スイス南部ヴァレー(ヴァリス)州で27日、州民投票が行われ、州内の医療・介護施設での自殺ほう助を可能にする法案が可決された。
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緩和ケアと医療・介護施設での自殺ほう助の条件の枠組みを定めた新法で、賛成は75.8%だった。投票率は38.9%。
病院や介護施設に入院・入所中で、重篤な不治の病や事故の後遺症に苦しむ人々が自殺ほう助を希望した場合、施設の意向にかかわらず入所先で自死できるようになる。
これまで州内の半数以上の施設が、宗教上の理由などにより施設内での自殺ほう助を禁止していた。だが新法の可決を受け、今後は患者の意向に沿うことが義務付けられる。
同法は自殺ほう助の条件のほか、事前の適切なチェックについても定めた。特に自死行為が「適切に監督され、乱用につながらない」ようにする。介護職員で自殺ほう助への関与を望まない人については、その意思を尊重する。
また緩和ケアに関しては「ヴァレー州の公的医療制度におけるこの種のケアの重要性」を強調し、この選択肢へのアクセスを保証した。
投票に先立ち、同法について多くの議論が交わされた。左派政党のほか中道右派の急進民主党が自殺ほう助を支持する一方、右派の国民党とカトリック教会は反対を表明していた。
スイスの他の地域では
介護施設内での自殺ほう助は、ヴォー州、ヌーシャテル州、ジュネーブ州が法律で既に認めている。チューリヒ州は5月、州議会が同様の議会イニシアチブ(議員発議)を可決。今後州民投票が行われる予定だ。
自殺ほう助団体エグジットとディグニタスは、今回の投票結果を歓迎。ディグニタスは27日の声明で、同州の決議は人権を支持するものであり、投票結果は「スイス全土にシグナルを送る」とコメントした。
エグジットも「自己決定と個人の自由の尊重を支持するというサインだ」と述べた外部リンク。
スイスでは、患者本人が自死行為を行い、ほう助者がその死に対して何ら利己的な理由を持たない場合に自殺ほう助が法的に認められる。スイスでは1940年代から自殺ほう助が合法化されている。
英語からの翻訳:シュミット一恵
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スイスは自殺ほう助の先進国だ。年老いた人が自殺する権利は事実上規制されておらず、外国人が安楽死を求めてスイスを訪れる「自殺ツーリズム」がブームになっている。このリベラルな現状を見ると、スイスでは自殺ほう助が肯定的に受け止められているような錯覚に陥るが、実際は違う。自殺ほう助は政治や宗教、社会通念や倫理などといった価値観との戦いの連続だ。たとえ差し迫った状況にあるからといって、人の命をどうするか、そもそも問うていいものなのか。自殺ツーリズムを法で規制するか否かの議論はいまだ消えることはない。
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