スイスの地方自治体は、若者が地方レベルで政治に参加するのを促すため試行錯誤している。自治体連合は、兵役の一環の社会奉仕活動に政治参加を組み入れることを提案した。
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの兵役は軍隊での訓練に限らず、ボランティアの消防活動などさまざまな奉仕活動が課せられることもある。スイスの2212市町村の7割が参加するスイス地方自治体連合外部リンクは、こうした奉仕活動に地方自治体での議員活動を加えることを提案した。
スイスの地方議員は一般市民が副業として担う「名誉職制度」が一般的だ。同協会は「名誉職制度はスイスの共和制の遺産であり、スイスの成功モデルの支柱である」と称える。だが2017年の調査によると、基礎自治体の約半数は関心のある市民を見つけるのに苦労している。
議員不足を解決するために、協会は2019年を「名誉職の年」と定め、全国的な啓発活動を展開している。その一環で実施された調査で、地域の政治に積極的に関わることに関心のありそうな25~35歳の若者は全体の2割ほどいることが分かった。
だが回答者の多くは、そうした義務を果たすには多大な時間がかかり、数年間にかけて務めるには負担が多すぎると考えている。
新しいアイデアを
連合は、地方議会への参加をより魅力的にし、少なくとも若い世代を集める方法を見つけるために何らかの手段が不可欠だと論じる。
回答者の9割は、これまで地方政治に関心があるか尋ねられたり連絡を受けたりしたことはないという。
クール技術経済大学マネジメントセンターが運営するウェブサイト「Promo35外部リンク」は、ビデオ電話やチャットの利用など、自治体の行政部や政党が候補者を見つけるためのアイデア84個を紹介している。
自治体協会は昨年12月、名誉職制度を改善するためのアイデアコンテストを開催した。先月26日の選考会外部リンクでは、地元政治家による小中学校の訪問やソーシャルメディアを使った政治対話を盛り込んだ提案が優勝した。他には透明性向上など自治体の行動規範を定める、スイスの徴兵制度を組み込むといったアイデアが寄せられた。
2015年にはシンクタンクのアヴニール・スイスが200ページに及ぶ報告書で市民の公務参加の義務付けを提案し、話題を呼んだ。
おすすめの記事
おすすめの記事
趣味は村長 名誉職が担うスイスの自治行政
このコンテンツが公開されたのは、
地方の行政職を一般市民が担ってきたスイスでは、「政治は副業」という考えが基本だ。そのため本業を持つ多くの人が、余暇を利用して地方自治に従事したり、副業として公職に就いたりしている。政治と有権者との間の壁を低くするこの名誉職制度が、実際は制度としての限界を迎えている。
もっと読む 趣味は村長 名誉職が担うスイスの自治行政
(英語からの翻訳・ムートゥ朋子)
続きを読む
おすすめの記事
タウンミーティング
このコンテンツが公開されたのは、
単なる意見聴取の場にとどまらず、立法・行政手続きの一環に位置づけられるタウンミーティング。スイス直接民主制の心臓部が今、ほころびを見せている。住民自治の現場で何が起きているのか、五つの自治体で深層に迫った。
もっと読む タウンミーティング
おすすめの記事
休暇客が自治体長に 地方政治家のなり手不足、スイスで深刻化
このコンテンツが公開されたのは、
自治体長になりませんか―。地方政治家のなり手不足が深刻化するスイスでは、公職を兼職で担う「名誉職制度」が危機に瀕している。自治体長不在という事態に陥ったスイス東部の基礎自治体トゥイェチは、ヘッドハンティングで候補者を探すという秘策に出た。そこで白羽の矢が立ったのが、この自治体に別荘を所有するベアート・レシュリンさん(64)。政治家としての自負がない元企業幹部に、はたして休暇先でしかなかった自治体のトップが務まるだろうか?
もっと読む 休暇客が自治体長に 地方政治家のなり手不足、スイスで深刻化
おすすめの記事
「湖岸は市民のもの!」チューリヒのゴールドコーストを巡る住民の戦い
このコンテンツが公開されたのは、
湖沿いはスイスで最も人気があり、なおかつ最も高額な住宅地だ。多くの大富豪が湖岸の私用地に豪邸を建てる夢を実現してきた。しかし湖や川の岸は法律で「公共物」と定められているため、湖岸を巡る「階層闘争」が各地で繰り広げられてきた。チューリヒ湖岸の自治体ウエティコンでは化学工場が湖岸を独占し、住民のロルフ・ケッペリさんは湖岸が市民の所有物だと認めてもらうため20年間戦い続け、その努力がついに実を結んだ。
もっと読む 「湖岸は市民のもの!」チューリヒのゴールドコーストを巡る住民の戦い
おすすめの記事
スイスの若者が気になる政治テーマは?
このコンテンツが公開されたのは、
「女性の兵役義務化を」「男女の所得格差を解消して」―。スイスの政治に対し、国内各地の若者から300件に上る要望が集まっている。若者の政治参加を促進する全国キャンペーンの一環で、そのうち14件は実際に連邦議会で取り上げられるという。
もっと読む スイスの若者が気になる政治テーマは?
おすすめの記事
プレゼントがスイスの地域民主主義を救う?
このコンテンツが公開されたのは、
焼いたソーセージに冷たいビールのサービス、無料の指定ゴミ袋やクーポン券の配布。スイスの多くの自治体は、市民にこうした「プレゼント」を提供することで、地域民主主義の中核である自治体集会への参加を促している。しかし、そもそも直接民主制にプレゼントは必要なのだろうか?
もっと読む プレゼントがスイスの地域民主主義を救う?
おすすめの記事
「タウンミーティングは民主主義の原型」 国民的コメディアン、スイス地方政治の長短を語る
このコンテンツが公開されたのは、
スイス人コメディアンで俳優のマイク・ミュラーさんは今、タウンミーティングを題材にスイス各地で舞台公演中だ。ミュラーさんは、スイスの地方自治には良い点があるとしながらも、地域によっては誰が国籍を取得できるかが住民の投票で決まることなどに関しては、全く快く思っていないという。
もっと読む 「タウンミーティングは民主主義の原型」 国民的コメディアン、スイス地方政治の長短を語る
おすすめの記事
挙手で投票 アッペンツェルで「ランツゲマインデ」開催
このコンテンツが公開されたのは、
スイス北東部アッペンツェル・インナーローデン準州で29日、有権者が野外広場に集まり法律改正の是非や州議員の選出などを挙手で投票する「ランツゲマインデ(青空議会)」が開かれた。
もっと読む 挙手で投票 アッペンツェルで「ランツゲマインデ」開催
おすすめの記事
若い世代に民主主義を伝えるアニヤ・ウィデン・ゲルパさん
このコンテンツが公開されたのは、
ジュネーブ州政府の高官として11年以上にわたり、若い世代の関心を政治に惹きつけ、政治的決定によって彼ら自身にどのような影響があるかを若者たちに見せることを自らの使命としてきた。 その人柄やこれまでの取り組みについて話…
もっと読む 若い世代に民主主義を伝えるアニヤ・ウィデン・ゲルパさん
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。