世界中の直接民主制の専門家が集まり、市民参加型の民主主義について議論する「現代直接民主制のグローバルフォーラム」が来年、スイスのベルンで開かれることになった。
このコンテンツが公開されたのは、
ベルン市政府が22日、承認した。フォーラムは今年で9回目。来年9月23日~26日の3日間で、約50カ国から約500人が参加する見込み。
ベルン市のアレック・フォン・グラフェンリード市長は、ソウルやサンフランシスコ、ローマなど過去の開催都市に比べると規模は小さいが、スイスの直接民主制の中心を担ってきたベルン市は開催地にぴったりだと語った。
市長は「このフォーラムと、フォーラムが目指すゴールは、直接民主制の伝統が息づき市民の政治参加に力を入れるベルンにぴったりマッチする」とコメント。「ベルンにとって、直接民主制推進における国際的な取り組みの最前線に立つ、またとない機会だ」と語った。
ただフォン・グラフェンリード市長は、直接民主制が成功した政治モデルである一方、英国のEU離脱(ブレグジット)が問われた2016年の国民投票のように、混乱と不確実性を生み出すリスクもあると話す。
一周
フォーラムでは、スイスの直接民主制が国・地域レベルでどう機能しているか話し合うほか、連邦主義、直接民主制のツール、市民参加についても目を向ける。
フォーラムの共同議長・共同創設者のブルーノ・カウフマン氏によると、第1回のフォーラムは2008年にスイス・アーラウで開催された。その後アジア、南北アメリカ、アフリカを経て、再びスイスに戻ってくる。
カウフマン氏は「この12年間で世界は大きく変わった。スイスの直接民主制はかつて興味の対象に過ぎなかったが、今では他国が参考にしている」と話す。
民主主義はスイス以外の国々でも前進したという。カウフマン氏によれば、過去10年の間に他国で革新的なアイデアが生まれ、スイスもその恩恵を受けている。そのほか透明性も向上し、外国人の政治参加、投票の電子化も進んだという。
フォーラムは、スイス・デモクラシー財団外部リンクとデモクラシー・インターナショナル外部リンクなどの団体が支援している。
昨年ローマで開かれた同フォーラムでは、民主主義都市のためのマグナカルタ(大憲章)が起草された。草案は今年10月2~5日、台湾で開かれるフォーラムで可決される予定。
おすすめの記事
おすすめの記事
民主主義都市のマグナカルタ策定へ ローマで直接民主制フォーラム
このコンテンツが公開されたのは、
イタリアのローマで9月、第7回現代直接民主制グローバルフォーラムが開かれ、100カ国から約800人が参加した。このフォーラムで、民主主義都市のためのマグナカルタ(大憲章)が起草された。
もっと読む 民主主義都市のマグナカルタ策定へ ローマで直接民主制フォーラム
おすすめの記事
ETHチューリヒ、気候に優しい除湿機を開発
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの連邦工科大学チューリヒ校(ETHZ)は10日、電気を使わない除湿器を開発したと発表した。壁や天井の建築材として、空気中の湿気を吸収し一時的に蓄えることができる。
もっと読む ETHチューリヒ、気候に優しい除湿機を開発
おすすめの記事
スイスでX離れ進む
このコンテンツが公開されたのは、
スイスで「X」から撤退を表明する企業や著名人が相次いでいる。
もっと読む スイスでX離れ進む
おすすめの記事
スイスの研究者、キノコで発電する電池を開発
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの研究者たちが、キノコで発電する電池を開発した。農業や環境研究に使われるセンサーに電力を供給できるという。
もっと読む スイスの研究者、キノコで発電する電池を開発
おすすめの記事
ジョンソン・エンド・ジョンソン、スイスでの人員削減を計画
このコンテンツが公開されたのは、
米ヘルスケア大手ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)は、スイスでの人員削減を計画している。
もっと読む ジョンソン・エンド・ジョンソン、スイスでの人員削減を計画
おすすめの記事
「スイス銀行のナチス関連口座は再調査を」 歴史家ら提唱
このコンテンツが公開されたのは、
スイス最大手のUBS銀行の資料室には、第二次世界大戦中の行動に関する秘密がまだ残されている可能性がある――。過去にスイスの銀行と独ナチス政権とのつながりを調査した歴史家、マルク・ペレノード氏は、再調査の必要性を強調する。
もっと読む 「スイス銀行のナチス関連口座は再調査を」 歴史家ら提唱
おすすめの記事
スイス航空の緊急着陸 客室乗務員の死因は酸欠
このコンテンツが公開されたのは、
スイスインターナショナルエアラインズ(SWISS)のブカレスト発チューリヒ便が先月オーストリアのグラーツで緊急着陸した後、客室乗務員(23)が死亡した事件で、死因は酸欠だったことが分かった。複数のスイスメディアが報じた。
もっと読む スイス航空の緊急着陸 客室乗務員の死因は酸欠
おすすめの記事
ユングフラウヨッホ、2024年の来場者が100万人を突破
このコンテンツが公開されたのは、
ユングフラウ鉄道グループは、ユングフラウヨッホの2024年の来場者が105万8600人となり、2015年以来6度目の100万人の大台を超えたと発表した。
もっと読む ユングフラウヨッホ、2024年の来場者が100万人を突破
おすすめの記事
2024年のスイスの企業倒産件数、過去最高に
このコンテンツが公開されたのは、
スイスは2024年の企業倒産件数が過去最高を記録した。
もっと読む 2024年のスイスの企業倒産件数、過去最高に
おすすめの記事
国民投票に向けた署名がまたも偽造
このコンテンツが公開されたのは、
医療品の安定供給を求める国民投票に向けて集められた署名のうち、3600筆以上が無効な署名だったことが明らかになった。
もっと読む 国民投票に向けた署名がまたも偽造
おすすめの記事
スイスの柔道家エリック・ヘンニ、86歳で死去 東京五輪柔道銀メダリスト
このコンテンツが公開されたのは、
1964年東京オリンピックで銀メダルを勝ち取ったスイス人柔道家のエリック・ヘンニ(Eric Hänni)さんが25日、86歳で死亡した。スイス柔道・柔術協会が発表した。
もっと読む スイスの柔道家エリック・ヘンニ、86歳で死去 東京五輪柔道銀メダリスト
続きを読む
おすすめの記事
放射性廃棄物処分 スイスで失敗した教訓を日本で生かそう
このコンテンツが公開されたのは、
「核のごみ」を安全で恒久的に処分することは、原子力生産国が何十年もの間直面してきた課題。今日で福島の原発事故から8年を迎える日本では、放射性廃棄物の地層処分場の候補地だったスイスのヴェレンベルクの実施計画で失敗した経験から得た知見が共有されている。日本における放射性廃棄物の処分場選びの第一歩として、放射性廃棄物処分に関する国民の理解を広めるのに役立っている。
もっと読む 放射性廃棄物処分 スイスで失敗した教訓を日本で生かそう
おすすめの記事
国民投票が後退させるスイスの民主主義
このコンテンツが公開されたのは、
世界各地で繰り広げられるデモ活動が、民主主義の後退に対する歯止め役を果たしている。だがスイスに関しては、投票率の低さが足かせとなる。
もっと読む 国民投票が後退させるスイスの民主主義
おすすめの記事
「未来の統治システム 模範はシンガポールとスイス」 パラグ・カンナ氏
このコンテンツが公開されたのは、
「『三つの帝国』の時代」や「『持続性』の地政学」などの著書で知られるインド出身の国際政治学者パラグ・カンナ氏。スイスとシンガポールはいずれも世界一「退屈な国」といい、だからこそ「統治システムの模範になる」と話す。
もっと読む 「未来の統治システム 模範はシンガポールとスイス」 パラグ・カンナ氏
おすすめの記事
インターネットがもたらす、市民の政治参加改革
このコンテンツが公開されたのは、
直接民主制はデジタル時代を迎えている。インターネット上での政治キャンペーンはますます拡大しており、スイスでは先ごろからウェブサイトwecollect.chを利用して、手軽にイニシアチブやレファレンダムの提起に賛同するための署名をできるようになった。これは政治活動に活気を与える進歩だが、一方で一貫性や信ぴょう性などの課題も抱えている。
もっと読む インターネットがもたらす、市民の政治参加改革
おすすめの記事
民主主義へ向かうチュニジア 熟年政治家が成功のカギ
このコンテンツが公開されたのは、
地方分権を導入して権力の分散を目指すチュニジア。14日から17日まで首都チュニスで「現代直接民主制グローバルフォーラム」が開催される。そこで開会講演を行う予定のスイス人政治学者アンドレアス・グロースさんは、チュニジアの地方分権化は「まだ形だけで中身が全く伴っていない」と指摘する。
もっと読む 民主主義へ向かうチュニジア 熟年政治家が成功のカギ
おすすめの記事
イタリアで世界初の直接民主制担当相が誕生
このコンテンツが公開されたのは、
イタリアのセルジオ・マッタレッラ大統領は18人の新内閣を構成するに当たり、第一党「五つ星運動」の幹部議員リカルド・フラカーロ氏(37)を初代の直接民主制担当相に任命した。
もっと読む イタリアで世界初の直接民主制担当相が誕生
おすすめの記事
移民数制限案可決で高まる雇用の不安
このコンテンツが公開されたのは、
スイスはEUとの間で、労働者の自由な移動を含む包括的な2者間協定(第1次2者間協定)を結んでいる。スイス政府は今回の投票結果を受け、労働者の自由な移動に関してEUと今後交渉することになる。だがEUは、労働者の自由な移動…
もっと読む 移民数制限案可決で高まる雇用の不安
おすすめの記事
政治討議の場が民主主義への鍵
このコンテンツが公開されたのは、
「外国人犯罪者の国外追放強化イニシアチブ」で多くの有権者を動員した投票が終わり、スイスでは今、ある問いかけが浮上している。投票キャンペーンが繰り広げられている時期以外にも、活発な民主主義に欠かせない公的議論を促進するにはどうすればよいのか。ブルーノ・カウフマン氏が見つけた答えは、首都ベルンの真ん中にある元刑務所の厚い壁の向こう側にあった。
もっと読む 政治討議の場が民主主義への鍵
おすすめの記事
日本の民主主義や憲法改正 どうすれば良い?スイスの直接民主制の専門家が語る
このコンテンツが公開されたのは、
直接民主制の専門家でジャーナリストのブルーノ・カウフマン氏が、日本のインターネットメディアのインタビューで、世界の民主主義の現状や日本の憲法改正を巡る展望について語った。インタビューは22日午後8時(日本時間)、ネット上で放送される。
もっと読む 日本の民主主義や憲法改正 どうすれば良い?スイスの直接民主制の専門家が語る
おすすめの記事
韓国の民主主義の交差点
このコンテンツが公開されたのは、
現代史に残る民主主義革命から1年。韓国は短い間に目覚しい発展を遂げた。しかし、今後数カ月の間に待ち受ける政治イベントを乗り越えるには、強いリーダーシップと市民の力が必要となる。
もっと読む 韓国の民主主義の交差点
おすすめの記事
日本がたどった民主主義の長い回り道 広島&福島で
このコンテンツが公開されたのは、
世界第3位の経済大国が今、試練を迎えている。歴史上最悪の二つの人災を経て、日本はいまだに政治エリートのコントロール下に置かれ、消極的な民主主義国家に甘んじている。
もっと読む 日本がたどった民主主義の長い回り道 広島&福島で
おすすめの記事
台湾はどうやって世界を代表する直接民主主義の法律を作り上げたか
このコンテンツが公開されたのは、
台湾島に始めて降り立ったポルトガル人の探検家たちは、山と森に覆われたこの島を「フォルモサ」(ポルトガル語:Ilha Formosa「美しい島」)と呼んだ。今日、台湾の人口は2300万人に上る。そしてわずか数年のうちに、世界でも有数の(直接)民主主義のモデル国家に成長した。
もっと読む 台湾はどうやって世界を代表する直接民主主義の法律を作り上げたか
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。