昨日27日に行われた国民投票で、緑の党提案の「脱原発イニシアチブ」は、投票者の54.2%の反対で否決された。「脱原発を否決したといっても、それがイコール原発支持ではないのだ」というのが、スイスメディアの全体的な反応だ。結局、国民の多くが政府の提案する「秩序ある脱原発」に従うことを選んだのだという。
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「現実的な脱原発を選んだ人々が勝利したのだ」と左派系の主要紙ターゲス・アンツァイガーは書いた。イニシアチブは既存の原発の運転期間を45年に限定しているため、もし可決されれば29年にスイスの5基の原発すべてが運転停止となるが、それでは再生可能エネルギー(以下、再エネ)での電力生産が間に合わないという政府の主張に人々が同意。その結果、「現実的なゆっくりとした脱原発を選んだのだ」と同紙は分析する。
政府が今年9月に決定した「エネルギー戦略2050」では、イニシアチブと同様に新規原発建設は凍結するが、40年までに時間をかけて脱原発すると謳っている。「この戦略に従ったほうが、時間をかけて再エネを展開させ、電力会社とも協調して電力を確保できる。また早期の運転停止を命じることで生じる電力会社への賠償金もいらない」(ターゲス・アンツァイガー)
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2016年11月27日の国民投票結果
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一方、経済発展を擁護する有力紙NZZは国民の多くが原発を支持したのだと書く。「明らかに国民の多くが、原発の技術にもまたその安全基準にも信頼を寄せた結果だ。また政府と連邦議会が決定した、秩序ある脱原発を提案する『エネルギー戦略2050』にも信頼を置いたのだ」
ロイトハルト環境・エネルギー相の勝利
「国民の多くは脱原発に賛成だ。しかし、イニシアチブが提案するペースでは無理だと判断した」と日刊紙アールガウアー・ツァイトゥングは書いた。
そこで、「エネルギー戦略2050」を決定にまで持ち込んだドリス・ロイトハルト環境・エネルギー相の手腕とそのエネルギー政策が国民投票で支持されたのだ、と多くのメディアの社説は述べる。「エネルギー戦略2050によって、ロイトハルト氏は原発を稼動させている国々と協調しながら、ゆっくりと脱原発の方向へ向かうことができる」とフランス語圏のル・タン紙は書いている。
ドイツ語圏の大衆紙ブリックでさえ「緑の党提案の脱原発イニシアチブへの『ノー』は、政府のエネルギー政策への『イエス』だ」と書き、ロイトハルト氏個人の勝利を褒め称えている。
非難を浴びる右派・国民党
脱原発に賛成した州が多かったフランス語圏ではメディアも、早期の脱原発が受け入れられなかったことに対し、より批判的だ。「(まるでウランがスイス国内で生産されているかのように)国外から電力が輸入されることを恐れ、イニシアチブ提案の29年の脱原発という期日を恐れ、さらに原発産業での失業者の増加を恐れ、イニシアチブを否決した」と、ジュネーブの日刊紙トリビューン・ド・ジュネーブは批判。そしてこう続けた。「昨日の否決の結果、我々は今後何十年にもわたって古い原発が事故を起こさないように、第2のフクシマにならないように神に祈りながら、古い原発の応急処置を続けなければならないのか?」
「スイスにとっての重要な問題を先送りすることは、非常に危険だ」とフランス語圏の日刊紙ル・マタンも言う。同紙はこうも書く。「この投票結果は、短期的な利益や産業部門の利益しか考えない、政治家の無責任さの表れである」
左派系の日刊紙クーリエは、一歩突っ込んで「経済界の一部は、脱原発を先送りすることで時間を稼ぎ、国際レベルで起きている原発の復活を期待しているのではないか?」と分析する。
そしてフリブールの日刊紙ラ・リベルテは、政府の決定した「エネルギー戦略2050」さえ覆そうと試みる右派・国民党に対し、こう主張している。「原発を支持する右派・国民党は、エネルギー転換には費用がかかると言う。確かに再エネには支援が必要だ。だが、真剣に考えた場合、再エネ推進以外に進む道はない。気候変動を阻止するには、クリーンエネルギーへ転換するしかない。(原発という)過去のエネルギーにしがみつくのではなく、未来のエネルギーに投資するしか道は残されていないのだ」
(仏語からの翻訳・里信邦子)
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日本とスイス 対照的な原子力政策
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東京電力福島第一原発事故から6年。スイスは2017年5月21日、原子力に拠らない未来をかけて国民投票を実施する。逆に当の日本は停止していた原子炉の再稼動に動き出している。この逆転現象の背景にあるのが直接民主制だ。
二国のエネルギー政策を取り巻く環境は共通する面が多い。日本とスイスはともに代表民主制を採る。輸出中心の工業立国であり、数十年間核エネルギーが重要な役割を担ってきた。2010年時点で両国とも原子力発電が電力総需要のほぼ3分の1を占めていた。
だが原子力の平和利用は核だけでなく現代社会を分裂させる。日本でもスイスでも、最初の原子力発電所の設立計画が動き出した1950年代、数百万人が危険な技術に反対してデモ行進をした。
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脱原発、再エネの技術革新と人間の創意工夫で10年後に可能とスイスの物理学者
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スイスでは21日、国民投票でエネルギー転換を図る政策「エネルギー戦略2050」の是非が問われる。これは、節電やエネルギー効率の促進、再生可能エネルギーの推進に加え、原発の新規建設の禁止を軸にしている。しかし、既存の原発の寿命には制限がないため、ゆるやかな段階的脱原発になる。では、40年といわれる原発の寿命はどう決められたのか?など、原発の問題点やスイスのエネルギー転換を物理学者のバン・シンガーさんに聞いた。
緑の党の党員で国会議員でもあるクリスチャン・バン・シンガーさんは、 物理の専門家として「世界の物理学者は戦後、原爆のあの膨大なエネルギーを何かに使いたいと原発を考案したが、二つの問題を全く無視していた。事故のリスクと核廃棄物の問題だ」という。
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スイスの脱原発イニシアチブ、否決
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スイスで27日に行われた国民投票で、2029年に脱原発するよう求めるイニシアチブが投票者の54.2%の反対と州の過半数の反対で否決された。これでスイスは、政府が9月に決定した「エネルギー戦略2050」に従い、新規原発建設は凍結するものの、原発の運転期間に制限を設けずにいずれは脱原発するという「段階的脱原発」の道を選んだ。しかし一方で、賛成も45.8%と高い数字を記録。緑の党は、「原発が引き起こす過酷事故に対する懸念が広がった証拠」と見ている。
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スイスの国民投票「脱原発」を否決 今後のエネルギー政策は?
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スイスで27日、国内に既存する5基の原発の運転期間を45年に制限し、2029年までに脱原発を達成することの是非を問う国民投票が行われたが、時期尚早のエネルギー転換は現実的でないとし、州の過半数が反対し否決された。脱原発イニシアチブ反対派にとって、今後のスイスのエネルギー政策は、どう展開していくのだろうか?
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緑の党、脱原発しても「十分な再エネがスイスにはある」と主張
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いよいよ27日の国民投票でスイス国民は、緑の党提案の「脱原発」を求めるイニシアチブに対し意見を表明する。もし可決されれば、17年末には5基の原発のうち3基が稼動を停止。最終的には最後の原発が稼動停止する2029年にスイスは脱原発を達成する。だが、イニシアチブに反対する政府は「原発に取って代わる再エネの生産が追いつかない。外国から大量の電力を輸入しなくてはならない」と言う。それに対し緑の党は「十分な再エネがスイスにはある」と主張する。イニシアチブを立ち上げた中心人物、ロベール・クラメール下院議員に聞いた。
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スイスの脱原発、2029年に実現か?
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「新しい原発の建設を禁止し、現存の原発の運転期間を45年に限定する」。これが11月27日の国民投票にかけられるイニシアチブ「脱原発」の内容だ。これを国民が承認すれば、最後の原発が廃炉になりスイスが脱原発を達成するのは2029年になる。だが、緑の党のこの提案を政府も連邦議会も支持していない。両者にとって「2029年の脱原発」は早すぎるうえに、現在スイスは原発の運転期間を限定しない方針だからだ。
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「脱原発」が、今月27日の国民投票でスイス国民に問われる。だが、もともとこのイニチアチブが提案された直接の原因は、福島第一原発の事故だった。では、この事故の当事国であり、原発ゼロが1年半も続いた日本で今、エネルギーシフトはどう進んでいるのだろうか?また、節電はどこまで行われ、人々のエネルギーに対する考えはどう変わったのだろうか?「環境エネルギー政策研究所」の飯田哲也所長に電話インタビューした。
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