スイスのイグナツィオ・カシス外相(右)とウクライナのドミトロ・クレバ外相(5月)
© Keystone/Laurent Gillieron
スイス、ウクライナ両国の政府は10日、ロシアにおけるウクライナの利益代表国をスイスが務める方向で合意した。だがロシア側は11日、「スイスは中立国の地位を失っている」として利益代表の申し入れを断った。
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スイス連邦外務省は10日、スイス・ウクライナの間で利益代表委任の概要がまとまったとする地域紙ルツェルナー・ツァイトゥングの報道を認めた。
フランス語圏のスイス公共放送ラジオ(RTS)は、合意内容の詳細は明かされなかったものの、主な目的の1つはロシア在住のウクライナ人が駐モスクワ・スイス大使館の領事サービスを受けられるようにすることだと報じた。
≫利益代表とは?
スイスによる利益代表委任は、2月のロシアの侵攻開始以来検討されてきた。外交が全面的、あるいは一部断絶した当事国間の仲介役を務めるのは、中立国スイスの伝統的役割でもある。
だが連邦外務省は、利益代表の実現にはロシアの同意が必要だと述べた。
ロシア外務省のイワン・ネチャエフ報道官は11日、「スイスは、ロシアにおけるウクライナの利益とウクライナにおけるロシアの利益を代表する可能性について、我々の意見に興味を示した」と説明。「我が国は、スイスが残念ながら中立国としての地位を失っており、(スイスは)仲介役にも代理人にもなれないと明確に答えた」とし、その理由として「スイスは西側の違法な対ロシア制裁に加わっている」と述べた。
「非友好国」
スイスが2月、欧州連合(EU)の対ロシア制裁に追従することを決めた後、ロシアはスイスを「非友好的国リスト」に追加した。RTSは、制裁に加わったことでスイスが「中立性を損なった」とロシア側はみなしている、と報じた。
しかし、ウクライナ側はスイスが仲介役を務めることに以前から賛成していた。スイスのイグナツィオ・カシス外相も戦争勃発直後に仲介役を申し出ていた。
スイスは現在、紛争当事国の仲介役を複数務める。当事国の一方を代表することもあれば(イランにおける米国の利益代表など)、両方を代表することもある(ロシア・グルジア間など)。2015年までは、キューバにおける米国の利益代表、米国におけるキューバの利益代表を務めていた。
だが、常に当事国がそれを受け入れるとは限らない。ベネズエラと米国に関しては、米政府は2019年にスイスの利益代表委任に同意したが、ベネズエラ側が承認しなかった。
スイス外務省は同日、100トンの追加援助物資をウクライナに輸送したと発表した。消防設備、医療機器、医薬品、水処理装置などの資材を積んだ輸送部隊が先週、スイスからキーウとリビウに向けて出発した。同省によると、戦争が始まって以来、スイスは600トン以上の救援物資をウクライナに輸送。ウクライナ国内で4750トン以上の食糧を購入し、同国民への支援に充てている。
英語からの翻訳・宇田薫
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