スイス北西部のベルン州ムーティエで9日、ジュラ州への移籍を決めた住民投票を無効とするベルン州当局の決定に対する抗議デモが行われた。5千~1万人が街でロウソクに火をともし、厳かに異議を唱えた。
このコンテンツが公開されたのは、
デモの呼びかけ人はこの日のデモを「民主主義の要求」だと説明した。市庁舎前でシュプレヒコールを上げ、5日に下された無効決定への抗議を続けるよう呼びかけた。ただ同時に、冷静さを保つ大切さも伝えた。
2017年6月18日、ドイツ語圏のムーティエはベルン州からジュラ州に移籍する案を住民投票で可決した。4千人の有権者が投票し、88%との高投票率を記録した。
≫17年6月、割れるムーティエ住民
投票後、ムーティエに実際には住んでいないのに有権者として登録し投票した離脱推進派がいたとの疑惑が浮上。調査に当たったベルン州当局は今月5日、7件中6件の異議申し立てに正当性があり、投票を無効とみなすと発表した。ムーティエの行政府が「許容できないようなプロパガンダ」を展開し、「有権者に道を誤らせた」との理由だ。
離脱推進派は、州の判定を「政治的判断」と批判し、投票の無効に断固抗議すると主張。上訴の可能性や投票のやり直し案も出ている。
こうした経緯はスイスの領土形成の歴史に因縁がある。フランス語圏のジュラ州は1979年、ドイツ語圏のベルン州から分離独立する案を住民投票で可決し、26番目のスイスの州となった。それ以来、州境沿いの自治体ではどちらの州に属するかという問いが断続的に提起されている。
おすすめの記事
おすすめの記事
スイスの26州制度は時代遅れ?
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの州の境界線には、あのナポレオン・ボナパルトでさえ白旗を上げたという歴史がある。1798年、フランス総裁政府の強力な圧力の下でスイスにヘルヴェティア共和国の建国が宣言された。フランス革命軍は国を占拠するやいなや、…
もっと読む スイスの26州制度は時代遅れ?
おすすめの記事
スイスの核廃棄物処分場計画、反対派が国民投票計画
このコンテンツが公開されたのは、
チューリヒ州の放射性廃棄物処分場建設計画が、正式な認可が下りる前から反対運動に直面している。
もっと読む スイスの核廃棄物処分場計画、反対派が国民投票計画
おすすめの記事
ジョン・レノンの盗まれた腕時計、所有権はオノさん スイス最高裁が認定
このコンテンツが公開されたのは、
ビートルズのジョン・レノンさんが殺害される2カ月前にオノ・ヨーコさんから贈られ、その後盗まれた腕時計について、スイスの連邦最高裁判所はオノさんに時計の完全な所有権があるとの判決を出した。
もっと読む ジョン・レノンの盗まれた腕時計、所有権はオノさん スイス最高裁が認定
おすすめの記事
スイス証取、英プロバイダーを買収 MTF参入へ
このコンテンツが公開されたのは、
スイス証券取引所を運営するSIXグループは11日、英国の証券取引サービスプロバイダー、アクイス・エクスチェンジを買収すると発表した。今後、多角的取引システム(MTF)に参入する方針だ。
もっと読む スイス証取、英プロバイダーを買収 MTF参入へ
おすすめの記事
2022年の可処分所得は約95万円 スイス統計局
このコンテンツが公開されたのは、
スイス連邦統計局は12日、2022年の1世帯平均の可処分所得はひと月6902フラン(当時レートで約95万円)だったと発表した。前年からほぼ横ばいだった。
もっと読む 2022年の可処分所得は約95万円 スイス統計局
おすすめの記事
CERNとロシアの研究協力協定、11月末に期限迎える
このコンテンツが公開されたのは、
今月30日、ロシアの研究機関とジュネーブに拠点を置く欧州原子核研究機構(CERN)との協力協定が終了する。研究者はCERNのプロジェクトに影響を及ぼすと警告している。
もっと読む CERNとロシアの研究協力協定、11月末に期限迎える
おすすめの記事
女子優位のクラスを出た女性は高収入の傾向 スイス調査
このコンテンツが公開されたのは、
スイス・バーゼル大と英ダラム大が1989年から2002年の間にスウェーデンで初等教育を修了した75万人以上の生徒のデータを用いて行った調査で、女子生徒の方が多いクラスを出た女性はより多くの収入を得る傾向があることが分かった。
もっと読む 女子優位のクラスを出た女性は高収入の傾向 スイス調査
おすすめの記事
11月のスイスアルプス、季節外れの暖かさ
このコンテンツが公開されたのは、
スイスアルプスで、季節外れの暖かさが続いている。スイスで最も標高の高い地点にあるユングフラウヨッホでは観測史上最高を記録した。
もっと読む 11月のスイスアルプス、季節外れの暖かさ
おすすめの記事
スイスでベジタリアン・ビーガン増加 若者・高学歴に多く
このコンテンツが公開されたのは、
スイスで肉食をやめる人が増えている。植物性食品を推進するスイスベジ協会(Swissveg)は30日、スイスのベジタリアンやビーガンの数は過去5年間で約40%増加したと発表した。
もっと読む スイスでベジタリアン・ビーガン増加 若者・高学歴に多く
おすすめの記事
スイスを縦断するツルが過去最多
このコンテンツが公開されたのは、
スイス鳥類研究所によると、スイスでは今季、はやくも過去最多のツルが観察されている。なかには約800羽の大規模な群れもみられた。
もっと読む スイスを縦断するツルが過去最多
おすすめの記事
「金銭目的」で自殺ほう助 スイスの裁判所が元看護師に有罪判決
このコンテンツが公開されたのは、
スイス南部ティチーノ州ルガーノの州刑事裁判所は23日、利己的な動機で他人の自殺を手助けしたとして、自殺教唆・ほう助の罪に問われた同州の元看護師の女(67)に条件付き罰金刑を言い渡した。
もっと読む 「金銭目的」で自殺ほう助 スイスの裁判所が元看護師に有罪判決
続きを読む
おすすめの記事
スイス第26の州、ジュラ州で独立40周年式典 ベルン州は参加せず
このコンテンツが公開されたのは、
スイスで最も歴史の若いジュラ州で23日、独立40周年の記念式典が行われた。ジュラ州は1979年、第26の州としてベルン州から独立したが、ベルン州との軋轢はいまだに残る。この日はベルン州の代表団が出席する予定だったが、安全上の理由からジュラ州側が直前にキャンセルした。
もっと読む スイス第26の州、ジュラ州で独立40周年式典 ベルン州は参加せず
おすすめの記事
ジュネーブで選挙不正 国内外に波紋
このコンテンツが公開されたのは、
スイス・ジュネーブ州で発覚した選挙不正が全国に波紋を広げている。住民投票・選挙管理事務所の職員が、少なくとも4件の不正に手を染めた。専門家はスイス全土での不正捜査を呼びかけるが、パンドラの箱を開けることになりかねない。
もっと読む ジュネーブで選挙不正 国内外に波紋
おすすめの記事
ジュラ問題の終結がかかる投票に冷めた反応
このコンテンツが公開されたのは、
ベルン・ジュラ行政区の自治体ムーティエ(Moutier)。10月のある火曜日、時刻は12時半。中心街の人通りはまばらだ。ジュラ州の渓谷に挟まれた、人口約7千人の小さな工業都市は冷たく物悲しい雰囲気で、散策してみる気分に…
もっと読む ジュラ問題の終結がかかる投票に冷めた反応
おすすめの記事
言語地域間の「溝」がスイスをまとめる
このコンテンツが公開されたのは、
フランス語地域とドイツ語地域では、国民投票時に投票行動の違いがみられることが多く、こうした言語地域間の違いはスイスでは「レシュティの溝」と呼ばれている。レシュティ(Rösti)とはジャガイモのガレットのこと。ドイツ語地…
もっと読む 言語地域間の「溝」がスイスをまとめる
おすすめの記事
故郷は心が残る場所
このコンテンツが公開されたのは、
スイスでは通常、父親の「起源地」が子どもに受け継がれる。市町村の役場は、そこに住んでいない市民のルーツの記録も保管し、出生(洗礼)、結婚、埋葬などについて記録する。これは教会が教区簿冊に記録していたものだ。 こうした…
もっと読む 故郷は心が残る場所
おすすめの記事
ベルン州とジュラ州、分離問題で一歩前進
このコンテンツが公開されたのは、
そこでベルン州とジュラ州の代表は2月20日、州民・住民投票を行う方向で合意。問題解決に一歩前進した。 両州はシモネッタ・ソマルガ司法警察相を含めた3者会談で合意。これは「上から」の指示ではなく、両州が自ら働きかけたおか…
もっと読む ベルン州とジュラ州、分離問題で一歩前進
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。