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赤十字国際委員会が大規模リストラ その背景は?

Siège du CICR à Genève.
赤十字国際委員会(ICRC)のジュネーブ本部では、1400人の職員のうち35人が解雇される予定だ Martin Ruetschi

赤十字国際委員会(ICRC、本部・ジュネーブ)が深刻な財政難に陥っている。ICRCは大幅な人員削減を進めているが、職員からはICRCの「予算の漂流」を非難し、説明責任を求める声が上がる。

ICRCは160年の歴史で最悪の危機に直面している。各国の自主的な寄付を資金源としているが、今年の予算は帳尻が合っていない。2022年の支出は28億4000万フラン(約4368億円)と、2012年の11億8000万フランから2倍以上に増えた。

壮大な支出増には疑問符がつく。ICRCは4億3000万フラン削減せざるを得なくなり、全職員2万2700人のうち1800人の解雇が迫られている。

本部職員は35人解雇

人員カットの大半はスイス国外の代表部が対象となり、数十の代表団は活動を閉鎖または大幅縮小することになる。関係者によると、ジュネーブにある本部の職員1400人のうち35人が解雇される予定。これに対し、2500人の職員が匿名の書簡で経営陣に抗議した。

フランス語圏のスイス公共放送(RTS)はこの書簡を入手した。署名者らは「失望、幻滅し、怒っている」と記し、現経営陣は「謙虚さ」と「先見性」を欠くと批判している。旧経営陣にも矛先を向け、2012~22年の10年間の「監査の権利」を行使し「独立した外部・国際的な監査」を受ける必要があると指摘した。

予算の変動

書簡は過去10年間に予算と人員が急増したことを批判し、「ICRCの支援を受ける被災者も全職員も、残念ながら今日始まったことではない『予算の変動』についてはっきりと説明を受けるべきだ」と訴えた。批判の矛先となったピーター・マウラー前総裁もイブ・ダコード前事務局長も、RTSの取材に対しICRCについては公の場で話したくないと語った。

書簡の言う「予算の変動」とは何か。複数の現・元職員がRTSで「武力紛争の犠牲者の保護や捕虜の訪問、行方不明者の捜索が基本的な使命だったはずなのに、実際は人道支援活動が増えている」と証言した。

アメリカ流の運営

「捕虜を訪問するよりも、水を配布したり子供たちに食事を与えたりといった活動を示した方が(世間への)ウケが良い」との声もあった。ある元幹部は、ICRCは「高給取りのコンサルタントやあらゆる種類の専門家が運営全般に関わるようになり、アメリカ流に運営されるようになった」と分析する。

またICRCは、財政危機を意識することなく膨張してきたと指摘する。この元幹部は「毎年要求される資金が増え、それが成功を収めてきた。このため立ち止まる理由も、大きく成長することがリスクではないかと疑問に思う理由もなかった」と解説する。

元ICRC職員のニコラ・ヴァルデー下院議員(緑の党)も、こうした批判に共感している。近年のICRCには「成長の定説」が深くはびこっているとして、「あらゆる場所であらゆることをやりたいという選択はおそらく間違っている」と述べた。

ヴァルデー氏は、今日のICRCは予算の膨張により弱体化し、寄付国(ドナー)の意向に依存し過ぎているとみる。連邦がICRCへの資金手当てを増やす条件として、活動の優先事項を見直すよう求めている。

スイスはどうする?

スイス外務省はコメントを拒否している。ICRCへの2022年の寄付金1億6000万フランのうち、スイスはドイツと米国に次ぐ第3のドナーだ。月内に主要ドナー国の会合が予定されており、各国の寄付額の増減が詳細に分かる。

現時点ではどのドナー国が寄付額を削減したのかは分かっていないが、ICRCは今年の予算を約28億フランから24億フランに減額しなければならない可能性がある。ジル・カルボニエ副総裁はRTSに「下方修正された予算案が承認されることを願う」と語った。

あらゆる人道活動が危機に

カルボニエ氏はRTSで「主要ドナー国自身が大きな財政的制約を抱えているため、人道支援部門全体が大きな変化に直面している」と指摘し、経営陣の責任を否定した。ICRCは他の団体と同様、各国の財政難やインフレ、さらにはウクライナ戦争により世界レベルで人道資金が枯渇していることの犠牲者だと主張した。

ICRCは新しい活動戦略を策定中だ。「武力紛争における国際人道法の中立的な仲介・保証・推進者としての任務を優先しなければならないのは明らかだ」(カルボニエ氏)。あるいは基本的な使命に回帰するのか。ICRC予算の逼迫は当分緩和されそうになく、選択肢はそう多くはない。

フランス語からの翻訳:ムートゥ朋子

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