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手放しでは喜べぬWTOのコロナワクチン特許放棄合意

ジュネーブで開催されたWTO閣僚会議閉会後、インドのピユシュ・ゴヤル商工相(中央)に祝福されるWTO事務局長のンゴジ・オコンジョ・イウェアラ氏(右)
ジュネーブで開催されたWTO閣僚会議閉会後、インドのピユシュ・ゴヤル商工相(中央)に祝福されるWTO事務局長のンゴジ・オコンジョ・イウェアラ氏(右) Keystone / Fabrice Coffrini / Pool

世界貿易機関(WTO)閣僚会議は17日、難航した交渉の末、ワクチンの特許放棄など6つの貿易ルールからなる貿易パッケージで合意し、幕を閉じた。しかし、すべての人が歓迎したわけではいない。  

WTOが新型コロナウイルス感染症ワクチンの知的所有権を一時的に放棄する貿易協定で合意したことは「成果」と評される一方、非政府組織(NGO)や製薬業界の両方から、「行き過ぎ」と「不十分」と真逆の批判を招いている。 

国際製薬団体連合会(IFPMA、本部・ジュネーブ)のトーマス・クエニ事務局長は会議終了後のプレスリリースで、「この決定は、あらゆる手段を尽くしてきた科学者に対する冒涜(ぼうとく)であり、すべての大陸における製造パートナーシップを弱体化させる。ワクチン不足に影響を与える唯一最大の要因は知的財産ではなく、貿易だ」と表明した。 

知的財産を保護するWTOの「知的財産権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)」の義務を一部免除することは、ジュネーブで5日間にわたる白熱した議論を経て17日に閉幕したWTO閣僚会議の主要議題の1つだった。 

今回の合意により、発展途上国は今後5年間、コロナワクチンの強制実施権を得ることができる。途上国がより安価に後発ワクチンを製造できるが、製造業者に金銭的な補償をしなければならない。 

裕福な西側諸国によるワクチンの買い占めは、WTO事務局長であるンゴジ・オコンジョ・イウェアラ氏が「道徳的に容認できない」と激しく批判していた。 

現代的形態の人種差別に関する国連特別報告者であるテンダイ・アチウメ氏は、コロナワクチンへのアクセスと治療の不平等は、「ワクチン・アパルトヘイト(人種隔離)」の一形態であると咎めていた。WTOの提案には、大きな製薬業界を抱える英国とスイスが反対した。交渉がこじれ当初15日だった期限を延長し、17日にパッケージの一部として最終的な合意を得た。  

他の欧州の製薬業界団体も、この合意を批判する。  

欧州製薬団体連合会(EFPIA)は「深く失望した」と述べ、欧州経営者連盟(ビジネス・ヨーロッパ)は「遺憾である」と表明した。 

EFPIAのナタリー・モール事務局長は、「ワクチンの公平性を妨げているのは生産者の能力ではなく、世界のワクチン接種の運営能力とインフラだ」と指摘した。 

「この2年間で、パンデミックに対する唯一の効果的な対応は、研究、開発、革新に根ざしていることが明確になった。この対応能力は、しっかりとした知的財産の枠組みを持つことによって築かれる」(モール氏) 

十分ではない?  

一方で合意内容はコロナのワクチンや治療薬、診断薬の特許権放棄を主張していたインドや南アフリカなどの国々の元々の期待には及ばないものだ。両国は、自国で何十万人もの犠牲者を出し、パンデミックの深刻な打撃を受けた。  

スイス元大統領のルース・ドライフス氏はswissinfo.ch に「この交渉の難しさは、私たちが現在、基本的な問題に直面していることを示している。 一方では、ワクチン、診断薬、医薬品を安価に提供する必要があり、他方では、製薬業界が公的資金による基礎研究を大量に蓄積し、革命的な新薬を開発・生産している。世界的な衛生上の緊急事態であっても生産を独占しようとする医薬品業界の意志を打破しなければならない。この協定がそれを実現するのに十分かどうか疑問だ」と語った。  

市民社会もまた、新型コロナウイルスのワクチン以外の医療品を含んでいない今回の協定が野心を欠くことに失望を表明している。  

国境なき医師団(MSF)インターナショナルのクリストス・クリストウ会長は、「20カ月以上にわたる交渉の末、新型コロナウイルスの医療品の知的財産権の放棄に関する不十分な結果が出たことに失望している」と述べた。MSF、民衆のワクチン同盟( People’s Vaccine Alliance )など市民社会の代表者は14日、WTO館内で抗議を行った。 

加盟国は6カ月以内に今回の決定を見直し、治療薬や診断薬などすべての医療品に拡大する可能性がある。  

「解決策は、すべての人にとって理想的なものではない」 

「誰にとっても理想的とは言えない解決策に至るかもしれない。しかし、それが解決策だろう」と、スイス経済相のギー・パルムラン氏は、合意に先立つ記者会見で発言した。  

 パルムラン氏によると、ワクチンの供給よりも流通の方が大きな障害になっており、これまでに200億回分以上が製造された。 

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