スイスの視点を10言語で

「スイス・ミリタリー」、スイス軍の登録商標に 時計の使用は?

スイス国旗の肩章をつけたスイス兵士
連邦行政裁判所の決定をめぐっては多くの疑問が残る Keystone

スイスの連邦行政裁判所は9日、スイス軍による「スイス・ミリタリー(Swiss Military)」の商標登録を1月22日付で認めたと発表した。スイスの時計メーカーとの20年以上に渡る争いに決着がついた。

 ことの始まりは2013年。連邦国防省装備局(Armasuisse)外部リンクがスイス軍を代表し、「スイス・ミリタリー」の名称を「時計やその他のスイス製時間計測器」として商標登録するよう連邦知的財産庁(IPI)外部リンクに申請。これに対し、時計メーカー・シャルメックス外部リンク(本社・バーゼル)が、同様の製品について同じ名称を95年に登録済みとして申請を却下するよう求めていた。

 IPIは装備局の申請を却下。スイスの紋章保護に関する法律は、指定されたサービスまたは機関に限り正式名称を使用できると定めている。だが同じ製品カテゴリーに登録された二つの同じ名称が競合する場合には、同法は適用されないと理論づけた。

 装備局は却下の取り消しを求めて連邦行政裁判所に提訴。行政裁は記者発表で「『スイス・ミリタリー』という正式名称は装備局に限って使用が認められていることから、『スイス・ミリタリー』ブランドをスイスの商標登録簿に加えなければならない」と説明し、IPIに反論した。

 ロイターによると、スイス政府は行政裁の判決を歓迎。「スイス・アーミー」や「スイス・エア・フォース」など他のブランドの保護にもつながることに期待を寄せた。

残された疑問点

 ただ行政裁はシャルメックスが引き続き「スイス・ミリタリー」を使用できるかという別の問題には結論を出さなかった。裁判では、同社が96年から同名を冠した時計を販売しており、ブランド名を市場に広めるために莫大な額を投じてきたと訴えた。

 シャルメックスの共同経営者兼最高経営責任者(CEO)のフランク・M・ブルギン氏はロイターの取材に「我々は我々のブランドをこれからも使い続け、その名を冠した時計を販売するつもりだ」と述べた。

 行政裁の広報官はロイターに対し、シャルメックスが使用料を払わずに「スイス・ミリタリー」の名を使い続けられるかどうか、装備局はIPIに判断を求めることができると説明した。

SDA-ATS/Reuters/cl

最も読まれた記事
在外スイス人

世界の読者と意見交換

ニュース

クレディ・スイスのロゴ

おすすめの記事

クレディ・スイス危機への対応「時間がかかりすぎた」 議会調査委が報告書

このコンテンツが公開されたのは、 クレディ・スイスが経営危機に陥った責任を追究するスイス連邦議会の調査委員会は20日発表した報告書で、原因は長年にわたる経営上の不始末にあったと結論付けた。

もっと読む クレディ・スイス危機への対応「時間がかかりすぎた」 議会調査委が報告書
笑顔で握手を交わす閣僚

おすすめの記事

2025年のスイス連邦大統領はカリン・ケラー・ズッター氏

このコンテンツが公開されたのは、 スイス連邦議会は11日、カリン・ケラー・ズッター副大統領兼財務相(急進民主党、60歳)を新大統領に選出した。新副大統領にはギー・パルムラン経済・教育・研究相(国民党、65歳)が選ばれた。

もっと読む 2025年のスイス連邦大統領はカリン・ケラー・ズッター氏
健康保険カード

おすすめの記事

医療費の高騰、依然としてスイス国民の最大の関心事 調査

このコンテンツが公開されたのは、 大手金融機関UBSが12日発表した調査「心配事バロメーター」によると、依然として医療費と健康保険料の高騰が最大の懸念事項だったことが分かった。環境と年金も懸念事項にあがっている。

もっと読む 医療費の高騰、依然としてスイス国民の最大の関心事 調査
連邦工科大学の校舎

おすすめの記事

スイス連邦工科大、留学生の授業料3倍引き上げ決定 25年秋学期から

このコンテンツが公開されたのは、 スイス連邦工科大学チューリヒ校(ETHZ)と同ローザンヌ校(EPFL)が、留学生の授業料をスイス人学生の3倍に引き上げ、2025年秋学期から1学期当たり2190フランにすることを決めた。

もっと読む スイス連邦工科大、留学生の授業料3倍引き上げ決定 25年秋学期から
ベツナウ原発

おすすめの記事

世界最古の原子力発電所、2033年に稼働終了

このコンテンツが公開されたのは、 スイスの電力会社アクスポは5日、世界で最も古いベツナウ原子力発電所の稼働を2033年に終了すると発表した。33年までの運転継続にかかる追加事業費は3億5000万フラン(約600億円)を予定している。

もっと読む 世界最古の原子力発電所、2033年に稼働終了
アルコール検査

おすすめの記事

スイスのドライバー、2割が飲酒運転

このコンテンツが公開されたのは、 欧州など39カ国のドライバーを対象にした調査で、スイスでは2割超が飲酒運転をしたことがあると回答した。

もっと読む スイスのドライバー、2割が飲酒運転
銃口

おすすめの記事

狩猟中の事故で男性死亡 スイス西部

このコンテンツが公開されたのは、 先月29日午後、スイス西部ヴォー州で64歳の男性が狩猟中に死亡した。イノシシを撃とうとした 猟友会のメンバーに射たれた。

もっと読む 狩猟中の事故で男性死亡 スイス西部
サルコ

おすすめの記事

自殺カプセル「サルコ」運営団体代表が釈放 70日拘束

このコンテンツが公開されたのは、 今年9月にスイスで初めて使われた自殺カプセル「サルコ」について、連邦内閣は、当分の間、立法措置は必要ないとの見解を示した。サルコ運営団体は2日、身柄を拘束されていたフロリアン・ヴィレ代表が釈放されたと発表した。

もっと読む 自殺カプセル「サルコ」運営団体代表が釈放 70日拘束
金塊

おすすめの記事

スイス在住長者番付2024 トップはシャネルのオーナー

このコンテンツが公開されたのは、 スイスの金融誌ビランツがまとめた長者番付2024年版によると、スイス在住の富豪トップに輝いたのは、仏高級ブランド・シャネルのオーナー家族の1人、ジェラール・ヴェルテメール氏だった。上位の顔ぶれはほぼ前年と同じだが、香料メーカーのフィルメニッヒ(Firmenich)創業家が初のトップ10入りを果たした。

もっと読む スイス在住長者番付2024 トップはシャネルのオーナー

swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。

他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部