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皇太子さまのスイス訪問 姉妹都市を歴訪し日本・スイスの絆を刻む

今年の2月4日、東京のスイス大使公邸のレセプションで懇談する皇太子さまとブルカルテール氏 AFP

皇太子さまのスイス公式訪問が先週決定し、その日程が宮内庁の公式サイトに発表された。それによると、6月17日の首都ベルン到着後ヌーシャテル、インターラーケンなど、日本と姉妹都市提携を結んだ自治体を22日まで歴訪し友好を深める。ほぼ1週間にわたるこの訪問に対しスイス側は、「ディディエ・ブルカルテール大統領は皇太子殿下と共に、日本・スイス国交樹立150周年というこの記念すべき年をおおいに祝いたいと願っている」との声明を発表している。


 ブルカルテール氏は日本へ公式訪問した今年の2月4日、皇太子さまを東京のスイス大使公邸のレセプションに招いている。その際「150周年の今年、殿下をスイスでもお迎えすることができれば大変にうれしい」と述べた。それに対し皇太子さまは、「両国が築き上げた友好関係を基礎に、直面する課題に取り組んでいくことが重要です」と挨拶している。

 今回のスイス訪問は、このブルカルテール氏からの招待に応えた形になる。また、そのときに皇太子さまが日本・スイス国交樹立150周年の日本側名誉総裁に、ブルカルテール氏がスイス側名誉総裁に決まった。

 スイス外務省によれば、ブルカルテール氏は19日、ヌーシャテル州の州都ヌーシャテルで皇太子さまを公式に迎え懇談する予定だという。この州都を公式の歓迎の地に選んだのにはいくつかの理由が考えられる。

 

 まず、ヌーシャテル州はブルカルテール氏の出身地だからだろう。実は150年前のスイスの使節団長、エメ・アンベールも同州の出身だった。このことをブルカルテール氏は「この偶然の一致に特に喜びを感じている」と2月の日本訪問の際に述べている。

 もう一つは、アンベールが日本について書いた図版付きの本「幕末日本図絵(ル・ジャポン・イリュストレ)」についての展覧会「エメ・アンベールとル・ジャポン・イリュストレ」のオープニングがヌーシャテルで19日行われ、ブルカルテール氏と一緒に皇太子さまが臨席するからだろう。

エメ・アンベールの地

 アンベールは150年前、日本との修好通商条約調印を目的に日本を訪れた。特にアンベール自身はヌーシャテルの時計産業連盟から、またザンクト・ガレンの繊維業界からの「日本市場の獲得」という任務を帯びていた。しかし日本は幕末の混乱期。交渉は難航した。

 学者でもあるアンベールは、1年近く条約締結を待たされた間に日本各地を旅行。歴史、地理、社会制度、風俗習慣などをつぶさに観察した。その後持ち帰った浮世絵や写真などをもとに画家たちがイラストを描き、それにエッセイをつけたものが「幕末日本図絵」だ。

 ヌーシャテルの民俗学博物館では、こうした図版やアンベールが持ち帰った浮世絵、写真、絵画など2500点の展示に加え、漫画やアニメなどで現代の日本も紹介する。

姉妹都市で絆を刻む

 ヌーシャテル市が公式の歓迎の地に選ばれた最後の理由は、実はここが愛知県新城市と姉妹都市提携を結んでいるからだろう。

 ヌーシャテルとは、ヌー(仏語で新しい)シャテル(城)で新城と同じ意味。新城市が1998年に国際サミット「新しい城」を企画し、この名を持つ52の自治体を世界から選んだ時、ヌーシャテル市も選ばれている。ブルカルテール氏は当時この街の市長で、日本に初めて公式訪問を行った。その後、この二つの自治体は姉妹都市になった。

 

 20日のブリエンツ(Brienz)訪問も、ここが静岡県島田市と姉妹都市だからだろう。ブリエンツは約10年前大洪水に遭い、土石流を防ぐための水害対策施設を建設したが、そのとき島田市が資金援助をしたという。皇太子さまはその場所を特に視察する予定だ。

 同じ20日に皇太子さまは、インターラーケンのクンストハウスで、池村玲子さんなどスイス・ドイツで活躍する日本の現代作家の展覧会「Japan Art Today 」のオープニングに臨席する。インターラーケンも滋賀県大津市と姉妹都市だ。

 また、21日の訪問先は勇壮な姿のアイガー・メンヒ・ユングフラウ三山を正面に望むシーニゲプラッテ高山植物園(Alpengarten Schynige Platte)。ここも兵庫県の六甲植物園と姉妹提携をしている。

 こうした、日本とスイスが築いてきた友好の証の場を訪ねることで、皇太子さまは150年にわたる両国の絆を再び刻み、今後も結びつきがさらに深まっていくことをメッセージとして残そうとの意図があるのかもしれない。

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