第三国への再輸出を認める内容だ。ただ主要政党の間では賛否が割れている。
もっと読む スイス製武器の再輸出解禁案まとまる 主要政党の賛否まとまらず
おすすめの記事
スイスで「ニュース離れ」さらに深刻に メディア品質年鑑
このコンテンツが公開されたのは、
チューリヒ大学公共・社会研究センターが毎年まとめる「スイスメディア品質年鑑」2024年度版で、スイスでニュースを平均以下の量しか消費しない人の割合は46%と、過去最高を更新したことがわかった。スイスメディア全体の質は引き続き「良好」と評価された。
もっと読む スイスで「ニュース離れ」さらに深刻に メディア品質年鑑
おすすめの記事
アイスホッケーのスイス代表、国旗の白十字使用認められず
このコンテンツが公開されたのは、
アイスホッケーのスイス代表チームは、ユニフォームにスイスの国旗である白十字の紋章を付けることができなくなった。スイスアイスホッケー連盟(SIHF)が連邦行政裁判所に提出した申請が遅すぎたのが原因だ。
もっと読む アイスホッケーのスイス代表、国旗の白十字使用認められず
おすすめの記事
スイス、ロシアに追加制裁 輸出規制を強化
このコンテンツが公開されたのは、
スイス連邦政府は16日、ウクライナに侵攻するロシアへの追加制裁を発表した。ロシアの産業・軍事・技術に必要な製品の輸出規制が強化されるほか、政党、NGO団体、報道機関がロシア政府からの寄付を受け取ることが禁止される。
もっと読む スイス、ロシアに追加制裁 輸出規制を強化
おすすめの記事
チューリヒの一等地にパン屋開業 高級街に転機か
このコンテンツが公開されたのは、
高級ブランドが立ち並ぶチューリヒのバーンホフ通りにパン屋が開業し、大きな話題を呼んでいる。通りを象徴する百貨店の撤退や再開と合わせ、街の大きな転機になるとの指摘もある。
もっと読む チューリヒの一等地にパン屋開業 高級街に転機か
続きを読む
おすすめの記事
中立国スイスは欧州の集団防衛に加わるのか?
このコンテンツが公開されたのは、
ウクライナ戦争を背景に、スイスでは軍事協力体制の強化を求める声が強まっている。世界に知られる中立姿勢をどこまで曲げるべきか、国民の間で議論が湧く。
もっと読む 中立国スイスは欧州の集団防衛に加わるのか?
おすすめの記事
スイス、F-35A戦闘機購入へ
このコンテンツが公開されたのは、
戦闘機の調達計画を進めていたスイス連邦内閣は30日、米ロッキード・マーティンのF-35A戦闘機36機、米レイセオンの地対空ミサイル・パトリオット5基を購入すると発表した。
もっと読む スイス、F-35A戦闘機購入へ
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。