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紛争当事国への武器輸出禁止、スイスで国民投票へ

箱詰めされた武器
イニシアチブは紛争、内戦当事国への武器輸出を禁止するよう求めている © Keystone / Ennio Leanza

紛争当事国への武器輸出禁止の是非を問う国民投票が、スイスで数年以内に実施されることになった。武器輸出禁止を求めた活動家たちが、異例の速さで国民投票に必要な署名を集めた。

スイス連邦政府は昨年、内戦に使われないと証明できれば紛争当事国への武器輸出制限を緩和すると発表し、大きな反発を呼んだ。これに反対する活動家らがイニシアチブ(国民発議)を立ち上げ、6カ月で国民投票に必要な署名数を超える13万4千筆以上を集め、連邦内閣事務局に提出した。

6カ月でこれだけの署名を集めたのは極めて異例。国民投票の手続きでは、18カ月以内に10万人分の署名を集めなければならないと規定している。

国民投票は2年以内に行われる公算だが、賛成過半数を獲得できるかどうかは分からない。スイスでは1992年、国の新しい戦闘機購入計画の反対派が50万人分の署名を集め国民投票に持ち込んだが、翌年の国民投票で否決された。

政府は1年前、武器輸出緩和の方針を発表した際、スイスの武器産業活性化が目的だったと釈明。しかし左派政党や国民から強い反発を受け、同年10月に撤回を余儀なくされた。

財政監査局の報告書外部リンクも、政府の武器輸出認可手続きの基準があいまいだなどと批判。スイス製の武器が実際に紛争地域で使われていたというメディアの報道もあり、一層国民の反感を買った。

連邦議会ではこれを受け、武器輸出の許可基準を政府ではなく議会が決定するよう求めた動議が出されたが、全州議会(上院)で否決された。

連邦憲法に

イニシアチブ外部リンクは、スイス連邦憲法に武器輸出基準を明記するよう求めている。紛争、内戦当事国への武器輸出は禁止する。ただし、スイスの規制と同様の武器輸出制度を持つ民主国家か、これらの国々が国連の命令下で行動している場合は例外とする。

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武器輸出の禁止は、特に組織的に人権侵害を冒している国への武器輸出を防ぐことが狙い。民間人への使用、第三国への転売リスクがある場合も同様だ。

専門家は、活動家たちがこれだけ短期間に署名を集められたのは、政治の時流が合っていたこと、またオンラインツールを最大限活用したからだとみる。

昨年の時点ですでに5万人が支援を申し出た。非営利のオンライン署名フォーム「WeCollect外部リンク」を利用したことも功を奏した。

(英語からの翻訳・宇田薫)

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