スイスは、2020年までの温室効果ガスの排出量削減目標をわずかに達成できなかった。新型コロナウイルスに伴う都市封鎖や暖冬といった追い風も吹いたが、運輸部門の排出量を減らせなかった。
このコンテンツが公開されたのは、
スイスは排出量を1990年比で20%削減する目標を掲げていた。連邦環境省は12日、実際の削減量は19%だったと発表外部リンクした。
環境省は比較的暖かい冬の間は暖房の使用量が少なく、パンデミック(感染症の世界的流行)で人の移動も急減したと指摘。しかしパンデミックの制限が解除されたことで排出量は再び急増しており、削減に向け「行動しなければならないという圧力は依然として高い」と述べた。
13~20年に目標を達成したのは産業部門のみで、二酸化炭素(CO₂)換算で排出量を17%削減した。
政府は、運輸部門が10%の削減目標を達成できなかったことに特に失望を見せた。電気やバイオガスなど代替燃料車が増え、パンデミック中に交通量が大幅に減ったが、車両の排出量は8%しか減らなかった。
建設部門の排出量は39%減少した。暖冬により家庭に使用される石油・ガスは減ったが、40%の目標をわずかに下回った。環境省は「建物部門はかなり多くの暖房が化石燃料を使っている」と指摘した。
農業と「その他」部門セクターも目標を下回った。
スイスの目標は、京都議定書の掲げた13~20年の削減目標の15.8%よりも野心的だった。この間、国内の削減は11%にとどまり、主に国外の持続可能な気候プロジェクトに拠出することで排出量を相殺し、19%まで伸ばした。
パリ協定の下では、スイスは30年までに排出量を半減し、50年までに実質ゼロを達成する目標を掲げている。だが昨年の国民投票で削減計画を盛り込んだ改正CO₂法が否決され、政府は計画の見直しを余儀なくされている。
非政府組織(NGO)のスイス気候ストライキは、スイスのCO₂削減努力は「笑える」レベルだとこき下ろした。世界自然保護基金(WWF)は、スイスが特に航空業界での対策を強化する必要があると指摘した。
(英語からの翻訳・ムートゥ朋子)
おすすめの記事
スイスの核廃棄物処分場計画、反対派が国民投票計画
このコンテンツが公開されたのは、
チューリヒ州の放射性廃棄物処分場建設計画が、正式な認可が下りる前から反対運動に直面している。
もっと読む スイスの核廃棄物処分場計画、反対派が国民投票計画
おすすめの記事
ジョン・レノンの盗まれた腕時計、所有権はオノさん スイス最高裁が認定
このコンテンツが公開されたのは、
ビートルズのジョン・レノンさんが殺害される2カ月前にオノ・ヨーコさんから贈られ、その後盗まれた腕時計について、スイスの連邦最高裁判所はオノさんに時計の完全な所有権があるとの判決を出した。
もっと読む ジョン・レノンの盗まれた腕時計、所有権はオノさん スイス最高裁が認定
おすすめの記事
スイス証取、英プロバイダーを買収 MTF参入へ
このコンテンツが公開されたのは、
スイス証券取引所を運営するSIXグループは11日、英国の証券取引サービスプロバイダー、アクイス・エクスチェンジを買収すると発表した。今後、多角的取引システム(MTF)に参入する方針だ。
もっと読む スイス証取、英プロバイダーを買収 MTF参入へ
おすすめの記事
2022年の可処分所得は約95万円 スイス統計局
このコンテンツが公開されたのは、
スイス連邦統計局は12日、2022年の1世帯平均の可処分所得はひと月6902フラン(当時レートで約95万円)だったと発表した。前年からほぼ横ばいだった。
もっと読む 2022年の可処分所得は約95万円 スイス統計局
おすすめの記事
CERNとロシアの研究協力協定、11月末に期限迎える
このコンテンツが公開されたのは、
今月30日、ロシアの研究機関とジュネーブに拠点を置く欧州原子核研究機構(CERN)との協力協定が終了する。研究者はCERNのプロジェクトに影響を及ぼすと警告している。
もっと読む CERNとロシアの研究協力協定、11月末に期限迎える
おすすめの記事
女子優位のクラスを出た女性は高収入の傾向 スイス調査
このコンテンツが公開されたのは、
スイス・バーゼル大と英ダラム大が1989年から2002年の間にスウェーデンで初等教育を修了した75万人以上の生徒のデータを用いて行った調査で、女子生徒の方が多いクラスを出た女性はより多くの収入を得る傾向があることが分かった。
もっと読む 女子優位のクラスを出た女性は高収入の傾向 スイス調査
おすすめの記事
11月のスイスアルプス、季節外れの暖かさ
このコンテンツが公開されたのは、
スイスアルプスで、季節外れの暖かさが続いている。スイスで最も標高の高い地点にあるユングフラウヨッホでは観測史上最高を記録した。
もっと読む 11月のスイスアルプス、季節外れの暖かさ
おすすめの記事
スイスでベジタリアン・ビーガン増加 若者・高学歴に多く
このコンテンツが公開されたのは、
スイスで肉食をやめる人が増えている。植物性食品を推進するスイスベジ協会(Swissveg)は30日、スイスのベジタリアンやビーガンの数は過去5年間で約40%増加したと発表した。
もっと読む スイスでベジタリアン・ビーガン増加 若者・高学歴に多く
おすすめの記事
スイスを縦断するツルが過去最多
このコンテンツが公開されたのは、
スイス鳥類研究所によると、スイスでは今季、はやくも過去最多のツルが観察されている。なかには約800羽の大規模な群れもみられた。
もっと読む スイスを縦断するツルが過去最多
おすすめの記事
「金銭目的」で自殺ほう助 スイスの裁判所が元看護師に有罪判決
このコンテンツが公開されたのは、
スイス南部ティチーノ州ルガーノの州刑事裁判所は23日、利己的な動機で他人の自殺を手助けしたとして、自殺教唆・ほう助の罪に問われた同州の元看護師の女(67)に条件付き罰金刑を言い渡した。
もっと読む 「金銭目的」で自殺ほう助 スイスの裁判所が元看護師に有罪判決
続きを読む
おすすめの記事
音が知らせるアルプスの今
このコンテンツが公開されたのは、
雄大な山々が連なるアルプスの名峰、ユングフラウヨッホ。その山頂付近に位置する研究ステーションでは、冷たい風と暖かい風が衝突する現象が観測される。ある研究者は、それを「奇妙なダンス」と呼ぶ。よく注意して耳を傾けると、その踊りは独自の音楽を奏でていることに気づく。唸るような風の音、山から崩れ落ちる岩の音、そして氷河の上を滑っていく氷の音や建物にぶつかる音――。
もっと読む 音が知らせるアルプスの今
おすすめの記事
スイスで進まぬ住宅・建築物の省エネ化 完了は1世紀後か
このコンテンツが公開されたのは、
スイスでは温室効果ガス排出量の4分の1以上は住宅・建築物に係っている。国からの補助金制度や、気候への悪影響を早急に軽減する必要性があるにもかかわらず、建物の省エネ化は遅々として進まない。なぜか。
もっと読む スイスで進まぬ住宅・建築物の省エネ化 完了は1世紀後か
おすすめの記事
COP26で「野心的な戦略」求めるスイス、その説得力やいかに?
このコンテンツが公開されたのは、
COP26で、スイスは地球温暖化を1.5度までに抑えるよう全参加国に働きかける方針だ。だが自国の改正CO₂法が国民投票で否決されたスイスは、他国に今以上の努力を求められる立場にあるのだろうか?
もっと読む COP26で「野心的な戦略」求めるスイス、その説得力やいかに?
おすすめの記事
パリ協定を脅かす「忘れられた」温室効果ガス
このコンテンツが公開されたのは、
5年前に締結された歴史的なパリ協定の下、スイスを含む世界各国は温室効果ガスを減らす努力をしてきた。だが大気中に蓄積され続ける二酸化炭素(CO2)以外の「忘れられた」ガスが、同協定の目標達成の足かせになる恐れがある。
もっと読む パリ協定を脅かす「忘れられた」温室効果ガス
おすすめの記事
スイスの気候政策、有権者は方向転換を選ぶか
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの6月13日の国民投票では、改正二酸化炭素(CO2)法の是非が問われる。温室効果ガスの排出削減を巡っては、経済界でも環境保護派の間でも意見が分かれる。
もっと読む スイスの気候政策、有権者は方向転換を選ぶか
おすすめの記事
コロナで大気汚染改善?
このコンテンツが公開されたのは、
世界で起こる環境の変化に、新型コロナウイルス対策がどれだけ関係しているのだろう。長期的に見て気候へのメリットはあるのか。
もっと読む コロナで大気汚染改善?
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。