顔を覆うベールは、ティチーノ州やザンクト・ガレン州だけでなく、スイス全国で着用が禁止される
Keystone / Mario Vedder
国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)は9日、スイス国民投票の結果を受け、ブルカの着用禁止は差別的だと遺憾の念を表明した。
このコンテンツが公開されたのは、
OHCHRによると、7日に行われた国民投票に至るまでの政治的キャンペーンは、女性解放の言説を利用した外国人排斥に特徴づけられていたと言う。
OHCHRは声明で、「顔を覆うものの着用が、安全や健康、または他人の権利を脅かすことになるという漠然とした正当化は、基本的自由を侵襲的に制限する正当な理由とはみなされない」と述べた。
また、「外国人排斥色の強い政治的な宣伝活動をきっかけに、スイスはイスラム教徒の女性に対する差別を積極的に法律で制裁する、数少ない国の仲間入りをした」とも言い、「深く遺憾」とも非難した。
7日の国民投票では、イスラム教徒の女性が着用するブルカやニカブなどを含む、顔を覆うベールの着用禁止を求める案件の是非が問われ、有権者の51.2%が賛成した。隣国フランスやオーストリアを含む欧州5カ国では既に禁止されている。
おすすめの記事
おすすめの記事
スイス国民投票、ブルカ着用禁止を可決
このコンテンツが公開されたのは、
スイスで7日、国民投票が行われた。ブルカやニカブなど顔を覆うベールを公共の場で着用することを禁じる国民発議は賛成51.2%と僅差で可決された。
もっと読む スイス国民投票、ブルカ着用禁止を可決
「女性に顔を隠すよう強制すべきではない。だが同時に、顔を覆うことを法律で禁止することは、女性が持つ宗教や信条を表明する自由を不当に制限し、女性の人権に大きな影響を与える」とOHCHRは述べる。
チューリヒ・イスラム組織協会(VIOZ外部リンク)は、投票結果に「失望」したと話した。ムリス・ベゴヴィッチ常務理事はスイスの公共放送SRFの取材に対し、「同協会は結果を尊重するが、反イスラム主義的人種差別が増加している」と警告した。
おすすめの記事
チューリヒ動物園、49歳のアジアゾウを安楽死
このコンテンツが公開されたのは、
チューリヒ動物園は12日、49歳の雌ゾウ、セイラ・ヒマリを安楽死させたと発表した。長年、健康上の問題に苦しんでいた。
もっと読む チューリヒ動物園、49歳のアジアゾウを安楽死
おすすめの記事
スイス鉄道、国外へ乗り入れせず
このコンテンツが公開されたのは、
スイス連邦鉄道(SBB)取締役会長のモニカ・リバー会長は、自社列車で国外に乗り入れないとする同社の決定を擁護した。
もっと読む スイス鉄道、国外へ乗り入れせず
おすすめの記事
命を救う後部座席のシートベルト スイスで義務化30年
このコンテンツが公開されたのは、
スイスでは、30年前から車の後部座席のシートベルト着用が義務付けられている。スイス事故防止協議会(BFU)と連邦統計局の最新データによって、この安全対策の有効性が裏付けられた。
もっと読む 命を救う後部座席のシートベルト スイスで義務化30年
おすすめの記事
アムヘルト大統領、岸田首相と会談 FTA改定を改めて要望
このコンテンツが公開されたのは、
訪日中のヴィオラ・アムヘルト大統領兼国防相は7日、官邸で岸田文雄首相と会談し、日本・スイス間の自由貿易協定(FTA)改定というスイスの要望を改めて表明した。
もっと読む アムヘルト大統領、岸田首相と会談 FTA改定を改めて要望
おすすめの記事
UNRWA、「イスラエル襲撃に関与した可能性」の9人を解雇
このコンテンツが公開されたのは、
国連は5日、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の職員9人が昨年10月7日のイスラム過激派ハマスによるイスラエル襲撃に「関与していた可能性がある」との内部調査を発表した。
もっと読む UNRWA、「イスラエル襲撃に関与した可能性」の9人を解雇
おすすめの記事
スイスで小児科医が不足
このコンテンツが公開されたのは、
スイス小児科医協会は医師が足りず、特に地方部で子どもが十分な治療を受けられなくなる可能性があると警告する。背景には柔軟な働き方を求める世代の増加や役所・企業の「官僚主義化」があると批判する。
もっと読む スイスで小児科医が不足
おすすめの記事
コロナ再流行のスイス、ワクチン不足に
このコンテンツが公開されたのは、
スイスでは現在、新型コロナウイルス感染症が再び流行している。それ自体はさほど深刻ではないものの、ワクチンを受けたくても薬局や診療所に在庫がない事態が発生。背景には7月初めの制度変更がある。
もっと読む コロナ再流行のスイス、ワクチン不足に
おすすめの記事
スイスで人身取引被害が増加
このコンテンツが公開されたのは、
「人身取引と闘うプラットフォーム(Plateforme Traite)」は2023年、スイスで197件の人身取引(人身売買)事案を記録した。前年比で11%増加した。
もっと読む スイスで人身取引被害が増加
おすすめの記事
スイス最高裁、中期中絶に父親の発言権認めず 「被害者ではない」
このコンテンツが公開されたのは、
妊娠中期に中絶した女性を元恋人の男性が告訴した事件で、スイスの連邦裁判所(最高裁)は25日、男性は「被害者」に当たらないとして訴えを却下した。
もっと読む スイス最高裁、中期中絶に父親の発言権認めず 「被害者ではない」
おすすめの記事
「建国記念日に花火欠かせない」半数 スイス世論調査
このコンテンツが公開されたのは、
スイス人の半数が、打ち上げ花火は8月1日の建国記念日に欠かせないと考えていることが最新の調査で分かった。しかし、回答者の大多数は個人での花火打ち上げに反対している。
もっと読む 「建国記念日に花火欠かせない」半数 スイス世論調査
続きを読む
おすすめの記事
ブルカ着用禁止、なぜ議論は二極化したか?
このコンテンツが公開されたのは、
スイスで7日、公共の場での顔を隠す衣装の着用禁止を求める提案が国民投票で可決された。このいわゆる「ブルカ着用禁止案」は、日常ではごく一部の人にしか影響しないものの、激しい議論を巻き起こした。その理由は、ここでの根本的な問題がブルカやニカブではなかったからだと、専門家は指摘する。
もっと読む ブルカ着用禁止、なぜ議論は二極化したか?
おすすめの記事
「ブルカイニシアチブは女性の尊厳を擁護する」
このコンテンツが公開されたのは、
「ブルカイニシアチブ」では健康上の理由による例外を認めている。国民党(SVP/UDC)の国民議会(下院)議員、ジャン・リュック・アドール氏はそう弁護する。
もっと読む 「ブルカイニシアチブは女性の尊厳を擁護する」
おすすめの記事
「ブルカイニシアチブは火に油を注ぐだけ」
このコンテンツが公開されたのは、
「スイスでブルカとニカブの着用を禁止するのは反生産的」。緑の党の国民議会(下院)議員、グレタ・ギジン氏はこう批判し、イニシアチブ(国民発議)「ベール着用禁止に賛成」はフェミニズムでも何でもないと切り捨てる。
もっと読む 「ブルカイニシアチブは火に油を注ぐだけ」
おすすめの記事
スイスでもブルカ着用禁止の動き イスラム女性たちの反応は?
このコンテンツが公開されたのは、
「顔や全身を覆う衣装着用禁止にイエスを」というイニシアチブ(国民発議)をめぐって、今スイスの政界は割れている。一方、夏のジュネーブ祭りに湾岸諸国から来る、顔や首を覆った女性観光客の考えは、はっきりしている。もし、将来このイニシアチブが可決され、ブルカやニカブの着用がスイス全体で禁止されれば、他の国に旅行に行くというのだ。数人のイスラム女性に話を聞いた。
もっと読む スイスでもブルカ着用禁止の動き イスラム女性たちの反応は?
おすすめの記事
ティチーノ州 ベール着用禁止が与える影響は
このコンテンツが公開されたのは、
アラブ人観光客に人気のスイス南部のティチーノ州では、公の場でのベール着用を禁止する法案が2013年に州議会で承認されている。ある右派グループは今年9月、その法案を全国に適用させようと、新たなイニシアチブ(国民発議)を立ち上げた。(SRF/swissinfo.ch)
このイニシアチブでは、ベールなど、顔全体を覆うあらゆる衣服の着用をスイス全土で禁止することが求められている。発起人は、右派の政治家と活動家からなるグループ。彼らはスイスが「イスラム化」する恐れがあり、また顔を隠すことが治安問題につながると主張している。同グループは2009年、イスラム寺院の塔ミナレットの新規建設を禁止するイニシアチブを成功させ、国際的批判を呼び起こした。
もっと読む ティチーノ州 ベール着用禁止が与える影響は
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。