スイスの視点を10言語で

チューリヒ州のライナウ村、ベーシックインカム試験的導入へ スイス初

ライナウ村
チューリヒから約30キロメートル離れたライナウ村 Keystone

チューリヒ近郊にあるライナウ外部リンク村(人口1300人)が来年1年間、住民に無条件で一定額の現金を支給する「ベーシックインカム」を試験的に導入する計画を進めている。実現すればスイス初となる。

 アンドレアス・ジェニ村長は、市議会が計画を承認したと述べた。ただ実現にはクラウドファンディングで必要な財源を集めること、さらに住民の約半数に当たる600人以上の参加が条件となる。

 実験は2019年1月から12月末までの1年間。この村の住民で、実験に参加する意思を示した人に毎月2500フラン(約27万5千円)を支給する。

ライナウのベーシックインカム導入案

スイス公共放送(SRF)によると、実験に参加する住民に対し、毎月初めに2500フランを支給する。25歳未満の場合は減額される。

【例】

25歳以上:2500フラン

22~24歳:1875フラン

18~21歳:1250フラン

18歳未満:625フラン

大人2人、子供2人の世帯:6250フラン

プロジェクトのサイト外部リンクによると、2500フランを上回る収入があった場合は、月末にベーシックインカム全額を返金する。その代わりに自分の収入は手元に残る。

一方、2500フランを下回った場合は、収入を全額手放す代わりにベーシックインカムを受け取る。このため手元には2500フランが入る。

収入源は給与のほか、遺族・老齢年金(AHV)、社会保障なども含む。

返金に応じなかった人は実験の参加資格を失う。

期間は2019年1月から12月末までの1年間。

 このプロジェクトをバックアップするのは、映画製作者のレベッカ・パニアン氏のほか、経済学者のジェンス・マルティグノーニ氏とベーシックインカムの専門家ラルフ・モーザー氏。パニアン氏は「自由を得ることで、怠け者になるのか、より自発的に働くようになるのか。この実験で住民がどんな行動を取るのか知りたい」と話す。

おすすめの記事
寄付

おすすめの記事

ベーシックインカム導入案に揺れる村 住民の反応は?

このコンテンツが公開されたのは、 チューリヒ校外のライナウ村が、無条件で住民に一定額の現金を支給する「ベーシックインカム」を試験的に導入する計画を進めている。スイス人映画監督が発案し、資金はクラウドファンディングでまかなう。資金が集まり、住民の半数以上が参加の意思を表明すれば、来年1月に始まる。しかしスイス公共放送(SRF)は、地元住民の多くがこのアイデアに懐疑的だと報じている。

もっと読む ベーシックインカム導入案に揺れる村 住民の反応は?

 パニアン氏らが実験に協力してくれる自治体を公募したところ、100超の自治体が手を挙げた。パニアン氏は、ライナウを選んだ理由を「数値的に、スイスのミニチュア版に最も近い」と話す。

 スイスでは2年前の国民投票で、ベーシックインカムの導入案が72%の反対で否決されている。ジェニ市長は実験に参加した理由を「政策を具体化し、重要な政治課題を人々の日常生活の場に落とし込みたい」と話し、この実験を通して活発な議論が行われることを望むと述べた。

フィンランド、米国、ケニア、ドイツでも

 フィンランドでも同様の実験が行われている。失業中の2千人に毎月560ユーロを支給すると言う内容で、実施期間は今年末までの2年間で、来年1月に試験結果が発表される。

 ケニアやドイツでも小規模の類似プロジェクトが民間人によって行われている。米カリフォルニア州ストックトンも来年、1年半に及ぶ実験を実施する計画を進めている。

最も読まれた記事
在外スイス人

世界の読者と意見交換

ニュース

巨大な豆腐を切る人

おすすめの記事

スイスでベジタリアン・ビーガン増加 若者・高学歴に多く

このコンテンツが公開されたのは、 スイスで肉食をやめる人が増えている。植物性食品を推進するスイスベジ協会(Swissveg)は30日、スイスのベジタリアンやビーガンの数は過去5年間で約40%増加したと発表した。

もっと読む スイスでベジタリアン・ビーガン増加 若者・高学歴に多く
草原のツルの群れ

おすすめの記事

スイスを縦断するツルが過去最多

このコンテンツが公開されたのは、 スイス鳥類研究所によると、スイスでは今季、はやくも過去最多のツルが観察されている。なかには約800羽の大規模な群れもみられた。

もっと読む スイスを縦断するツルが過去最多
手

おすすめの記事

「金銭目的」で自殺ほう助 スイスの裁判所が元看護師に有罪判決

このコンテンツが公開されたのは、 スイス南部ティチーノ州ルガーノの州刑事裁判所は23日、利己的な動機で他人の自殺を手助けしたとして、自殺教唆・ほう助の罪に問われた同州の元看護師の女(67)に条件付き罰金刑を言い渡した。

もっと読む 「金銭目的」で自殺ほう助 スイスの裁判所が元看護師に有罪判決
眼の診察

おすすめの記事

スイス、外来診療の新料金体系で合意 定額制を一部導入

このコンテンツが公開されたのは、 スイスの医療機関団体は22日、外来患者向けの新料金体系を承認したと発表した。エリザベット・ボーム・シュナイダー内務相は積年の議論に決着がついたことを歓迎した。

もっと読む スイス、外来診療の新料金体系で合意 定額制を一部導入
戦車

おすすめの記事

スイス製武器の再輸出解禁案まとまる 主要政党の賛否まとまらず

このコンテンツが公開されたのは、 スイス国民議会(下院)安全保障委員会は、スイス製武器の再輸出の解禁案をまとめた。武器の輸出から5年経過を条件に、ウクライナなど紛争中の第三国への再輸出を認める内容だ。ただ主要政党の間では賛否が割れている。

もっと読む スイス製武器の再輸出解禁案まとまる 主要政党の賛否まとまらず
新聞を読む男性

おすすめの記事

スイスで「ニュース離れ」さらに深刻に メディア品質年鑑

このコンテンツが公開されたのは、 チューリヒ大学公共・社会研究センターが毎年まとめる「スイスメディア品質年鑑」2024年度版で、スイスでニュースを平均以下の量しか消費しない人の割合は46%と、過去最高を更新したことがわかった。スイスメディア全体の質は引き続き「良好」と評価された。

もっと読む スイスで「ニュース離れ」さらに深刻に メディア品質年鑑
スイスのアイスホッケー代表

おすすめの記事

アイスホッケーのスイス代表、国旗の白十字使用認められず

このコンテンツが公開されたのは、 アイスホッケーのスイス代表チームは、ユニフォームにスイスの国旗である白十字の紋章を付けることができなくなった。スイスアイスホッケー連盟(SIHF)が連邦行政裁判所に提出した申請が遅すぎたのが原因だ。

もっと読む アイスホッケーのスイス代表、国旗の白十字使用認められず
机に座るスーツ姿の男性

おすすめの記事

スイス、ロシアに追加制裁 輸出規制を強化

このコンテンツが公開されたのは、 スイス連邦政府は16日、ウクライナに侵攻するロシアへの追加制裁を発表した。ロシアの産業・軍事・技術に必要な製品の輸出規制が強化されるほか、政党、NGO団体、報道機関がロシア政府からの寄付を受け取ることが禁止される。

もっと読む スイス、ロシアに追加制裁 輸出規制を強化
パン屋の陳列棚

おすすめの記事

チューリヒの一等地にパン屋開業 高級街に転機か

このコンテンツが公開されたのは、 高級ブランドが立ち並ぶチューリヒのバーンホフ通りにパン屋が開業し、大きな話題を呼んでいる。通りを象徴する百貨店の撤退や再開と合わせ、街の大きな転機になるとの指摘もある。

もっと読む チューリヒの一等地にパン屋開業 高級街に転機か

swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。

他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部