2019年のスイス総選挙に備えて健康増進。有権者にとって、健康と環境は移民や国家の独立性より重要だ
Keystone/Anthony Anex
スイスの2019年総選挙まで残りおよそ1年。世論調査によると、左派・中道政党が議席を増やしそうだ。最も関心のある争点は社会保障や環境問題で、在外スイス人はEU・スイス関係の行方に注意を払う。
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スイスの4年に1度の総選挙は2019年10月20日に投開票予定。調査会社のソトモ外部リンクが「現時点で総選挙が行われたら投票したい政党」を尋ねたところ、右派・国民党の国民議会(下院)議席獲得率が27.4%と主要8政党のトップを維持するが、現議席に比べると2%減る。中道のキリスト教民主党も議席減が見込まれる。
一方、左派・緑の党と右派系中道の急進民主党は議席を伸ばしそうだ。
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ソトモのミヒャエル・ヘルマン氏は、急進民主党の支持が高まっていることは予想外だと話す。国民の関心が老齢・遺族年金改革や医療保険料の上昇に集まるなか、経済界と結びつきが強い同党の政策は支持を得にくいためだ。「急進民主党の強さの裏には、他の中道・右派政党の勢力が弱まっていることがある」
国民党の支持が低下している背景には、同党の掲げる反移民政策やスイスの独立性強化路線が有権者の最大関心事項ではなくなっていることがある。キリスト教民主党は40年以上前から続く支持率低下に歯止めをかけられないでいるという。
ヘルマン氏は「スイス連邦議会は少しずつ左派寄りになりつつあるようだ」と指摘する。
世論調査通りの結果になれば、15年総選挙の結果から揺り戻しとなりそうだ。また11年選挙からの変化に比べ、中道政党の議席の減少幅はさらに大きくなる。
選挙バロメーター
スイス公共放送協会(SRG SSR)の「選挙バロメーター」は調査会社ソトモ(チューリヒ)が実施。
総選挙までに6回行われる世論調査のうち今回は2回目。在外スイス人546人を含む1万2179人の有権者から回答を得た。調査は9月13~18日にオンラインで実施した。標準誤差は1.5%。
在外スイス人の関心
今回の世論調査では初めて在外スイス人からも回答を得た。主な関心事項を訊くとスイス・EU関係が47%で最も多く、地球温暖化(35%)や年金改革(33%)、医療保険問題(26%)を上回った。ヘルマン 氏は在外スイス人の多くがEU加盟国で暮らすことが背景にあるとみる。
在外スイス人の支持政党をみると、社会民主党が24%で首位に立ち、国民党が21%、急進民主党が19%と続いた。
ヘルマン氏は、今後1年間で有権者の関心は変遷するため、支持政党も変わりうると強調した。現時点の支持率は政党の発言力にとって重要だが、選挙結果を確実に予想するのは不可能だとも付け加えた。
一方、今年12月に行われる2人の閣僚選挙の結果が19年総選挙に影響を与える可能性は小さいと話す。
次回の総選挙に向けた世論調査は来年2月に実施予定。
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